時事解説「ディストピア」

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戦争を知らなかった世代?古市憲寿氏の言説について

2014-04-20 21:57:18 | マスコミ批判
古本屋で『冬の兵士』を買った。
イラク・アフガンからの帰還兵の体験談をまとめたものである。


私はベトナム戦争の帰還兵の体験談を読んだことがあるが、
同書と比較して読むと、「アメリカのやってることは
60年代から全く変わっていない
な」と改めて感じさせられる。


さて、『冬の兵士』を買う時にチラリと見えた本があった。
『誰も戦争を教えてくれなかった』という書名で院生が作者だった。


帯紙を見ると、加藤典洋が推薦している。
この時点で、ろくでもない本なのは看破できたが、
若干20代の若造にどんな本を書かせているのかなと思って立ち読みした。


この本は、要するに、世界各国の戦争博物館を巡って、
歴史の記憶のされ方を論じたものであるのだが、はっきり言って、
肝心な部分に触れずに結論をまとめるので、瑣末な内容になってしまっている。


この辺は、後藤和智氏が詳しく論じているので、以下のページを参照してもらいたい。
ttp://ch.nicovideo.jp/kazugoto/blomaga/ar398664


著者は、「他国に国営の戦争博物館があるのに対して日本にはない」と語る。
それを基軸にして、日本には過去の戦争に対する歴史観が希薄であると言うのだが、
そもそも国営の戦争博物館がないというのが上手いロジックだ。


つまり、靖国神社と遊就館の存在が
この本には奇麗さっぱり抜け落ちているのである。



確かに遊就館は国営ではない。だが、民営とは名ばかりの施設であり、
そうであるからこそ、同施設の存在がしばしば議論されるのである。

靖国神社を見る限りでは、日本という国家が本音の所では、
過去の戦争について全く反省していないこと、こういう考えが
戦後、一貫して受け継がれ、今に至るということが語られていない。


これを作者が意図的に秘匿したのか、
初めから考慮に入れなかったのかは定かではない。

どちらにせよ、博物館来訪紀といった範疇を超えていないだろう。


記憶のされ方うんぬんだと、アメリカで起きたエノラ・ゲイという
原爆投下に使用した航空機の展示会での事件を思い出す。

この展示会は、広島への原爆投下を批判した解説が添えられるはず
だったのだが、退役軍人や遺族の猛攻撃を受けてこれら説明を省略した
展示に急きょ、変更させられた。未だにアメリカではこういう動きが
民主的に行われているのである(民主主義を美化する方々は、この
実に民主主義に則った抗議運動をどう捉えるつもりなのだろうか……)


こういう博物館を巡る各国の隠された公式見解の問題点を
指摘するならいざ知らず、どちらかというと、そういう事態に
無知である人間を擁護するような内容になっていて、
この本が作者の今後の研究活動に貢献するのか疑問に思った。

まぁ、加藤典洋や浅田彰などの今となっては仮面がはがれた
連中を見ても、目立ちさえすれば実力がなくても大学教授になれる
ことは実証されているので、こういう売名というか、学問を
コケにするような奴でも楽々とポストを得られるのだろう。
(代わりに学問自体に対する民衆の信頼をますます失うことになるが)


巷ではSTAP細胞を巡って下らないワイドショーが繰り広げられているが、
こういうタレントと研究活動を勘違いしている連中が、
哲学者とか社会学者を気取ってのさばっているほうが
よっぽど日本の学術研究のレベルを疑われる背任行為
だと私は思う。

言論の自由について

2014-04-20 20:41:04 | 浅学なる道(コラム)
Wikipediaより。
死神博士を演じたことで有名な天本英世氏のエピソード。

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自由主義者・無政府主義者で、
現代の日本に生きる人々に対してラディカルな視点から苦言を呈していた。

「国家というものが大嫌い」と述べ、スペインへの移住を熱望し、
2000年に発表した著書『日本人への遺言(メメント)』(徳間書店)でも
「こんな呆け国家で死にたくない。私は、スペインで死にたい。
20回も訪ねて歩きまわった大好きなスペインで死にたい」と記していたがそれは叶わなかった。

天皇制と昭和天皇の戦争責任を不問にしようとする勢力
(菊タブーを守ろうとする風潮、自民党政権、文部省)を批判して
「テレビの収録で言及すると、その部分は全てカットされる。
こういう事をしている限り日本人はいつまでたっても自立できない」と述べている。


また学徒動員を受けたことは、言葉に言い表せないほどのショックを受けたそうで、
戦後になっても、戦争を賛美するような内容の映画には、
依頼を受けても絶対に出演しないという姿勢を貫いた。

長身に対する妬みのために将校に苛められ、軍が嫌いになり、
その延長として左翼的になったという。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E6%9C%AC%E8%8B%B1%E4%B8%96
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よく中東やアフリカ、中国、北朝鮮などの途上国には
「思想の自由、表現の自由、言論の自由がない!」と言われる。


しかし、私に言わせれば日本のほうが程度が酷く、
他国の思想や言論の自由を批判しながら、自国の自由については目もくれない。


仮に本当に自由が保障されているならば、君が代や日の丸の強制について
国民創意の抗議がされているはずだし、領土問題だって日本の言い分には
穴があることがきちんと報道されているはずだ。

そして、これが最も重要なことだが、
自由の権利が与えられていることと
その権利を有意義に活用することは全く違う

ことに誰も触れたがらない。


天本氏は、根っからの反戦主義者で、戦争を美化する作品には
頼まれても出演しない主義を貫き通して亡くなった。

翻って去年は、『永遠のゼロ』や『名探偵コナン 絶海の探偵』など、
日亜戦争(私は太平洋戦争を日本対アジアの戦争だと捕えている)や
旧軍の組織をそのまま引き継いで誕生した自衛隊を美化し、
抵抗意識、拒絶反応を緩和させる娯楽作品ばかりがもてはやされた。

その一方で、『はだしのゲン』は禁書として学校の図書館から
没収されるわ、自衛隊の入隊体験を高校生にさせるわ、
最近に至っては海軍(海自)のカレーを一般市民にふるまう
イベントがニュースになるわ、戦車や軍艦をキャラ化・パロ化した
アニメーションやゲームが大ヒットするわと、日本の軍拡と
リンクする形で様々なコンテンツ・イベントが量産されている。


なるほど、日本に思想や言論の自由はあるの「かも」しれない。
だが、知識人や政治家、作家、俳優のほとんどが
日本の戦争の負の側面について語ろうとはしないし、
中東・アフリカ・北朝鮮といった途上国が抱える事情を一切無視して
やれ独裁だ、やれ民主化だと遠まわしに当事国への武力侵攻を是認する。
(昨今の北朝鮮バッシング、アラブの春が典型的な例)


ウクライナのように、明らかに現政権に不当性が発見されるのに、
その点については一言も述べない。米韓の20数万による首都侵攻作戦の
デモンストレーションが領土付近で展開され、同演習の中止と引き換えに
核施設の廃棄、拉致問題等の問題の解決を提案しているのに、一向に
その件について一言も触れず、野蛮な国だと罵声を浴びせ続ける。
(結果として20年以上も問題解決は進展されていない)


こういう有様を見るに、「なるほど、第3諸国には私たちが
自分たちの価値観で勝手に作り上げた人権や自由というものは
ないのかもしれない。だが、人権や自由がさもあるようにみせかけ、
仮にあるとしても使いこなせていない国はもっと不幸だ
」と私は思う。