時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

袴田事件について

2014-04-01 21:45:50 | 文学
他ブログで書いたコメントを加筆修正して掲載します。

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数年前の足利事件の冤罪発覚の折もそうでしたが、当時から検察と一緒に
彼を犯人扱いしていたメディアの皆さんは袴田さんにちゃんと謝ったのでしょうか?

(ちなみに足利事件で被疑者にされた菅谷さんは謝罪されていないようです。)

光市の母子殺人事件の時にも感じましたが、殺人犯というのは
捕まった瞬間から究極の弱者になる
という認識が足りない気がします。


私は、死刑の話を読んだり聞いたりするたびに、有島武郎の『一房の葡萄』を思い出します。

裕福な西洋人の少年への羨望や嫉妬の気持ちもないまぜになって
絵具を盗んだ主人公に対する同級生たちの情け容赦ない侮蔑。

>あんなことをなぜしてしまったんだろう。
取りかえしのつかないことになってしまった。もう僕は駄目だ。
そんなに思うと弱虫だった僕は淋しく悲しくなって来て、
しくしくと泣き出してしまいました。

>「泣いておどかしたって駄目だよ」とよく出来る大きな子が
馬鹿にするような憎みきったような声で言って、
動くまいとする僕をみんなで寄ってたかって
二階に引張って行こうとしました。
僕は出来るだけ行くまいとしたけれども
とうとう力まかせに引きずられて階子段を登らせられてしまいました。
そこに僕の好きな受持ちの先生の部屋があるのです。



自分が一番好きな人に、自分の目の前で、自分が最低な人間だとバラされる。
これほど残酷なことを正義感に満ちた人間が平然とやってのけてしまう矛盾。

間違った人間には何をやっても構わない
という風潮があるように思えるのです。


今回は未だ再審が決まったのみで、冤罪を勝ち取ったわけではありません。
仮に再び有罪と判決された場合、メディアや大衆は彼を守ってくれるでしょうか?
私にはそうは思えません。

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有島武郎は特に好きな作家で、奔放な生き方にあこがれながらも
常に許しを求めて生きた作家だったと思っています。


『一房の葡萄』は小学生でも読破できる分量と文体で書かれた短編ですが、
そこで問われているテーマは非常に重い。青空文庫でも読めますので、
興味を持った方はぜひ読んでみてください。

http://www.aozora.gr.jp/cards/000025/files/211_20472.html