時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

中国による商船三井の船舶差し押さえに対する天児慧氏のコメントについて

2014-04-21 22:56:38 | 反共左翼
人民網の記事より。

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上海海事法院(裁判所)は有効な判決を執行するために、
関連規定に基づき、今月19日に浙江省◆(「山偏」に「乘」)
泗馬跡山港で被告人の日本の海運大手・商船三井の船舶を押収した。

新華社が伝えた。


原告の陳震さん、陳春さんらは1988年12月30日、
日本海運株式会社(商船三井の前身の一つ)を被告に、
定期チャーター船の契約に不備があること、権利の侵害があることを理由として、
上海海事法院に損害賠償を求める訴訟を提起した。
未払いだった第二次世界大戦中の「順豊号」と「
新太平号」のリース料金の支払いと経済的損失の補填も求めた。

同法院は公開の審理を行い、2007年12月7日に法律に基づいて判決を下し、
被告の商船三井に賠償金、「順豊号」と「新太平号」のリース料金、
営業損失の補填、船舶の受けた損害の補償、発生した利息などとして、
総額約30億円の支払いを命じた

中華人民共和国上海市高級人民法院(高裁に相当)は
10年8月6日、一審の判決を支持する判決を出した

同年12月23日には、中華人民共和国最高人民法院(最高裁に相当)が
被告の再審請求を退け、判決が確定した。

この案件は対外的な商事案件だ。
判決が有効になると、原告側は法律の規定に基づき、
上海海事法院に強制執行の申請を提出し、
被告に判決で確定した支払い・賠償の義務を履行すること、
法律に基づいて延滞期間の利息を支払うことを求めた。

同法院は11年12月28日、法律に基づいて商船三井に「執行通知書」を送付。
これより先に当事者の間で和解に向けた話し合いが何度か行われたが、
和解には至らなかった。このため同法院は法律に基づいて、
商船三井の船舶を差し押さえた。

商船三井が義務の履行を拒絶すれば、
同法院は法律に基づいて押収した船舶を処分することになる。

http://j.people.com.cn/94476/8604665.html

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安倍政権のここ数日の靖国参拝はスルーする一方で、
中国のすることなら、どんな些細なことでも
目ざとく発見し、事を荒げようとする正義のメディア・知識人。

NHKでは、「何十年も前の話を今さら持ち出しおって」と
文句タラタラの報道をしていました。

ここで気になったのは、専門家のコメントとして
中国研究者の天児慧氏がNHKの主張に
同調するような意見を述べていた
ことです。


「日中の経済関係に支障をきたす恐れがある」
「昔の話を持ち出して差し押さえるのは道理に合わない」

こういう趣旨の発言を行っていました。
当のNHKのニュースサイトには、次のような記述もあります。

中国では、戦時中に日本に強制連行され過酷な労働をさせられたとして、
中国人の元労働者や遺族が日本企業を相手に損害賠償を求める訴訟が相次いでいます。

今回の差し押さえによって、中国での戦後賠償に関連する裁判で、
今後、原告側が勝訴した場合、日本企業の中国国内にある資産が
差し押さえられる可能性も出てきたとして、議論を呼ぶことになりそうです。

(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140420/k10013885491000.html)


要するに、今回の判決は、中国人強制連行という
大日本帝国の戦争犯罪の責任の取り方とリンクする問題
なのですが、
これを天児氏は無視したということになります。


仮に編集でカットされたならば、
今後、中国を一方的に非難する見解であるかのように報道されたことについて
抗議するなり、改めて自身の見解を述べるなりするべきでしょう。


少なくとも、現段階では天児氏のコメントは、
「戦時の事件なんぞ持ち出すな」
「経済が大事なら、余計なことをしゃべるな」

という内容で、要するに「黙ってろ」と発言しています


これが、三流タレントや作家の言葉ならいざ知らず、
同氏は1989年には第1回アジア・太平洋賞特別賞を受賞し、
1999年から2001年までアジア政経学会理事長を務め、
現在、日本国際フォーラム政策委員も務める超一流の政治学者です。



間違いなく、中国政治研究の権威としてご活躍されている方です。
そういう方が、こういう発言をしてしまうということが
どれほど恐ろしいことか、よくわかっていない人が多いのではないでしょうか?


ある意味、安倍や田母神が中国を批判しても、
あまり効果はないのです。彼らは極右なのですから。

極端な考えを持っている根っからの中国嫌いが
中国を批判しても、これは脅威には当たらない。
ある意味、極右としては当然とるだろう行動なのですから。

問題なのは、中国を専門としている研究者が
このような中国バッシングの動きに同調して
援護射撃をしてしまうことです。


本来、一連の動きに「待った」をかけるべき人間が、
「おおいにやるべし」と支持してしまう。これは本当に危険な兆候です。

反戦論者が例外的に武力介入を認めるほうが
よっぽど大衆に参戦を納得させるのに効果があるように、
中国研究者が事件の本質を隠匿し、日本政府に有利になる発言をするのは
平和団体や人権運動家を納得させるのに、この上なく効き目があるでしょう。


実はイラク戦争の折にも、似たようなことを
酒井啓子教授をはじめとした中東研究者が行っていました。
(フセイン政権を徹底的に非難する著作を開戦間近に出版していた。
 これは悪しき独裁政権を粉砕するというアメリカの正義を
 正当化させるにあたって非常に都合のよいことであった。)


こういう中立を装いながら、日本政府に有利な言葉ばかりを
述べ、遠まわしに中国のほうが悪いという見解が広がるように促す。


非常に悪質な行為だと私は思います。


しかしまぁ、天児氏といい、酒井氏といい、加藤哲郎氏といい、
北岡伸一氏といい、政治学者はなぜ政府に都合のよい見解ばかり語るのでしょうか


一応、前者3名は一般的に左翼のジャンルに属し、
岩波書店から本を書いていますが、やってることは
北岡氏のような保守系の政治学者と大差ありません。


むしろ、前述したように、市民への説得、プロパガンダということを
考えれば、彼ら左派系学者のほうが政府に協力しているとも言えるでしょう。


私は戦後の主流左翼(岩波・社会党系列の人間)を「反共左翼」と称して、

①日本政府の反共政策にかなった形を超えられなかったこと、

②それが結果的に国内の共産党陣営を攻撃する形で利用されたこと、

本人たちも、その役目に嬉々として応えたこと

④結果として冷戦終結後、用済みとなり切り捨てられたことで
 主流左翼が急速に縮小、消滅の危機にあること

を指摘し、その問題性について説いています。


天児氏もまた、ちまたでは、尖閣諸島について
「反日的な」発言をした「売国奴」という悪評を得ているようです。

岩波新書から本を出されていることからも、
同氏は良心的な学者としての評価が名高いものと思われます。
実際、次のようなインタビュー記事からは
冷静な分析力を有する方だと感じられます。
(http://iwj.co.jp/wj/open/archives/101507)

しかし、このような人物が結果としては体制に貢献しているのもまた事実です。
領土問題にしても、基本的には日本の国益に沿った形での見解であることは見逃せません。

にも関わらず、左右どちらの陣営もこの事実にはあまり気づいていないようです。
右は売国奴と罵り、左は彼を良心的と讃えています。


右がそうなのはともかくとして、左が誰彼かまわず、
敵も味方もわからずに突っ走っているのは、問題があると言って良いでしょう。

何とかすべきことですが、まぁ・・・何ともならないでしょう。


・追記

こういう方々の外国研究というのは、どれほど信頼できるものなのか…
まぁ、仮にも研究者ですから一切のでたらめは述べていないと思いますが、
どうも穴があるような気はしなくもないです。

また安倍首相が靖国神社に真榊奉納

2014-04-21 21:44:15 | 軍拡
前回、ギリギリ20代のアラサー男子、古市憲寿氏が、
日本には国営の歴史博物館がないことを根拠に
日本人の歴史観があやふやになっているという主張に対し、
「靖国神社と遊就館の存在が完全に無視されている」と批判しました。


改めて書きますが、同施設は日亜(太平洋)戦争を
正義の戦争と美化しており、こういう施設が戦後、一貫して
国の保護のもと、存続し続けているその意味をもっと知るべきです。


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靖国神社に建つ「遊就館」と呼ばれる軍事博物館は
「アジア諸国の解放と共存共栄の新秩序を確立する」
(「特別展 大東亜戦争七十年展II」・徳川康久宮司のあいさつ文)
ことが戦争の目的だったと掲げる
など、
戦前の理屈そのままに侵略戦争をまるごと肯定・美化し続けています

侵略戦争を推進したA級戦犯についても靖国神社は
「形ばかりの裁判によって一方的に“戦争犯罪人”という
ぬれぎぬを着せられ、むざんにも生命をたたれた」
方(「やすくに大百科」)だと説明していたのです。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-27/2013122702_01_0.html
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さて、そのような靖国神社に、また安倍首相が真榊を奉納したようです。

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時事通信は21日、日本の安倍晋三首相が同日午前に
靖国神社に供え物「真榊」を「内閣総理大臣」名で奉納したと報じた。

報道によると、安倍首相は中韓両国との関係の現状や、
東アジア情勢に対する米国の懸念に配慮して、
今年の春季例大祭中は靖国神社を参拝しない方針だ。環球時報が伝えた。


NHKによると、東京都九段の靖国神社では21日から3日間、春季例大祭が行われる。
安倍首相は例大祭の開始に当たり、供え物「真榊」を「内閣総理大臣」名で奉納した

関係者によると、安倍首相は今年の春季例大祭中は靖国神社を参拝しない方針だ。
時事通信の分析によると、オバマ米大統領が23日に
「国賓」として日本を公式訪問し、安倍首相と会談することから、
安倍首相は中韓両国との関係の現状や、
東アジア情勢に対する米国の懸念に配慮して、
今年の春季例大祭中は靖国神社を参拝しない方針だ。
http://j.people.com.cn/94474/8604957.html

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21日の春の例大祭を前に、20日、
古屋圭司国家公安委員長・国務大臣が靖国神社に参拝した。AP通信が伝えた。

古屋氏は、アジア諸国では日本軍国主義を連想させる同神社に参拝した
ここ2週間で二人目の現職閣僚となった。

2週間前には、新藤義孝総務大臣が参拝し、
その後「参拝は私的なもので、他国に制限される事にはあたらない」
と述べている。

新藤総務相は、太平洋戦争最後の激戦地の一つ
硫黄島の戦いを率いた栗林忠道陸軍大将の孫にあたる。

続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2014_04_20/271430562/
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共産党の志位委員長は、去年に安倍首相が真榊を奉納したことについて

「靖国神社の最大の問題は、過去の侵略戦争について、
 自存自衛の正義のたたかい、アジア解放の聖戦だった
 と美化することを存在意義としていることだ」

「その神社に真榊を奉納することは
 侵略戦争美化の立場に身をおくものだ。
 厳しく批判したい」
と述べています。


第一、奉納も参拝も、一般人にしてみれば同じことですから、
ことさらに、両者を質的に異なるものとみなすのは詭弁です。


人民網(中国の公的メディア)は、ずいぶん甘い見解をしていますが、
他国に配慮するなら、そもそも神社に行かないはず。

しかも、総理大臣の名で奉納をしている。

日本の総理大臣が侵略を美化する施設を
公的の立場をもって認めた。


閣僚の連日の靖国参拝を考慮すれば、
現政権が積極的に、靖国史観を支持しているのは明らかです。

これは本来なら、すぐに号外を出すレベルの話なのですが、
ニュースを発信する新聞社やテレビ局は、予想通り沈黙を守っています。

代わりに彼らが熱を込めて報道しているのは、
韓国での沈没事故と中国の商船三井の船舶の差し押さえ。



この前も書きましたが、言論の自由が保障されている国で、
本人が嬉々として、自発的に権力者に有利な情報を流している。
こういう事態のほうが、第三諸国のそれよりも深刻な問題です。