ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

書評 環境問題のウソ6 ナチズムと遺伝子撹乱は同じものか?

2008-07-31 22:22:24 | 池田清彦
環境問題のウソの書評もいい加減疲れてきたので、ナチズムと遺伝子撹乱の同一視に対する反論で終わりにします。
ちなみに、遺伝子汚染は学術用語としては不適格であるということから最近の外来生物の本では遺伝子撹乱という言葉を使用しているのでこれに従いました。まあ、呼び方が変わっても内容はいっしょです。
まず、遺伝子撹乱はナチズムと同一のものとして扱えるのかについてです。これについての僕の考えは昔書きました。今度は、保全生態学者の言っていることと、ナチスの論理の比較をしてみます。たとえば、ナチスはユダヤ人排斥の理由としてアーリア人の絶対的な優越性をあげています。そして、ユダヤ人は劣等人種だから滅ぼすべきと言っているわけです。では、保全生態学者はある種が絶対的に優れているなどと言っているでしょうか?たとえば、タイワンザルとニホンザルの交雑にしてもタイワンザルを地球上から駆除しろなんていうことはまともな保全生態学者ならいわないでしょう。むしろ、もしタイワンザルのもともとの生息域にニホンザルが持ち込まれたらニホンザルの駆除もやむなしとする見解をとる人が多いでしょうね。
このようにニホンザルはナチスが言うような絶対的特権をもっているわけではありません。むしろ一見、特別に見えるようであっても、その特権は場所によってあったりなかったりする相対的なものです。
この点で明らかにナチズムと遺伝子撹乱を問題視する考えは異なっています。

書評 環境問題のウソ5

2008-07-13 20:50:22 | 池田清彦
無知と傲慢が合わさるとどうしようもなくなるという一例ですねこれ。
>P105(瀬能氏について言及している部分)それにそもそもこの人の使っている種という定義は、まっとうな生物学者から見ればデタラメで、交雑がとことん進行するようなものは元来同じ種なのだ。
だったら瀬能氏がどういう種概念を使っていてそれのどこがおかしいのか説明するくらいのことはしなさい。まさか相手の論理の欠陥がつけないから下手な印象操作に走ってるんじゃないでしょうね。
>P106他所の個体と混血して遺伝的多様性を増大させるほうが生き残る確率は増大するに決まっているからだ。
まあ実際は異系交配弱勢なんかでそう上手くはいかないんですけどね。
交雑がなぜ問題視されるかは、また別の機会に書いてみます。

書評 環境問題のウソ4 

2008-07-06 16:33:08 | 池田清彦
 なんか最近ここを見てくださる人が多くなってます。ここを見て感想、疑問などありましたら気軽にコメントしてください。では書評の続きです。
>P102レブンアツモリソウとカラフトアツモリソウについて論じている部分。
これは外来生物問題のグレーゾーン(人間により持ち込まれたのかどうかわからない)でしょうね。まあ池田氏はこのグレーゾーンの存在をもって白も黒も一緒くたに扱おうとしているわけですが。さて、氏はなかなか面白いことをこのページでいっています。>さて、人為的に侵入したものだけを外来種とよぶという科学的には何の根拠もない
ふむ、じゃあ保全生態学者が使っている外来生物の定義のどこが科学的ではないのでしょうか。この本を読んでみたのですが今の定義がどう科学的でないのか説明がありません。主張をしたら根拠を述べるのは議論の基本ですよ?また、このページの後半で外来生物の有効性を説いてらっしゃいますがそれにはこう質問してみます。有効だからといってどんどん外来生物を持ち込んで野放しにしておいていいのですか?
>P103確かに小笠原諸島に侵入したグリーンアノールは(トカゲの一種)は、樹上性でしかも昼行性の昆虫を壊滅状態にしたらしく、これは「侵入種」と呼べるだろう。
ここでこの爺の欺瞞があらわになっています。氏はたびたび生物多様性について疑問視し、外来生物の定義などを否定してきました。たとえばP120で>コストに見合うメリットが生物多様性の保全という原理主義者の頭の中にしかない理念だけではねえ。と言っています。
分かると思いますがここで氏は生物多様性の保全を否定しています。原理主義者の頭の中にしかない理念というのであればそれは幻想の類といってよいでしょう。問題はこう言っている人間が「侵入種」の概念を肯定していることです。「侵入種」というのは外来生物問題があることを前提としており、外来生物問題は生物多様性の保全を前提としてなりたっています。つまり生物多様性の保全は「侵入種」の概念の大前提です。大前提が幻想の類であるならそんなものに付き合う必要なんてないでしょうに。大前提である生物多様性の保全を否定しておきながら何故、そこから導きだされるものを肯定しているんでしょう。これは完全に矛盾しています。



書評 環境問題のウソ3

2008-06-29 23:23:25 | 池田清彦
 突っ込みどころが多すぎて批判が終わんねえ・・・
>P96自然の中でともに懸命に生きている生物を、生物多様性をまもれというあやしげな理念のために、お前は生きていてよいが、お前は死ねという。
ここで池田氏は生物多様性をまもるということがあやしいといっています。彼の矛盾を見つけるのに重要なので覚えておいてください。
同じくP96でアライグマについて言及してますが、基本的に駆除した外来生物の扱いはこのようになっていますので池田氏のいっていることはいもしない仮想敵を相手にした戯言、わら人形の類です。
>P98文化や伝統は時代とともに変わるのだ。生物相も同じだ。
さて、これは何を言いたいのやら。意図が図りかねますね。確かに生物相も時代とともに変化しますけど、だからといって人間が次々に新たな生物を持ち込み、もといた生物を排除してもかまわないんでしょうか?
>P100「特定外来生物法」の基になる理屈は、「ダイオキシン法」と同じくらい論理的に底の抜けたものだと思う。
ふ~ん。で、その根拠が
>P100~101ある地域に今まで存在しなかった種が、どこからか侵入してくれば、その時点においてその種を外来種と呼ぶのは、極めてまっとうかつ素直な外来種の定義であろう。在来の生態系や種にとって、自然に侵入しようが人為的に侵入しようが、同じ時期に同じ種が侵入したのであれば、同等の攪乱要因となるのは明白だからだ。
なるほど・・・ってなるわけないでしょ。この理論が成り立つのは上の条件に加えて最低でも侵入した個体数が同程度でなければ成り立ちません。たとえば、人為的に100個体入った場合と自然に1個体入った場合とじゃたとえ同時期でも影響は違いますよ。必要とする資源の量が違いますから。
さらに言えば池田氏が想定するようなケースは今現在問題となっている外来種のほとんどに当てはまらないでしょう。たとえば、ブラックバスにしてもノヤギにしてもそれらが同時期に人為的要因の他に自力で入ってきたという証拠はありません。
池田氏は極少数の事例に当てはまるかもしれないことを無理やり一般化させているにすぎません。これは悪しき相対論者と呼ばれる人が使う手です。

ここも参考になるのでどうぞ。

書評 環境問題のウソ2

2008-06-26 22:17:59 | 池田清彦
 読んでると池田氏の無知っぷりに腹が立つやら脱力するやら。この人本当に保全生態学について知っているのか?
>P95~96淡水魚や蝶の中には個体数が減少して、絶滅しそうなものもたくさんいるが、それらのほとんどは人間が生息環境を破壊したのが原因であって、外来種のせいではない。
ここで池田氏は人間による環境の改変を問題にしているのはわかりますよね?そして在来種からみれば外来種が入ってきても環境が改変されたことになるんですよ。なぜなら今までいた環境に新たな種が入ることはその種にとって周りの環境が変化したことになるからです。たとえば、いままで捕食者がいない環境で生活してきた生物にとって捕食者が入ってくるということはいままでとは環境が変わることになります。なぜなら、捕食者が入ってくることによって、その生物は食われないための努力をしなければならないからです。これを簡単にあらわすと以下のようになります。
捕食者がいない環境(食べられないための努力をする必要のない環境)
         ↓
     捕食者が入ってくる
         ↓
捕食者のいる環境(食べられないための努力をしなくてはならない環境)
池田氏は僕から見たらダブスタをやってるようにしか見えません。
疲れているので今日はここまで。

書評 環境問題のウソ1

2008-06-22 14:44:12 | 池田清彦
 とりあえずページにそって批判します。まあ読んでくとわかるんですが氏のいってることは単に知らないまま発言しているか知っていてもわざと無視しているケースがほとんどです。
>P91外来生物が生態系に影響を与えるとしたらただひとつ、生態系の種類構成を変化させることだ。しかし、系すなわちシステムは要素が変化するからこそシステムなのであって、生物相すなわち種類構成が変化しない生態系などはない。
後半はわかり難いんだけど要するに生態系内で生物相が変化するのは当たり前ということかな?さて前半ですがこの時点で池田氏は己の無知をさらしてますね。外来生物が生態系に与える影響として生態系の循環を崩すあるいは生態系を変えてしまうというのがあります。日本ではノヤギによる土壌流出と裸地化が有名です。ここでも前に書いたメラルーカなんかもそうです。実際、外来生物の専門家たちが作った外来生物ハンドブックには4.3 生態系の物理的な基盤を変化させるとあります。まあ上で池田氏は無知と書きましたが、外来生物問題に長く首を突っ込んでいる氏がこんな基本的なことを知らないわけがないので本当は都合が悪いから無視したんでしょう。
>P92ある地域の生物相を現時点で固定しようというのは不可能な妄想である。
なんかこの前後の文脈から保全生態学者が生物相を固定させようとしているかのように聞こえるんですが?コリドーや進化可能性という言葉に表されるように、保全生態学者は変化をすべて否定するようなまねはしていませんが?
>P92~94外来生物との生存競争や混血により消滅する生物があったとしても、それは生物進化の当然の帰結であってそれにより生態系が破壊されることなどあり得ないのである。
どっちかというとこの人の論理展開こそありえね~。ここまで無知にあぐらを書いた論理展開も珍しいのではないでしょうか?外来生物問題というのは言い換えれば人間が生物を使って起こした環境破壊です。それを進化の帰結と言い、生態系の破壊ではないというひとが何故、富栄養化や工事などを問題視するのでしょう?これらの違いは人間がどの手段を使って環境破壊を起こしたかの違いしかないはずです。さすがに池田氏もこれをストレートに言うのはやばいと思っているのかこのあとに外来生物のオレ様定義を展開することで境界線を曖昧にしてごまかそうとしていきます。