ナナは無事に帰って来たのだが、私としてはがっくりすることが多かった。近くにいれば帰ってこないはずはないと思って遠くばかり探していた。しかし意外に近くでうろうろしていたようだった。後になって聞けば1月24日には家の近くを元気に走っていて捕まえようと思ったけど逃げて行ってしまったとか………牛舎の辺をうろうろしていたとか。見つかった時もあわてて飛んで行った私にしっぽをお尻の間に入れてワンワン吠えた。喜んで飛びついてくれると思っていた私は複雑な心境だった。捨てられた猟犬のナナは食べるものもなく車に脅されたりしたことも忘れて、いっぱいいっぱい走りたかったのかもしれない。ナナの幸せはどっちだったんだろう。
1月10日の夜、ナナは失踪してしまった。雪の夜で迷ってしまったのかと思った。市役所や保健所・警察と届けを出した。私も車にジャーキーと紐を乗せて雪の中をあちこちに車を止めて「ナーナー・ナ~ナ~」と呼んでは移動した。ある時は車の窓を開けて呼びながら走った。1週間待っても2週間待っても戻ってこなかった。小屋の前の餌入れはいつ戻っても良いようにドッグフードを入れておいた。そのうち餌が少しづつ減っているのに気がついた。ナナだったら一気に食べてしまうのに・・・・・と不思議に思っていたら、よくムムと喧嘩をしている野良猫のシロクロブチが食べていた。ナナがいないと分かったのだ。ナナの小屋で寝てもいたらしい。せっかく小屋も新築したのにどうしてしまったんだろうと半分諦めていた。2月3日の朝、秋田犬のごんちゃんのお母さんから、「ナナちゃんに似た犬が近くにいるのよ。 ナナちゃんと言ったら返事をしたから来て見て」と言われて飛んで行った。赤い首輪をしたナナだった。24日ぶりのご対面。寒い日が続いていたからもう生きてはいないだろうと思っていた。少し痩せたかなと思う程度で元気だった。まったく何してたんだろう。