11月27日 NHK「おはよう日本」
マツタケの国内の生産量は
戦前のころをピークに大幅に減少。
天候の影響も大きく
簡単には手が出せない値段がつけられている。
こうしたなか全国有数の生産量を誇る長野県では
マツタケを人工栽培し
産地の未来をつなぐ研究に挑んでいる。
秋の味覚と言えばマツタケ。
生産量が少なく
“キノコの王様”とも呼ばれる。
さらに今年 国際的な自然保護団体が絶滅危惧種に指定。
その希少性があらためて注目されている。
その貴重なマツタケを人工栽培できないか。
(県林業総合センター 特産部長)
「マツタケの人工栽培を目指して苗木を成育させている部屋。」
ずらりと並んだカプセルの中に入っているのはアカマツの苗木。
その根元に広がる白いものがマツタケのもととなるマツタケ菌のかたまりである。
この状態を作り出せたことで人工栽培の研究は大きく前進した。
マツタケ菌はそれだけではマツタケにならない。
菌がアカマツの根に定着して養分をやり取りすることで菌のかたまりが作られる。
このかたまりからマツタケが生まれるため
人工栽培は菌をどのように定着させるかが課題だった。
研究者の1人 古川さんは
信州大学などと共同で
土などをほぼ無菌の状態にすることでマツタケ菌が根に定着するのに最適な環境を作り出したのである。
(県林業総合センター 古川特産部長)
「マツタケの場合は
アカマツとマツタケの菌を人為的にくっつけて発達させるという意味では
非常に大きな技術の前進だと思う。
日本全体でみるとマツタケの生産量は落ちていて
長野県も今後どうなるか分からない。
人工栽培の技術が活用できればと。」
全国有数のマツタケ産地である長野県。
ただ今年は状況が違う。
夏場の長雨とその後の高温でマツタケの生育に大きな影響が出ているのである。
(買い物客)
「マツタケは少ない。
1時間もかけて朝早くから来たのだから買いたかった。」
「一昨年の半分だと言ってた。
やはり秋の名物なので買いたかった。」
(店の担当者)
「一時は山のきのこさえ出なかった。
毒きのこも食べられる雑きのこも採れた年に比べれば半分以下。」
影響はこんなところにも。
マツタケが特産の辰野町。
ふるさと納税の返礼品として人気だが
今年は数が足りず一部の人に発送できていない。
(辰野町ふるさと納税の担当者)
「マツタケがあとどれだけ採れるか
正直分からない。
あとは神頼みで待つだけ。」
多くの人に親しまれ
地域の経済を支えてきたマツタケ。
古川さんは
長野県に欠かせないものだからこそ守っていきたいという気持ちを強めている。
(県林業総合センター 古川特産部長)
「日本人にとってマツタケは食文化として継承しているので
なんとか増やしたい はやしたい。」
そしていま研究は次の段階に入っている。
マツタケ菌をアカマツの根に定着させて菌のかたまりまでは作れた。
ただこれまでの研究から
かたまりをさらに大きくしなければマツタケが生えないことが分かってきた。
そこで菌のかたまりが広がるよう苗木を広いアカマツ林に移し替えている。
古川さんは菌が広がっているかの確認を続けている。
「根の部分の一部を切り取って持ち帰り調べる。」
こうしたなかで問題が。
移し替えたあとに根からマツタケ菌が検出されないものが出てきたのである。
カプセルの中の無菌状態と異なり
自然界では他の菌と競合してしまうことが原因ではないかと古川さんは見ている。
そこでアカマツ林に移し替える前にもうひと手間加えた。
他の菌に触れにくい環境を作って
あらかじめマツタケ菌のかたまりを一定程度成長させることにしたのである。
まだ誰も成功していないマツタケの人工栽培。
古川さんは手探りながらも一歩ずつ進んでいる。
(県林業総合センター 古川特産部長)
「人間が気づいていない何らかの要因があると思うので
それを1つ1つつぶしていけば
人工栽培できる可能性近い。
確実に出るだろうと思ってやっている。」