11月6日 NHKBS1「国際報道2020」
香港国家安全維持法が施行されてから4か月余
香港政府トップの林鄭月娥行政長官は北京で中国政府の韓正副首相と会談し
法律によって情勢は安定したと強調した。
(香港政府 林鄭月娥行政長官)
「香港はすでに安定を取り戻し
大規模な暴力事件も起きていない。」
一方でいま香港の経済に関しては
民主化を求めるデモなどの影響で中国本土からの観光客が激減するなど大きな打撃を受けている。
香港経済界はかつての本土との結びつきを取り戻そうと動き始めている。
香港経済界の重鎮 蔡さん。
日本の経団連にあたる香港中華総商会の会長を務めている。
自身も企業の経営者で
8月以降 中国各地を駆け回り
本土との冷え込んだビジネス関係を回復させようとしている。
この日は江蘇省で地元政府の幹部と会い
開発許可を得るための交渉に臨んだ。
(蔡会長)
「承認が得られたら高層ビルを建設します。」
(江蘇省幹部)
「絶好の立地条件でファーウェイも目の前です。」
香港ではこの1年
一連の抗議活動や新型コロナの影響によりマイナス成長が続き経済が低迷している。
こうしたなか起死回生の一手として期待を寄せているのが
香港と広東省などを一体化した経済圏
“大湾区”の都市開発である。
(蔡会長)
「この港があるエリアに大湾区のビジネスセンターを作ります。」
中国が国家戦略として進める大湾区の開発。
域内の総生産は180兆円を超え
今後の巨額の投資が見込まれている。
10月には習近平国家主席自ら深圳で演説し意義を強調した。
(中国 習近平国家主席)
「大湾区の建設という歴史的なチャンスをつかまなければならない。」
“このプロジェクト無くして香港経済界の明るい未来はない“と
蔡さんは考えている。
(香港中華総商会 蔡会長)
「中国本土と離れたら
香港に道はありません。
国安法によって香港は落ちつきました。
おかげでどう繁栄するかを考えられます。」
一方 中国政府も
香港から中国本土への進出を後押ししている。
広東省広州には起業家などにオフィスや住宅を格安で提供する制度が設けられた。
利用者に対して当局が実施している事業。
高度な自治は維持しつつも
“香港は中国の一部”だという中国政府の立場を教えている。
(広州市南沙区の担当者)
「中国と香港は母と子のような関係です。
うまくいっている時は分かち合い
困難に直面している時は助け合います。」
この制度を利用し去年中国本土に進出した葉さん。
衣料品や雑貨のネット販売を行なっている。
(葉さん)
「香港だと100~200個売れればいい方でしたが
本土では数万個が1日で売れてしまうことがあります。」
葉さんに提供された住宅は家賃の8割以上が補助され
オフィスまではわずか10mの近さである。
大学生になる息子が香港の民主化デモにたびたび参加。
民主化を求める気持ちは理解できるものの
現実は甘くないと感じている。
(葉さん)
「息子に“物事を大きく考えろ”と言いました。
目の前の1つの政策に大騒ぎすべきではないと。
香港は中国の一部であり
我々は中国人だというのは大前提なのです。」
国家安全法の施行から4か月余。
中国経済の巨大な力が
香港の人々を着実に引き寄せている。