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日光 「結構!」

2020-12-22 07:05:11 | 報道/ニュース

11月23日 読売新聞「編集手帳」


栃木県の日光東照宮は古来、
〈日光を見ないうちは結構と言うな〉とたたえられてきた。
語呂のよさからか、
この成句、
明治の訪日外国人にもウケたようである。

英国の女性旅行家、
イザベラ・バードは1878年(明治11年)、
日光に滞在し、
自分には〈「結構!」という言葉を使う資格がある〉と記す(『日本奥地紀行』)。
便もよくなり、
日光はニッポン観光の定番となる。

1885年秋に訪ねた仏海軍士官、
ピエール・ロチも、
自著『日本秋景』に成句を掲げている。
皮肉屋だった人だが、
荘厳な東照宮はもとより、
実は日光街道にも賛辞を惜しんでいない。

宇都宮から急ぐうちに日が暮れる。
金色の光に杉並木が照らされ、
〈太古の神殿での祭儀〉のよう。
さらに側道の苔(こけ)や落葉には幼少期の記憶がよみがえり、
〈一瞬、私は自分がフランスにいるような気がした〉という。

秋色に染まる人里の美しさは、
万国共通なのだろう。
さる都道府県ランキングで最近、
栃木県は魅力度最下位に沈んだ。
地元からすれば「結構!」どころではないが、
慕わしい風景に暮らす幸福度はむろん余所(よそ)と比べるものでもない。

 

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