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苦境に立たされたマンゴー農園

2020-12-19 07:09:49 | 報道/ニュース

11月17日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


ジューシーな甘さがオーストラリアに夏の訪れを告げるマンゴー。
オーストラリア北部 ダーウィン。
熱帯性気候のこの地域はオーストラリア最大のマンゴーの産地。
国内で生産されるマンゴーの半数余りを占めている。
マンゴーの収穫は海外からの季節労働者が主な担い手である。
しかし今年は感染拡大防止対策として3月に国境が封鎖された結果
労働者を確保できない事態に陥った。
対応を迫られた州内の生産者団体。
(生産者団体代表)
「労働力の不足に気づき
 人材確保のため対策が必要になりました。」
(生産者団体の求人動画)
一緒に働きましょう
きっと楽しく過ごせます
あなたの支援が必要です
団体ではマンゴー農園での仕事を紹介する動画を作成し
国内の人たちに仕事への応募を呼びかけた。
しかし国内でも移動の規制が続いたことから十分な人数を集めることは困難だった。
そこで特別に呼び寄せたのが
南太平洋の島国 バヌアツの人たちである。
団体がオーストラリア政府と交渉した結果
バヌアツから約320人の入国が特別に許可された。
これまでもオーストラリアの農園に季節労働者として多くの人たちを送り出していたバヌアツ。
国内で感染者が1人も確認されていなかったことから
入国が許可されたのである。
飛行機のチャーター代も
入国後の2週間の隔離費用も
地元のマンゴー農家が分担して支払うことで合意。
その額は約100万オーストラリアドル(約7,600万円余)にのぼったが
必要な出費だったという。
(生産者団体 代表)
「私たちの選択肢は
 マンゴーを収穫せずに無収入になるか
 別の方法をとるかでした。
 結果
 海外労働者の確保が最適な方法ということになりました。」
バヌアツの人たちが働いている農園。
10月に到着したトゥングさん。
バヌアツでは飲食店の従業員として働いていたが
新型コロナウィルスの影響で閉店に追い込まれ半年以上仕事がない状態が続いていた。
(バヌアツからの労働者 トゥングさん)
「観光客がバヌアツに来なくなり
 多くの人が仕事のお金もない生活を強いられることになりました。」
過去にもマンゴー農園で働いたことがあるトゥングさん。
大きくなった実を慣れた手つきで手際よく収穫していく。
この農園を任されているダルグリッシュさん。
何とか13人のバヌアツの人を雇い
例年通り収穫できるようになったという。
(ダルグリッシュさん)
「バヌアツの人たちのおかげで私たちの不安は消えました。」
仕事の時給は25オーストラリアドル(1,900円余)と
バヌアツの最低賃金の10倍近くである。
バヌアツに3才と6才の子どもを残してきたトゥングさん。
この仕事のおかげで家族に十分な生活費を送ることができるようになったという。
(トゥングさん)
「ここで家族を助けるために働いて
 お金を稼げることを誇りに思います。」
バヌアツにとってもこうした労働者からの送金は
新型コロナウィルスで打撃を受けた国内経済の回復の大きな支えになっている。
(バヌアツ サロング議員)
「観光が主要産業のバヌアツでは
 国境封鎖以降 経済が落ち込んでいます。
 我が国にとっても人々の経済活動の継続は重要です。」
人手不足と仕事不足という
それぞれの課題に直面した2つの国の間で
お互いにとって利益となる助け合いが進んでいる。

オーストラリアの経済にとって海外の労働者は重要な担い手で
特に農業ではマンゴーだけでなく
ベリーなど他の果物や野菜でも収穫の人出が足りないという懸念の声が相次いでいる。
また例えばオーストラリアで有名な羊毛産業はニュージーランドからの毛刈り職人によって支えられていて
経験のない人がすぐに技術を身につけられることは簡単ではないことから
労働者を早く受け入れるよう待ち望む声が上がっている。
政府は国の経済に大きな影響を及ぼしかねないとして
季節労働者の入国再開については前向きな姿勢を見せていて
北部のマンゴーの事例をきっかけに他の州でも
果物の収穫のために季節労働者を特別に受け入れる動きが始まりつつある。
一方で労働者を送り出す側の国々は医療体制が十分でないところが多く
新型コロナウィルスへの不安が広がっている。
バヌアツでも11月に初めて感染者が確認された。
オーストラリア政府はバヌアツなど太平洋島しょ国に対し
医療体制を支えるための資金
それにウィルスの検査キットや医療従事者向けのマスクの供給など
支援を続けている。
オーストラリアの感染の拡大は徐々に収まってきていて
11月に入ってから1日当たりの新たな感染者数は十数人程度にとどまっている。
これは海外からの入国だけでなく
国内でも州を越える移動を厳しく規制していた結果ともみられ
もっとも感染状況が深刻だった第2の都市メルボルンも
国内で唯一続いていた外出制限が10月末に解除された。
日本からの入国は規制が続いているが
11月18日から日本を訪問していたモリソン首相は
菅総理大臣との会談で
両国間の往来再開についても協議する見込みである。
ただ
観光客や留学生が海外からたくさん訪れるようになるまでにはまだ長い時間がかかりそうで
観光業や教育機関そして農業など
海外からの人材に支えられてきた産業への影響は長く続くことになりそうである。

 

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