植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、メダカと野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

緑石混淆 幻の石「艾葉緑」を求めて その2

2024年01月06日 | 篆刻
石印材のコレクターや愛好者さんは、ほぼすべての方が黄金色に輝く透明度のある「田黄石」を有難がり、優先的に集めたいと願います。ワタシもその一人でありますが、ヤフオクなどでも落札価格が高騰し何しろお値段が高いので、ほとんど指をくわえているしかないのであります。だからと言って田黄が最も貴重で希少というわけではありません。

1934年に刊行された中国の「壽山石攷(考)」という詳説の書には「艾緑(かいりょくまたはがいりょく)」の項目にこう書かれております。ちょっと長いので一部割愛します
「寿山郷月尾渓の辺に産す。すなわち月尾緑(がっぴりょく)・艾葉緑と名づく。
質なかば透明、すこしく光沢あり。色は竹葉青を首とす。ただし久しくしてようやく黒し。玉白色の霊なるものあり、また佳。質なかば潤、色変せず。あるいは黄紋を綴るものは次。紫多く中に緑を産す、緑多く中に紫を産す・・・」
これを現在日本語に訳すと
「寿山郷の月尾渓でとれるので月尾緑ともいう。半透明(亜透明)でやや光沢があり、世に出てからかなり長い年数を経て黒みがかってくるが、最も良いのは竹の青々とした葉っぱのような色合いである。磨いた玉のような白透明のものもまたいい。
潤いは中くらいで、時間がたっても色変わりしない。中に黄色い線条紋が入るのもあるがこれは価値は落ちる。紫と緑が混在していることが多い(月尾石は別称月尾紫と言って、紫色の部分が多いのが特徴である)・・」
うーーーむわかったようなわからないような。

山内秀夫さんの注釈によると「康熙年間には大量に産出されたが非常に珍重された。明の時代には第一位に推している専門家もいる。艾葉にもピンキリがあって、上品なものは深緑温順にして気品も高い。近年は尊ぶに値しない駄石が多い。月尾紫・広東緑などを混同して艾葉と呼ぶことが少なくない」としております。

また、小林徳太郎先生の著書にも、上記の古文が引用され、艾緑はすなわち月尾緑であるとしていて、純緑の塊は稀で、数多ある緑石の中でも「これほど色感が清く快い石を他に見たことが無い」とべた褒めしています。ただ話をヤヤコシクしているのは。小林先生によれば「青田石の中にも艾葉緑の名がみえる」として寿山の月尾緑に限定できないと書いています。青田凍の緑凍のものより透明度はやや落ちるが、ほのかな青を感じる緑に濃緑斑点を含む意思があるので、青田系の艾葉緑かもしれない、というのです。

両者に共通するのは、滅多に見ることができないのでよくわからないが「これ」がそうではないか?といった論調なのです。
掲載されている写真をみても書籍によってまちまちなのです。

因みに「中国印石図譜」という図鑑には「艾葉緑」として掲載されている写真が下記であります。

どうですか?ほとんど共通する特徴が無くて、その前に引用した説明文とも合致しないように思えるのです。一番下の図鑑の写真に至ってはますます混乱してしまいますね。

さて次回は、実際にワタシの手元にある緑石を分類していこうと思います。明らかに「艾葉緑」ではない別種のものを除いて残った中にもしかしたらこの幻の石がある・・・かもしれません。
コメント
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