すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

「口から呼吸ぅ〜♪ 鼻から吸わないぃ〜♪ がんばってぇー♪ がんばってぇー♪」

2024-02-29 18:57:17 | エッセイ

    *チクナイン・鼻うがい「使い方」篇

慢性上咽頭炎になり「鼻うがい」を始めた

 あれは去年の6月だった。異常に激しい喉(のど)の痛みと鼻詰まり、鼻水の症状が一度に来た。もう半年以上、ずっと続いている。いまも治っていない。

 いや副鼻腔炎っぽい症状なら、はるか子供の頃からあるのだ。で、長く通っている行きつけの内科で歴代、ディレグラ、ザイザル、ジルテックなど、強いヤツから弱いのまであらゆる種類の鼻のクスリが出た。だがまるで改善しない。

 鼻の症状を訴えて近所の耳鼻科にも行ったが、いままで出たそれらの薬の長大なリストを見せると「こりゃウチで出すクスリなんてもうありません。あるもの全てすでに処方されています」と認定された。

 いや確かに自力で調べた限りでも、すでに市場に存在するあらゆる鼻の薬が処方されているのだ。なら無理もない。だから鼻のほうはもう放置していたのだが、今回新たに始まった強い喉の痛みには耐えかねた。

「市販薬で治るだろう」は甘かった

 それでも初めは油断して「市販薬で治るだろう」とタカをくくっていた。だが症状はまったく消えない。あまりの激しい喉の痛みに1週間でネを上げ、ネットで調べてよさそうな耳鼻科へ行った。

 するとロキソニンとアレロックOD錠、喉の痛みにはセフジトレンピボキシル錠が出たが、まるでダメ。医者はロクに話も聞いてくれず、ただ機械的にテキトーなクスリを処方している印象が拭えない。

 なんだかドクターショッピングの典型だが……とにかく強い喉の痛みが辛すぎて、同じ医者には1週間しか治療の猶予を与える気がしない。どうしても我慢できないのだ。

 で、今度は歴史のある耳鼻科へ行った。ここは期待の「Bスポット療法」をしてくれる。最近ではEAT(上咽頭擦過療法)とも呼ばれる治療法だ。これは上咽頭の消炎に効果がある。私は「慢性上咽頭炎」と診断された。


*上咽頭とは?「みやけ耳鼻咽喉科アレルギー科」HPより画像を引用

 この慢性上咽頭炎の症状は実に多彩だ。喉の痛みや違和感、睡眠障害のほか、後鼻漏(鼻水が喉の奥に流れ込む)ことから来る諸症状(鼻と喉の間に粘り気が張り付く、鼻水が喉に下りる、痰がからむ、咳払いが多い)が起こる。

 特に私の場合は首と肩の激しいコリもつらい。これも典型的な慢性上咽頭炎の症状なのだ。

 また自律神経のバランスが崩れ、原因不明の頭痛やめまい、倦怠感、胃の不快感も起こり得る。なかにはウツやパニック障害、過敏性腸症候群など、メンタルな症状が出る人もいるらしい。まさに現代病だ。

Bスポット療法とは何か?

 一方、この炎症に効果があるBスポット療法とは、カンタンにいえば上咽頭(「のどちんこ」の上の後ろの部分)に、塩化亜鉛という薬を塗る治療法だ。


*Bスポット療法とは?「みやけ耳鼻咽喉科アレルギー科」HPより画像を引用

 厳密には内視鏡(ファイバーカメラ)で奥を見ながら、鼻や口から綿棒でノドの奥の部分に擦りつける。喉の痛みがある場合、この上咽頭に炎症が起きているケースが多いのだ。

 だがこの耳鼻科の先生は「喉からのみ」しか施術してくれない。しかもファイバーカメラはなし。かつ典型的な3分診療で、ロクに身のあるコミュニケーションが取れない。

 しかもクスリは滋陰降火湯や葛根湯エキスなど、漢方薬のみ。漢方医なのだ。まあ慢性上咽頭炎はメンタルにも影響しかねないので漢方も一案なのだが、なんせこの人は施術が雑だ。

 おまけにノドの痛みに効くトローチも、「オラドールSトローチ」などという、変なピンク色のすぐ溶けてなくなってしまう役立たずなヤツしか出ない。

 で、「あのぅ、SPトローチ(ふつう「トローチ」といえばこれだ)を出していただけませんか?」とやんわりお願いすると、一刀両断で「ウチはこれしか出せないんだ」と来た。

 え? いちばんポピュラーなSPトローチが処方できない? そんな話はまったく聞いたことがない。当該製薬メーカーと何か癒着でもしているのだろうか?

 それでもガマンしてこの耳鼻科には2ヶ月間、毎週通った。だが医者の粗雑な診療姿勢がどうしても容認し難い。で、去年の年末を限りに、もう見切った。

最後にとうとう「当たり」を引いた

 もう今度は絶対に失敗できない。ネットであれこれ調べ込み、同じく例のBスポット療法をしてくれる耳鼻科を探した。すると今度はやっと当たりを引いた。

 その女医さんは非常にコミュニケーション能力が高く、的確に私の症状を分析して下さる。私とツーカーでお話が通じる。しかも今度はしっかり内視鏡(ファイバーカメラ)診察つきだ。つまり施術がBスポット療法の正式な形なのだ。

 私は仕事柄、いままで無数の有名医に取材してきたが、こんな優秀な先生は今まで一度も見たことがない。さすがに頑固な私も、この先生のアドバイスだけは聞く気になった。

 それはどういう意味か?

 もう鼻のほうはカンタンに治らないと自覚している。ただし喉の激しい痛みだけは耐えられない。で、ハラをくくって伝家の宝刀を抜いたのだ。先生に勧められた「鼻うがい」をやろう。そう決断した。(やり方は冒頭の動画をご参考まで)

 実はいろんな医者にずっと鼻うがいを勧められてきた。だが、どうしてもイヤで仕方なかった。しかし事ここに至っては如何ともしがたい。もうマナ板の鯉だ。

「鼻うがい」とともに幸せがやってきた


*「老木医院」HPより画像を引用

 薬局で市販のものもあるが、私は信頼できる当の先生経由で然るべき処方薬局から容器を買った。

 やり方はまず塩化ナトリウムをぬるま湯で溶かし、病院で買った専用の容器に入れて冒頭の動画にある通りの鼻洗浄を毎日、始めた。まず片方の鼻の穴から液を入れ、逆の鼻の穴から出す。これを左右の鼻に対して行う。

 もちろん初めは強い違和感があった。だがそれもすぐ解消し、鼻のスッキリ感だけが残るようになった。習うより慣れろ、だ。

 鼻うがいする動画だけ見ると「こんなの絶対できないぞ」と思ってしまうが……実際にやってみると案外、平気なものですぐ慣れた。

 しかもうちのカミさんがわざわざ毎日ぬるま湯を作り、専用器に入れて渡してくれる。そして彼女は私が洗面台で鼻うがいをするたびに、洗面台の脇に立つ。こうして毎日、私の隣に寄り添い、鼻うがいが終わるまでこんなふうに歌ってくれる。

「口から呼吸ぅ〜♪ 鼻から吸わないぃ〜♪ がんばってぇー♪ がんばってぇー♪」

「口から呼吸ぅ〜♪ 鼻から吸わないぃ〜♪ がんばってぇー♪ がんばってぇー♪」

 やさしく子供をあやすように、メロディーをつけて何度も囁き私を勇気づけてくれる。その声色はなんとも心地よく、聞くたびに幸せな気分になる。

 私は過去に取材で何人ものミュージシャンと出会い、彼らの流麗でハイレベルな歌や演奏を聴いてきた。だがこんな純朴ですばらしい専属歌手にめぐり逢ったのは初めてだ。

 この歌声が聴けるなら、かえって自分はもう一生治らず鼻うがいがずっと続いてほしいーー。そんな想いさえ湧いてくる。ああ、「小さな幸せ」ってこれなんだなぁ。

 自分はこの人と一生しっかり添い遂げたい。

 そう強く感じる。

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