世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

シリーズ⑩:ラームカムヘン国立博物館

2016-11-20 07:35:12 | 博物館・タイ
<続き>

先ず、ヒンズー・イメージとして欠損している石造の人物像を前に、大きなパネルでその内容をガイダンスしている。スコータイの中世は、バラモンとヒンズー思想の影響を受けた地であった。
次は名高いラームカムヘーン王碑文であるが、これはレプリカで実物はBKK国立博物館で展示されている。
以下、展示されていた陶磁を紹介するが、先のサンカローク陶器博物館に比較すると、あまりにも貧弱の感が否めない。
元染の酒会壺である。何処で出土したのか記載がないが、タノントンチャイ山中ないしは近郷であろう。大きく割れているのを繋ぎ合わせてある。胴には牡丹唐草が描かれる。これと同じ図柄のカロンの壺が存在することは、先般紹介した通である。
布袋である。タイでは観音信仰がそれなりに盛んで、このような布袋はまま見ることができる。
スコータイの焼締め壺とある。スパンブリーの壺をみているようである。


ナーガ、マカラの類も展示してあるが、いずれも僅かの展示でしかない。

展示品のなかで目を引いたのは、塼であろうガルーダとアイラーバタである。いずれも寺院ないしはチェディーの装飾に用いられたものと考える。とくにガルーダは透かし彫りの塼である。
ほぼ完品に近いモン陶であるが、発掘時石膏で覆って掘り出したのであろうか?その状態のまま展示されている。カベットの上段は波文、下段は放射文で装飾されている。サンカンペーンやパヤオに、何がしかの影響を与えたものと思われる。






                                  <続く>







シリーズ⑨:サンカローク陶器博物館:その18

2016-11-18 08:07:10 | 博物館・タイ
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●魅了するカロン陶磁・#5

今回は瓶と高坏を紹介したい。尚、今回をもってシリーズ⑨:サンカローク陶器博物館の展示品の紹介は終了とする。

左のケンディーと次の玉壺春瓶には魚文が描かれているが、中国青花の魚文というより、安南陶磁の魚文に似ているように思われる。






実に多様な高坏である。このように多くの形状の高坏を1箇所でみたのは、今回が初めてである。口縁の形状も様々であるが、直上の口縁が山形に刻まれているのは、古今東西初めて見る。そして、いずれも優品揃いである。オーナーの慧眼に感服する。




                                 <続く>


シリーズ⑨:サンカローク陶器博物館:その17

2016-11-17 07:51:22 | 博物館・タイ
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●魅了するカロン陶磁・#4

今回は蓋付壺や少し大き目の盒子、さらにケンディーや水注の類を紹介する。先ず盒子である。

盒子と呼ぶには何か違和感も感ずるが、適当な表現がみあたらない。形は様々である。

次は蓋付壺で、紐は擬宝珠で胴には牡丹唐草が描かれている。このような絵柄は元染の影響と考えている。
胴は飾窓で四区画に区切られ、その中に花文を取り囲むように鳳凰が配置されている。北タイでよく顔をだすハムサ(ハンサ)ではなく、鳳凰である。元染の影響以外の何物でもなかろう。


シーサッチャナーライにも種々の水注をみるが種類の多様さは、カロンが上回るのではないかと、思えるほど豊富である。所謂単純なケンディーの形は、少数であった。




                                  <続く>



シリーズ⑨:サンカローク陶器博物館:その16

2016-11-16 14:12:17 | 博物館・タイ
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●魅了するカロン陶磁・#3

今回は盤を紹介する。最初は双魚文盤である。カロンの双魚文盤は、幾つかの著名な絵柄が存在するが、下の盤は、それらに劣らず力強い筆致で描かれている。尚、カロンの魚文の頭部は、写真のように塗りつぶされている事例が多い。

カロンには何故か、写真のように点描の絵付けを見ることができる。見る人の感覚によるが、どのようなイメージを受けるであろうか。当該ブロガーには見込みの花が、何か大きく見えるように感ずる。

見込みの花は何か?安南の花卉文を写したのでは?・・・と思えるほど似ている。


盤の配置が天地というか上下逆に置かれているため、鳥文様が逆さにみえる。長い尾を持つことから孔雀であろうか?孔雀は毒蛇を食らうと云われ、重宝されていた。
麒麟が見込みに描かれている。明青花の麒麟文様を写したものであるが、カロン好みに翻案されている。
以上、大型の盤を見てきた。お気付きであろうが、北タイ諸窯の盤で鍔縁の盤は比較的少ないが、カロンは鍔縁の盤が多い。最も特徴的なものは、上から4番目の盤を除いて、器面全体に繁辱なまで、絵付けが施されている点である。カロン陶磁といえば、器面を覆いつくす絵付けが特徴である。

                                                                  

                                   <続く>


シリーズ⑨:サンカローク陶器博物館:その15

2016-11-15 09:37:12 | 博物館・タイ
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●魅了するカロン陶磁・#2

昨夜8時頃、山陰の片田舎でも雲の切れ間から、スーパームーンを東の空に仰ぎ見ることができた。確かに普段の月よりも一回り大きかった。当該ブログを御覧の皆さんは、どうでしたでしょうか。

先ず前回紹介しきれなかった肖形の残りを紹介したい。写真の人物肖形は高さが(目分量であるが)1.2m前後と思われる。見ると腰のあたりで上下2分割されている。

鶏冠(とさか)をもつ鳥を捧げ持っている。鶏であろうか? 人物の眉毛は太いが左右が繋がっていないところを見ると、タイ族であろう。
他の肖形物も見ることができた。ストゥーパ(チェディー)やそこに坐する仏陀、あるいは仏陀の涅槃像も存在していたようで、それらは何れも大型の陶磁である。
入手したレジメと云おうか小冊子には、仏陀が平和祈願をしている像とある。陶工も敬虔な仏教徒であったのか。さらには仏陀の涅槃像も見ることができる。
下は1mを越えるようなチェディーである。中に仏陀像があったのか、なかったのか記憶にない。
いずれも弛緩はなく、陶工の真摯な取り組み姿勢が垣間見える。いずれの肖形も、ここまでくれば立派な芸術作品である。
高さ60cmほどの大壺で、これも唸りたくなるほど堂々としている。口縁は北タイで見る盤口で、胴のはりが実に美しい。胴裾のラマ式蓮弁文は、丁寧かつ張りのある描線である。胴の中央は二重線で飾り窓が設けられ、中には悠然と泳ぐ鯉科の魚が二匹、腹をみせており、蓮池の王者の風情である。
胴を飾り窓のように四区に区切り、絵付けをする方法の初出は北宋代の磁州の陶枕?それとも大阪市立東洋陶磁美術館の磁州窯で、北宋代の緑釉白地黒掻落し牡丹文酒会壺の流れを汲む、元代の白地鉄絵牡丹文酒会壺、それを受け元染でポピュラーな手法になったのか・・・中国陶磁のど素人には、この程度しか思い浮かばないが。写真のカロンの区画の仕方は、中国陶磁の影響を受けたと思われる。
それでは、腹を見せ魚体をくねらせて泳ぐ、鯉科の魚の描き方はどうか? 浅薄な見識からは、中国陶磁で見た覚えがなく、安南青花か安南五彩の影響であろうか?いずれにしても、研究に値する大壺である。

圧倒され続けの、数々の大壺であった。次回は迫力満点の数々の大盤を紹介する予定である。




                                  <続く>