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ベトナム建国神話とタンロン水上人形劇

2018-10-11 06:48:48 | ベトナム・ハノイ

ベトナム建国神話とはヴァンラン(文郎)国建国神話のことである。古代中国の伝承に登場する三皇五帝の一人である、炎帝神農氏の三代の子孫である帝王には、二人の子供がいた。
帝王は賢い弟に帝位を譲ろうとしたが、弟はこれを固辞した。そこで帝王は、兄を北方の王に、弟を南方の王にした。
弟は洞庭君の娘と結婚し、Lac Long Quang(貉龍君:ラクロンクワン)が生まれた。ラクロンクワンは成長して、仙人とされる Au Co(嫗姫:アウコ)と結ばれ、100人の男の子が産まれた。子供たちが大きくなるとラクロンクワンは50人の息子達を連れて海岸の平野部へ、アウコは残りの50人の息子達を連れて山地へ行き、別れて暮らすことになった。ラクロンクワンに従った50人の息子の中から、フンヴォン王(雄王)が出てヴァンラン(文郎)国を建国したと云う。
タンロン水上人形劇をみると、最初が『同胞』とネーミングされた建国神話であった。その日本語説明書によると、ベトナム人の始まりに関する伝説で、龍の王様ラクロンクワンは山の女王アウコと結婚して、100人の息子をもうけた。それ以来100人の息子たちはたくさんの子孫を残し、やがて彼らの末裔がベトナム人になった・・・と、記載されている。

その人形劇の一場面が添付の写真である。ここでラクロンクワンは龍の人形で、アウコは何と鳳凰の人形となっている。これらは何を示しているであろうか。
安田喜憲国際日本文化センター教授の著書『龍の文明・太陽の文明』によると、北の龍・南の鳳凰、北の馬・南の牛という明白な南北構造がみられるとしている。古来、北ベトナムは越として中国最南部として認識されていた。
そこで華北を象徴する龍と、華南を象徴する鳳凰が咬合して、ベトナム人の祖100人が誕生したとの伝承である。雲南では龍は、ガルーダとおぼしき大鵬金翅鳥(たいほうきんしちょう)に食べられる存在となる。氏によると、その底に流れるのは漢族と雲南少数民族との長期間の確執による結果であろうと、分析されている。
それが雲南と接する北ベトナムでは、咬合してベトナム人の祖100人が誕生したの伝承に変化する。このようにベトナムでは良否の判断は別として、中国から伝承や文化の影響を強く受け、それが今日まで継続していると思われる。

 

<了>

 


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