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続・サンカンペーン陶磁の蛍光X線分析・その1

2019-02-04 09:37:58 | サンカンペーン陶磁

2017年2月21日から、今回のブログと同じテーマで5回に渡り連載した。分析資料は下の写真である。

ことの発端は、資料5の真贋問題である。バンコク大学東南アジア陶磁館の学芸員氏の見解では、悪意をもった倣作(贋作)との見解である。そこで過去記事にしたことがあるが、熱ルミネッセンス年代測定法により分析しようとした。分析業者に尋ねると1検体あたり、1cm角を削取る破壊検査で、1件当たり消費税込みで約30万円とのこと。破壊検査をされ、骨董価値を限りなく損ね30万円も出せる筈がない。そこで蛍光X線分析を行なうことにした。資料は上掲写真の1~5である。ここで比較基準は資料1である。

 資料1は麒麟文の見込み陶片である。サンカンペーン陶磁の一つの特徴は、数量的には10%程度ではあるが、写真の瘤をもつ陶磁が存在する。そして陶片である。これを贋作と見るのか、どうみても本歌であるので、これを基準とした。

鉄絵顔料と胎土を蛍光X線分析で組成の定量分析をおこなった。5点共に鉄絵顔料分析では、PbやSnの低温顔料組成は検出されなかった。顔料分析の結果、資料1と相関を示したのは、驚くなかれ資料5であった。当初資料1と資料3の鉄絵顔料組成が近似するものと考えていたが、予想は大きく外れた。いずれにしても蛍光X線分析による顔料や胎土分析の結果、贋作を示す組成は何ら検出されなかった。

しかし、狡猾な贋作者、つまり低温焼成顔料ではなく、本歌の顔料組成分析を行ない、それを再現して1200度程度の高温焼成を行なっているかとも考えられる。しかし当該ブロガーの少ない経験では、そのような贋作は未だかって目にしていない。

そこで今回、資料数を大幅に増加して分析してみることにした。陶片はワット・チェンセーン古窯で表採したものである。従ってどれほどの時代間隔の資料が採取できたのか不明である。10年20年間隔程度しかないとも思われる。先ず分析にかける陶片は以下の通りである。

 ワット・チェンセーン窯は過去の文献や表採資料から明らかなように、鉄絵双魚文や鉄絵草花文の盤類を焼成していた。今般これらのデータを積み上げたい。合わせて下写真の完品鉄絵盤との相関を確認したいと考えている。

更にシーサッチャナーライの所謂宋胡録の陶片に用いられた顔料組成とも比較しする。

どのような結果になるか楽しみである。

<了>

 


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