世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

タイ・クーン族は太陽信仰の民であった

2018-08-16 07:41:53 | 東南アジア少数民族

海外の日本語情報誌はホノルル、中国、東南アジア以外は知らないが、チェンマイで発刊されているCHAOは、それらの中で出色の出来栄えである。内容豊富でなによりも地元にそくした記事に溢れている。過日CHAO368号に、タイ・クーン族の伝統的住居と家屋の精霊テワダー・ファンを祀る祭壇や、その信仰について寄稿されていた。寄稿者は2018年修士課程を修了したM女史である。以下、文字の羅列で申し訳ない。

先ず読後に感じたことから記したい。タイ・クーン族は稲作と太陽信仰の民であり、日昇の方角である東を重視する民族で、古代に倭族と何らかの接触があったろうと考えた。

M女史は建築学の徒とのことだが、建物の構造から始まって家屋の霊や土地霊など、詳細な調査に基いて『精霊と暮らす家』(副題・『トンヘーンノーイ村の住居と精霊』)と題して記述されている。トンヘーンノーイ村はチェンマイの南30kmに位置し、すぐ近くにハリプンチャイ王国(8-13世紀)時代の環濠都市・ウィアンターカン遺跡が存在する。

M女史の寄稿文の概要を紹介する。タイ・クーン族の伝統的住居は・・・、

①  木造高床式である

②  屋根が入母屋造り

③  広間ー寝室ー台所の順に並ぶ間取り

・・・となっており、家屋の精霊であるテーワダー・ファンは、世帯主の寝室に宿ると綴られている。その寝室は建屋の東側に位置し、そこには特定の2つの柱がある。それは『サオ・パヤー(男の柱)』、『サオ・ナーン(女の柱)』と呼ばれ、家屋の建築時、他の柱に先んじて建てる柱だという。なにやら大黒柱のようである。そのうち『サオ・パヤー』は寝室の東側に建てられ、その柱にテワダー・ファン、つまり家の精霊を祀る祭壇が設えられている。祭壇といっても男の柱に、板を横たえるだけのものである。タイ・クーン族は頭を東に向けて寝る習慣があるという。東は日昇の方角である。先述のようにテワダー・ファンの祭壇も東に位置する。人々は就寝前に枕側の祭壇に向かって祈り、祭壇に頭を向けて眠ることになる。このように方角として東が、重視・神聖視されていることが分かる。

母屋の東側の敷地には、土地の精霊を祀るチャオティー(土地神と呼ぶのがふさわしいか?)の祠(タイ族はサンプラプームと呼ぶ)がある。また室内の広間には仏を祀る祭壇(ヒンプラ)もあるという。信仰心の篤い民でもあるのだ。

タイ・クーン族は、ミャンマー・シャン州チェントンの多数派で、シャン族の5つの主要集団のひとつである。M女史によると、トンヘンノーイ村のタイ・クーン族は、チェントンが故地で、200年以上前に北タイに越境し、その一集団がトンヘンノーイ村に定住したとのことである。

シャン族もタイ族もタイ・クーン族と同じように稲作民で太陽信仰の民であった。話は飛ぶが、劉邦が漢帝国を興国する前の中国は、春秋戦国・秦の時代である。その楚国の人々が話す楚語は、タイ語系の言葉であったという説がある。合わせて彼らは鯨面文身しており、倭人の習俗と似かよっていた。今般CHAO368号を読んで、日本人の祖先は朝鮮半島の北から渡来した北辰信仰の民もいたであろうが、揚子江流域や西南海から稲作を携えて渡海して来たであろうと考える。さすれば、タイ・クーン族も古代に、倭族と何らかの関りがあったであろうと、考えた次第である。

<了>

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿