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怪人二十面相・伝/北村想
出版芸術社
劇作家として名前を聞いたことがある北村想氏が、江戸川乱歩が生んだ最大のキャラクター“怪人二十面相”を主人公とした小説を書いていました。演劇をメインとしている作家による二十面相、意外な取り合わせな気がしました。
実は、小説を読む前、ボクの中の二十面相のイメージが崩れるとイヤだなと内心思いつつ、本の扉を開いたのでした。しかし、いざ読み始めるとそんなこと事前に思っていたことが氏に対して申し訳ない、早く次のページにいきたいというワクワクドキドキ感のある面白さで一気に読了しました。
その小説の出だしはこうです。“<彼>は市井の下駄職人の三男坊として生まれた。大正十四年のことである。それから<彼>は八歳で遠藤曲馬団に入団した。”そうこの<彼>こそが二十面相その人です。乱歩の小説では『サーカスの怪人』で一言しかふれられなかった二十面相のこと(サーカスにいた遠藤平吉)を、この劇作家はそのわずかなキーワードを手がかりに創造力を膨らまし、傑作小説を書き上げたのです。
小説の出だしですでに氏は、下駄職人の三男坊、大正十四年生まれ、八歳で遠藤曲馬団に入団といったオリジナリティーを付加させていきながら、創造力はどんどんと膨張させていきます。小説を読むにつけ、怪人二十面相は二人いた!なんていう衝撃的な展開へと進んでいきます。乱歩が一言書いた二十面相その人=遠藤平吉は二代目・二十面相で、初代・二十面相に遠藤丈吉という先達の天才怪盗がいるなんていう、衝撃的?な展開へと物語は進んでいくのです。
おまけに、二十面相のライバル・明智小五郎も二人いて・・・というまさに世代を超えた対決となってきます。そしてその展開が乱歩と違うよなんていうことも思わずに、不自然ではなくすんなりと受け入れられるのです。また、この小説に登場する明智は傲慢で名誉欲にかられたイヤミな奴、そんな描かれかたでそれがスパイスとなってなんともいいのです。
それとは対照的に、二十面相は人情味たっぷりに、二十面相の伝記なのであたりまえなのでしょうが、書き込まれておりどんどん彼に感情移入していってしまいます。天才的頭脳の持ち主で高慢ちきな明智と、学もなく美術工芸品の知識もなくあるのは身の軽さと知恵のみの二十面相の対決。心優しき青年である二十面相がエゴむき出しの明智青年にその戦いを挑むとき、ボクは怪盗にエールを送りたくなってきました。
よくよく考えたら二十面相は、予告してお宝を盗む訳ですから、明智はじめ少年探偵団や警察らが二十面相包囲網を作っています。およそ勝ち目はないような戦いではないでしょうか?そこに果敢に挑む二十面相こそが、カッコイイそんな風に思えるのです。
この小説の最後に新保博久氏による解説が載っているのですが、小説を読み終えた後改めて乱歩の『怪人二十面相』や『青銅の魔人』に手を伸ばしたくなると氏が指摘するように、ボクも同じような気持ちになり、北村氏の術中にはまってしまった、そんな読後の感想でした。
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劇作家として名前を聞いたことがある北村想氏が、江戸川乱歩が生んだ最大のキャラクター“怪人二十面相”を主人公とした小説を書いていました。演劇をメインとしている作家による二十面相、意外な取り合わせな気がしました。
実は、小説を読む前、ボクの中の二十面相のイメージが崩れるとイヤだなと内心思いつつ、本の扉を開いたのでした。しかし、いざ読み始めるとそんなこと事前に思っていたことが氏に対して申し訳ない、早く次のページにいきたいというワクワクドキドキ感のある面白さで一気に読了しました。
その小説の出だしはこうです。“<彼>は市井の下駄職人の三男坊として生まれた。大正十四年のことである。それから<彼>は八歳で遠藤曲馬団に入団した。”そうこの<彼>こそが二十面相その人です。乱歩の小説では『サーカスの怪人』で一言しかふれられなかった二十面相のこと(サーカスにいた遠藤平吉)を、この劇作家はそのわずかなキーワードを手がかりに創造力を膨らまし、傑作小説を書き上げたのです。
小説の出だしですでに氏は、下駄職人の三男坊、大正十四年生まれ、八歳で遠藤曲馬団に入団といったオリジナリティーを付加させていきながら、創造力はどんどんと膨張させていきます。小説を読むにつけ、怪人二十面相は二人いた!なんていう衝撃的な展開へと進んでいきます。乱歩が一言書いた二十面相その人=遠藤平吉は二代目・二十面相で、初代・二十面相に遠藤丈吉という先達の天才怪盗がいるなんていう、衝撃的?な展開へと物語は進んでいくのです。
おまけに、二十面相のライバル・明智小五郎も二人いて・・・というまさに世代を超えた対決となってきます。そしてその展開が乱歩と違うよなんていうことも思わずに、不自然ではなくすんなりと受け入れられるのです。また、この小説に登場する明智は傲慢で名誉欲にかられたイヤミな奴、そんな描かれかたでそれがスパイスとなってなんともいいのです。
それとは対照的に、二十面相は人情味たっぷりに、二十面相の伝記なのであたりまえなのでしょうが、書き込まれておりどんどん彼に感情移入していってしまいます。天才的頭脳の持ち主で高慢ちきな明智と、学もなく美術工芸品の知識もなくあるのは身の軽さと知恵のみの二十面相の対決。心優しき青年である二十面相がエゴむき出しの明智青年にその戦いを挑むとき、ボクは怪盗にエールを送りたくなってきました。
よくよく考えたら二十面相は、予告してお宝を盗む訳ですから、明智はじめ少年探偵団や警察らが二十面相包囲網を作っています。およそ勝ち目はないような戦いではないでしょうか?そこに果敢に挑む二十面相こそが、カッコイイそんな風に思えるのです。
この小説の最後に新保博久氏による解説が載っているのですが、小説を読み終えた後改めて乱歩の『怪人二十面相』や『青銅の魔人』に手を伸ばしたくなると氏が指摘するように、ボクも同じような気持ちになり、北村氏の術中にはまってしまった、そんな読後の感想でした。
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