飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

江戸川乱歩の研究?4⇒「D坂の殺人事件」から

2006-03-06 | 江戸川乱歩
D坂の殺人事件は、“却々の美人で、どこがどういうではないが、何となく官能的に男を引きつける様なところがある”と称された古本屋の細君が殺されたところから始まる。それを語り手である探偵小説好きの語り手と明智小五郎が発見する。語り手はいろいろと推理を巡らし明智にまで嫌疑をかけてしまうのだが、見事、明智は人の奥底にある心理にスポットをあて事件の真相を見抜くのである。

この事件は殺意から生じたのではなく、ある猟奇的趣味の行き過ぎた過剰な行為の結果によって引き起こされたのであった。小説は、それをねっとりと描くのではなく淡々と進行する、しかし、ほんの数行示唆することによって、事件の背後にある倒錯的世界を隙間みせ、読者を猟奇という裂け目に引きずり込む仕掛けとなっており、ドキッとさせるのである。


◆さり気無く挿入させるこんなエピソード
“何でも、銭湯で出遭うお神さんや娘達の棚卸しの続きらしかったが、「古本屋のお神さんは、あんな綺麗な人だけれど、裸体になると、身体中傷だらけだ、叩かれたり抓られたに違いないわ。別に夫婦仲が悪くもない様だのに、おかしわねぇ。」すると別の女がそれを受けて喋るのだ。「あの並びの蕎麦屋の旭屋のお神さんだって、よく傷をしているわ。あれもどうも叩かれた傷に違いないわ」・・・・・・”

◆そして、最後に明智小五郎は語る・・・
“旭屋の主人というのは、サード卿の流れをくんだ、ひどい惨虐色情者で、何という運命のいたづらでしょう、一軒置いて隣に、女のマゾッホを発見したのです。古本屋の細君は彼に劣らぬ被虐色情者だったのです。”

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