■放送:1992年1月24日、フジテレビ
■出演:郷ひろみ、森光子、いかりや長介、松雪泰子、佳那晃子、他
このドラマの演出をしているのは久世光彦。久世は江戸川乱歩を主人公とした小説を書いています。(「一九三四冬-乱歩」)ですから乱歩の持っているあの独特な粘り気のある世界を演出するのはお手のものなのかも知れません。なかなかよくできていた作品で面白く見ることができました。団子坂で起こった殺人、この事件で探偵としてデビューすることになる明智小五郎を郷ひろみを演じているのですが、意外と合っているというか、似合っていました。まだ帝大で犯罪心理学を研究しているという設定がよかったのかもしれません。天才的な探偵として活躍する以前の初々しい明智小五郎が新鮮でした。
久世光彦は乱歩の短編小説をドラマ化するにあたり、屋根裏の散歩者であるとかいくつかの乱歩的な要素を巧みに取り入れながら物語を構成しています。ただ、乱歩の「D坂の殺人事件」自体の明智の推理は採用しておらず話を簡潔にしています。そして、細部の装置や道具などもこだわり一つ一つの場面を非常に見所のあるものに仕立てあげています。そのこだわりは時にリアルではなくシュールなものでそれを伝えようとしており、たとえば家の襖には弥生美術館で展示されているようなレトロな美人画の絵が大きく描かれていたりします。これは庶民の生活する民家では、まずない場景といえるのですが不思議と違和感がありません。それは乱歩的な世界がどこか現実としては表出されない闇の幻想世界の、あるいは押絵の世界のように封印された世界を覗見する世界の話だからかも知れません。だからこそ乱歩の小説の映像化は、世界観なるものの重要度が高いでしょうし、久世はそこをきっちり押さえていたということになるのでしょう。
ところで明智小五郎演じる郷ひろみは、ドラマの中の台詞で犯罪は物欲と性欲の悪魔によるもので、その悪魔はどんな人間の心にも住んでいるといったようなことを言っていました。この物欲と性欲こそは人間の煩悩そのもの。それがなければオイラもこんなに苦労しないのに…。でもそれが社会の、経済の大きな牽引力になっているのは間違いない。経済指数で様々なデータが発表されるけれど、オブラートに包むのでなく、物欲指数とか性欲指数などとか作ればもっと経済の読みがあたるんじゃないのだろうか?なんて発想を大いに飛躍させてしまいました。それもドラマを好きなビールを飲みながら見たことによる心地よい酔いのせいかもしれません。
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※真田が主演した映画、郷ではありません(注)
■出演:郷ひろみ、森光子、いかりや長介、松雪泰子、佳那晃子、他
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久世光彦は乱歩の短編小説をドラマ化するにあたり、屋根裏の散歩者であるとかいくつかの乱歩的な要素を巧みに取り入れながら物語を構成しています。ただ、乱歩の「D坂の殺人事件」自体の明智の推理は採用しておらず話を簡潔にしています。そして、細部の装置や道具などもこだわり一つ一つの場面を非常に見所のあるものに仕立てあげています。そのこだわりは時にリアルではなくシュールなものでそれを伝えようとしており、たとえば家の襖には弥生美術館で展示されているようなレトロな美人画の絵が大きく描かれていたりします。これは庶民の生活する民家では、まずない場景といえるのですが不思議と違和感がありません。それは乱歩的な世界がどこか現実としては表出されない闇の幻想世界の、あるいは押絵の世界のように封印された世界を覗見する世界の話だからかも知れません。だからこそ乱歩の小説の映像化は、世界観なるものの重要度が高いでしょうし、久世はそこをきっちり押さえていたということになるのでしょう。
ところで明智小五郎演じる郷ひろみは、ドラマの中の台詞で犯罪は物欲と性欲の悪魔によるもので、その悪魔はどんな人間の心にも住んでいるといったようなことを言っていました。この物欲と性欲こそは人間の煩悩そのもの。それがなければオイラもこんなに苦労しないのに…。でもそれが社会の、経済の大きな牽引力になっているのは間違いない。経済指数で様々なデータが発表されるけれど、オブラートに包むのでなく、物欲指数とか性欲指数などとか作ればもっと経済の読みがあたるんじゃないのだろうか?なんて発想を大いに飛躍させてしまいました。それもドラマを好きなビールを飲みながら見たことによる心地よい酔いのせいかもしれません。
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