怪異の世界＃４０・・・曲亭馬琴「新累解脱物語」

2008-10-21 | ワンダーゾーンの世界

先週の土曜日には“累伝説”から鶴屋南北が題材に取った歌舞伎「解脱衣楓累（げだつのきぬもみじがさね）」を前進座で観た。そして本日は同じ江戸時代に活躍した「椿説弓張月」や「南総里見八犬伝」といった読本を書いた、学校では滝沢馬琴と習った曲亭馬琴。（読み方を変えると「くるわでまこと」（廓で誠）、すなわち遊廓でまじめに遊女に尽くしてしまう野暮な男という意味であるそうだ。／Wikipediaからの受売りです）この馬琴さんも「怪談累ケ淵」で知られる羽生村の“累伝説”をテーマに書いていらっしゃる。しかしとくに馬琴を読んだわけではない。その挿絵を描いた葛飾北斎の画集を購入（「北斎妖怪百景」国書刊行会）、その画集に北斎の絵とともに、多田克巳の解説によるその話が掲載されている。今回はそれをまとめてみたのです。

・下総羽生村に住む珠鶏（すけ）に婿入りした与左衛門は、連れ子の累と暮らしていた。

・与左衛門は美貌の娘・玉芝に心を奪われ、妻の珠鶏（すけ）を虐待。珠鶏は家出し絹川あたりで行方不明となる。

・玉芝は医者の西入権之丞と通じて羽生村を出るが、武蔵野で賊に襲われ離ればなれに。

・顔が醜いと悩む玉糸姫と権之丞と結婚、その玉糸姫の侍女となっていた玉芝は権之丞は再会する。

・与左衛門は、想いを寄せる玉芝に騙され玉糸姫を隅田川に突き落として殺害する。

・与左衛門の娘の累が怪我がもとで、田糸姫のように醜くなってしまう。絹川を親子で渡るとき、累は珠鶏と田糸姫の霊に憑きかれてしまう。

・権之丞は姫の死を理由に玉芝を側室に迎え、息子金五郎をもうける。

・権之丞は隅田川で船を出していたところ玉糸姫の幻をみて刀を抜くが、愛妻の玉芝の首をはねてしまう。

・権之丞は行方不明に、息子の金五郎は田糸姫の兄・正胤に遣えることになる。美少年の金五郎は正胤の寵愛を受ける。

・その金五郎は、名を与右衛門と改名する。その与右衛門は正胤との男色関係に嫉妬した苧績の策略にかかり、羽生村の累と結婚させられた。

・正胤は夢の中で、苧績（おうみ）に言いくるめられ間者として利用され成敗された山梨印幡の霊から、側室の苧績のわるだくみや権之丞の悪行を知る。

・苧績への復讐を思い立つ与右衛門だが、踊衣装を着た妻の累を見誤ってしまい、鎌でもって絹川の岸辺で斬り殺してしまう。

・苧績を殺そうと思った与右衛門だが、彼女の美貌に迷い、いつしか夫婦となってしまい娘のさくをもうける。

・しかし、さくは累や珠鶏や田糸姫、山梨印幡といった怨霊の祟りで、さくも恐ろしい幻をみるようになる。

・さくは膝に人面瘡ができ、村人たちは百万遍の供養を催すが効果はない。法会の最後の日の結願の夜、怨霊たちはますますたけり狂い苧績は悶死する。

・与右衛門が苧績の初七日の帰り、辺り一面が針の山、血の池、火の車など地獄の様子に変わった。

・与右衛門はそこへ現れた老いた僧に救いを求める。僧は因果応報の理を説き、烏有和尚を頼るように言う。

・気がつくと地獄も僧も消え、村人が珠鶏の菩提のために建てた地蔵の面影が先の僧に似ていたのであった。

◆「累伝説」に纏わる過去記事◆
怪異の世界＃３９・・・前進座公演「解脱衣楓累（げだつのきぬもみじがさね）」
怪異の世界＃３８・・・桂歌丸「真景累ヶ淵」（ＣＤ）
怪異の世界＃３７・・・「死霊解脱物語聞書」
怪異の世界＃３０・・・新秋九月大歌舞伎「色彩間苅豆　かさね」（新橋演舞場）
怪異の世界＃２６・・・三遊亭円楽「真景累ケ淵から“豊志賀の死”」（１９７９年）ＮＨＫ・ＢＳ－２放送
怪異の世界＃１９・・・祐天寺・かさね塚
怪異の世界＃１８・・・法蔵寺・累の墓所
怪異の世界＃１７・・・田邊剛「累（かさね）」巻之壱＆弐
怪異の世界＃１６・・・三遊亭円朝「真景累ケ淵」（岩波文庫）
怪異の世界＃１５・・・映画「怪談累が淵」（監督：安田公義）
怪異の世界＃１４・・・＜怪奇十三夜＞「怪談累ヶ淵」（１９７１年日本テレビ）
怪異の世界＃１３・・・映画「怪談累が淵」（監督：中川信夫）
怪異の世界＃１２・・・一龍斎貞水・江戸怪奇夜話し「真景累ヶ淵より豊志賀の死」
怪異の世界＃１１・・・映画「怪談」（監督：中田秀夫）
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