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飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

怪異の世界#38・・・桂歌丸「真景累ヶ淵」(CD)

2008-09-26 | ワンダーゾーンの世界
話芸を楽しむ。個人的には歌丸の噺はビールに合うのだ。(以前書いた通り)だから日々1話づつビールをいただきながら、5日間に渡ってCDに収録された長い「真景累ケ淵」を聞き終えたのです。

歌丸は、三遊亭円朝の落語は一本の道から始まり、それが複数に別れて話が複雑になっていくが、最後はまた一本の道になって終わると、そこで話している。確かに注意して聞かないと人間関係が複雑になっているので、こんがらがってくる怖れがある。やっぱり最後に一本の道に終結するんだったら、その大団円の醍醐味も味わいたいし。その意味ではビールを一杯とは言いながらも、あまりリラックスしすぎるのもよくはないのですが…。

さて、本題の落語の方でありすが、まず深見新左衛門の宗悦殺しは簡単にすませ、その長男である深見新五郎をクローズアップ、彼がお園に惚れて言い寄る部分で「何にもしないから添い寝させてくれ」と迫るのは、こちらも10代の時そんなことを言った記憶があり思わず苦笑。(その時は緊張のあまり一睡もできなかった甘く苦い青春の思い出?)同じような思いをした新五郎は、押さえきれない欲望を再びお園にぶつけ押し倒す。そこにあったすきでお園の背中がざっくり切れてしまい死んでしまう。ああなんということ。ちなみに、お園は宗悦の次女で、この怪談が映像化される時は、決まってメインとなる豊志賀の妹なのである。

しかし歌丸は、このCDに収録されている横浜にぎわい座おける「真景累ケ淵」を全編口演した時は、一番よく知られている豊志賀の部分を簡略化し話ている。ようするに長い物語なので最後まで到達するにはよく知られた馴染みのある部分については致したがない選択なのかもしれません。

新吉は、お久、お累と関係を持つがそれがまたいわくつきで、2人も新左衛門に殺された宗悦の死体を運んだ三右衛門と血縁関係がある。お久は豊志賀の亡霊と間違えられて草刈り鎌で惨殺。お累は顔に火傷を負い豊志賀のような容貌に。新吉の周辺がただごとではなくなる。そして、彼の育ての親である勘蔵が危篤で江戸に帰るが、そこに居る婆さんの話し方が秀逸で、歌丸の芸に唸らされる。ここで勘蔵から実の父親は…と聞かされるのだが、その忠君ぶりには驚かされる。主人と家来の関係の深さ、それは末端まで染み入った日本の文化なのだろうか。家来は、どういう状況におかれてもその忠君ぶりは抜けていないのだ。現代となってみれば、こういった話はほとんだ聞かないし、それを求めるのも無理だろう。ボクもそこまでの忠誠を誓うことはできない。第2話の終わりの夢の中で、新吉と新五郎の兄弟が出会う。お累が産んだ新吉の赤ん坊が新五郎にそっくりという悪縁がそこにみられる。


だんだんと荒んでくる新吉は、名主・惣右衛門の妾、お賤(しず)とできてしまう。それを知った妻のお累は寝込んでしまう。新吉の我が儘放題で、累は見るも無惨な痩せこけた姿となる。兄の三蔵と奉公人の与助は、それに対して。怒りをおぼえる。この段になると、怪談というより悲劇である。酷い話が続く。歌丸が素晴らしい口演をすればするほど、聞く方は悲しくなる。悲しいなか与助が道化的なやさしさを振るまい、その味付けがいい。お累は午前2時、ついに果て、幽霊となって新吉とお賤が逢い引きしている場へ訪問する。お累は、新吉がお久を殺した因縁の草刈り鎌で自害したのであった。あまりにも暗すぎる3話、それは酷い話なんだけれども、歌丸の聞かせどころと感じたのであります。

第4話、話はいよいよ佳境に差し掛かります。名主の惣右衛門が病に、妾のお賤は、金銭欲しさに新吉とともに殺害を試みる。実は遺言状を書き換えてあったのだ。しかし、悪仲間の甚蔵が湯灌(ゆかん=死体を洗うことのようです)で他殺を見抜く。で、甚蔵はゆすり、たかりのパターンとなるわけで。そこで計るは甚蔵殺しの悪巧み。しかし、甚蔵力強くて崖から突き落とされるも蘇生して、新吉&お賤の元へ復讐に。ピンチの新吉、「この野郎、許さねえ!」と襲いかかる甚蔵。その胸板へ撃ち込まれた鉄砲の玉。ドサッと倒れる甚蔵。はたして誰が?それは次回のお楽しみと噺を終わらせる歌丸の計算。ラストの口演へ盛り上がりを繋ぐ心憎さ。

そして、最後の回「お熊の懺悔」となる。この部分、歴代の落語家は誰もチャレンジしておらず円朝以後、百何十年ぶりの復活という。ところで歌丸は、毎回喉の調子が悪くって…という話を前段でしており、大丈夫なのかなと収録されたものにかかわらず、少しばかりそれが気になってしまうのでありますが。

前回の話でもったいつけた甚蔵を射った犯人はお賤であった。それにより彼女と新吉の2人は村を後にするしかなくなったのである。金策苦しい2人は三蔵や与助といった知り合いを殺害し懐から金を奪って、古寺に転がり込むのであるますが、そこで出会ったのが尼のお熊。これが因果応報の報いの為せる業の深さというものなのかと胸が詰まる結末となります。それは歌丸のCDを聞いていただくか、円朝の本を読んでいただくのがよいかと思うのですが…。

以前も書いたかも知れませんが円朝の「累ケ淵」、映画化されたりする部分である顔が醜く変形する豊志賀のエピソードは、ほんの一部分であります。原作は新吉を軸に壮大な因果応報の話なのであります。新吉は親の因果の報いを受け、本人は意識したのか無意識なのか、とまどいながらも最後は極悪非道の道へ転がり込んで性根まで殺人者となってしまいます。それは怪談というより、悪いことはよくないという教訓的な話ともとれます。自制を促す道徳的効果といいますか、そんなこともねらっていたのでしょうか。歌丸がうまくまとめたことと話芸の匠もあって、ビールもすすんだ5日間でありました。

◆「累ケ淵」に纏わる過去記事◆
怪異の世界#37・・・「死霊解脱物語聞書」
怪異の世界#30・・・新秋九月大歌舞伎「色彩間苅豆 かさね」(新橋演舞場)
怪異の世界#26・・・三遊亭円楽「真景累ケ淵から“豊志賀の死”」(1979年)NHK・BS-2放送
怪異の世界#19・・・祐天寺・かさね塚
怪異の世界#18・・・法蔵寺・累の墓所
怪異の世界#17・・・田邊剛「累(かさね)」巻之壱&弐
怪異の世界#16・・・三遊亭円朝「真景累ケ淵」(岩波文庫)
怪異の世界#15・・・映画「怪談累が淵」(監督:安田公義)
怪異の世界#14・・・<怪奇十三夜>「怪談累ヶ淵 」(1971年日本テレビ)
怪異の世界#13・・・映画「怪談累が淵」(監督:中川信夫)
怪異の世界#12・・・一龍斎貞水・江戸怪奇夜話し「真景 累ヶ淵より 豊志賀の死」
怪異の世界#11・・・映画「怪談」(監督:中田秀夫)
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