令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

歴史編(30)ささなみの

2009年07月08日 | 歴史編
【掲載日:平成21年7月23日】

ささなみの 志賀の辛崎からさき さきくあれど
           大宮びとの 船待ちかねつ

ささなみの 志賀の大わだ よどむとも
           昔の人に またもはめやも

【唐崎 淀む大わだ】       


大津宮陥落ののち 十数年が過ぎ 
持統天皇の御代みよ
父 天智天皇の供養にと 近江への行幸みゆき

近江の湖畔 
たたずむ 柿本人麻呂 
口をついて 言葉がほとばしる 

玉襷たまだすき 畝火うねびの山の 橿原かしはらの 日知ひじり御代みよゆ れましし 神のことごと 
つがの木の いやつぎつぎに あめの下 らしめししを
 
《畝傍の山の 橿原の 神武じんむ御代みよを 始めとし
 引き継ぎきたる 大君おおきみの 治め給いし 都やに》
そらにみつ 大和やまとをおきて あをによし 奈良山ならやまを越え 
いかさまに おもほしめせか
 
《何をおもたか 大和捨て 奈良山越えて はるばると》
天離あまざかる ひなにはあれど 石走いはばしる 淡海あふみの国の 
楽浪さざなみの 大津の宮に あめした らしめしけむ
 
《近江の国の 大津宮おおつみや 都移しを したんやろ》
天皇すめろぎの 神のみことの 大宮は ここと聞けども 大殿は ここと言えども 
春草の しげひたる かすみ立ち 春日はるひれる ももしきの 大宮処おおみやどころ 見れば悲しも

《それや言うのに その都 目当ての場所は 草繁り 大宮大殿 見当たらん
 どこ行ったか 雲かすみ 悲しさ募る 大宮処》
                         ―柿本人麻呂―(巻一・二九)

人麻呂の 故宮ふるみやへの 追慕ついぼまず
ささなみの 志賀の辛崎からさき さきくあれど 大宮びとの 船待ちかねつ
《唐崎は そのまんまやが 待ってても 古都人ふるみやひとも 船も来えへん》
                         ―柿本人麻呂―(巻一・三〇)

ささなみの 志賀の大わだ よどむとも 昔の人に またもはめやも
せんいな 淀水よどみずみたいに とどまって 昔の人に おうおもても》
                         ―柿本人麻呂―(巻一・三一)

高市黒人たかちのくろひと かける言葉もない
思いは同じ 歌で
いにしへの 人にわれあるや ささなみの ふるみやこを 見れば悲しき
《この古い 都見てたら 泣けてくる 古い時代の 人やないのに》 
                         ―高市黒人たけちのくろひと―(巻一・三二)

日が落ち 寂しさ募る湖辺うみべ
鳴く千鳥が 人麻呂の胸を 締め付ける 
淡海あふみうみ 夕浪ゆうなみ千鳥ちどり けば こころもしのに いにしへおもほゆ
《おい千鳥 そんなに啼きな 啼くたんび 古都みやこ思うて たまらんよって》
                         ―柿本人麻呂―(巻三・二六六)

湖畔に落とす影ふたつ 比良おろしが寒い 



<唐崎>へ



<淡海の海>へ


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