みみずく医者の備忘録

名古屋市名東区の内科開業医です。日々の出来事や診察室でのエピソードなどを織り交ぜて綴ります。個人的なメモ代わりです。

RSウイルス

2012-11-12 06:40:36 | 感染症
乳幼児、発熱やせき続いたら…RSウイルスかも 重症化の前に受診を

乳幼児に多い「RSウイルス感染症」の患者が急激に増え、過去最多になっている。
毎年冬に流行がみられるが、今年は夏場から患者数が増え始め、秋に急増した。風邪に似た症状で、多くは軽くすむが、生後6カ月未満の乳児などは重症化しやすく、重い肺炎や気管支炎を起こすこともある。


■国立感染症研究所は全国約3000の小児科からのRSウイルス感染症の患者数を集計している。
10月1~7日の1週間に報告された患者は5007人に上った。この数字は2003年の調査開始以来で最多となった。

夏から増加中
■今年は8月から患者数が急増し、9月は昨冬のピークを上回った。
10月中旬以降、報告数はやや減ったが依然として高い水準だ。
冬に向かってさらに増える恐れもある。

■原因となるRSウイルスはとても感染力が強く、2歳までにほぼすべての子供がRSウイルス感染症にかかる。
発熱やのどのいたみ、せき、鼻水など、風邪とよく似た症状が出る。
特別な治療法はなく、予防用のワクチンも今のところない。

■大人を含めて誰もが何度もかかるありふれた病気で、小学生以上の場合は軽い症状で1週間ほどで回復することが多い。
ただ、乳幼児では重症化することもある。
特に6カ月未満で感染したら注意が必要だ。
肺の機能が十分発達しておらず、抵抗力も弱いためだ。
肺の奥の細い気管が炎症を起こす細気管支炎や肺炎に至る場合もある。

■乳幼児の肺炎の約半数、気管支炎の5~9割はRSウイルスが原因だとみられている。
感染者の1~2%にあたる2万人程度が毎年入院すると考えられており、子供の感染症の中ではロタウイルスと並んで入院患者が多い。

■鼻汁を使った検査キットが昨年10月から1歳未満の乳児に保険適用になり、診療所などでも診断しやすくなった。

■症状をみながら重症化のサインを見逃さないようにするのが重要だ。
発症直後に発熱し、熱が下がった後にせきなどが続くと要注意となる。
症状が楽になるように湿度を60%以上に保ち、縦抱っこをして可能な限り泣かさないようにするとよい。

■せき込んで水や食べ物を吐き出したり、呼吸が浅くゼーゼーして息を吐きにくくなったりしたら重症化しているサインだ。
熱の有無にかかわらず早めに医療機関を受診すべきだ。
ウイルスにはA型とB型があるが、重症化にはほとんど差がないと考えられる。

■また、妊娠36週までに生まれた早産の子供や心臓に疾患を持っている子供などは、RSウイルスに感染すると重症化しやすい。
流行時には、重症になるのを予防する注射薬「パリビズマブ」が保険で使える。
 
■感染は主にウイルスの付いた手や物などを乳幼児が触れたりなめたりして起こる。
保育園などで年長の子供と遊ぶことや、家庭で兄弟姉妹と過ごす中で感染を防ぐのは難しい。
ただ、乳幼児と接する大人が配慮すれば、感染の機会を減らすことは可能だ。

■流行期はこまめに手洗いをして外からウイルスをできるだけ持ち込まないように注意する。
せきをしている場合はマスクの着用も心がけたい。
生まれる前に母親からもらった抗体も役には立たないので、6カ月未満の乳児を人混みに連れて行くのもできるだけ控えよう。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO48203080Y2A101C1EL1P01/?df=2

出典 日経新聞・夕刊 2012.11.9
版権 日経新聞社





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