ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

経済は感情で動く― はじめての行動経済学 / マッテオ モッテルリーニ

2008年06月29日 | 読書
「経済学」の教科書に書かれていることはただの学問でしかない、と感じている人は少なくないだろう。いったって、モノを買うのにそんな合理的に毎回、毎回判断していられるわけないじゃないか、そう思っているのなら、この「経済は感情で動く」に書かれている事象はその通り!と思うだろう。ちょっと訳し方がいまいちではあるし、まとまって何かが整理できるというわけではないけれど、人が何故、合理的な判断で行動できないのかについて考えさせてくれる一冊。


経済は感情で動く―― はじめての行動経済学

ちょっとボリュームが多いので、目次を記載。

1 頭はこう計算する
 1000円がいつも1000円とは限らない
 選択肢が多いほど混乱する
 プラス面に注意を向けるか、マイナス面に目を光らせるか

2 矛盾した結論を出す
 客の気持ちを惑わす
 三つあると真ん中を選ぶ
 何が迷いを生じさせるか

3 錯覚、罠、呪い
 優先順位がひっくり返る
 非合理は高くつく
 自分のものになると値が上がる
 現状は維持したい
 払ったからには参加しなきゃ損
 競りに勝っても喜べない-「勝者の呪い」
 数値の暗示に引っかかる-「アンカリング効果」

4 「先入観」という魔物
 私たちの頭は当てにならない
 だれもが持つ錯覚
 非合理だからこそ人間なのだ

5 見方によっては得
 問題の提示の仕方が判断を決める
 イメージに左右される
 死亡率より生存率で

6 どうして損ばかりしているのか
 雨の日のタクシーはどうして早々に引き上げるのか
 得している株は売り、損している株は手放さない
 してしまったことを後悔するか、しなかったことを後悔するか

7 お金についての錯覚
 実収入か額面か
 自分の給料より同僚の給料のほうが気になる
 100万円得した喜びより、100万円損したショックのほうがはるかに大きい

8 リスクの感じ方はこんなに違う
 つじつまのあわない答えを出す
 数字を情緒で判断する
 「1%」と「100人に1人」の違い
 中身を多く見せたいとき、カップは小さいほうがいい?

9 リスクとの駆け引き
 相対的リスクと絶対的リスク
 統計に表れた数字が読めない

10 知ってるつもり
 プロになるほど過信する
 自信過剰がはまる罠
 成功すると自分のため、失敗すると他人のせい
 自分に都合のいい面だけを見たがる

11 経験がじゃまをする
 「そうなるはず」という思い込み
 結果よりプロセスに目を向ける

12 投資の心理学
 リスクを加味してリスクを減らす
 近過去から近未来を占う
 なじみの企業に投資したがる悪い癖
 事情に明るいほどうまい投資ができるという錯覚
 売買がはげしいと損をする

13 将来を読む
 読みを誤る
 前と後で判断が異なる

14 人が相手の損得ゲーム
 対立作戦ゲーム
 協同作戦ゲーム
 理論と実際の違い

15 怒れるニューロン
 脳が苦汁を飲むとき
 相手の頭のなかを読む
 復讐は何よりも快楽のため

16 心を読むミラーゲーム
 神経生物学から見たお金のゲーム
 共感の生みの親はミラー・ニューロン
 倫理的判断とニューロンの役割

17 理性より感情がものを言う
 理性には限界がある
 感情は不可欠のパートナー
 セミとアリとハトの教訓

18 人間的な、あまりに人間的なわれわれの脳
 のさばるのは感情
 神経経済学から見た日ごろの常識
 ニューロンが生むプラシーボ効果とフレーミング効果

おしまいに ――怠け者の経済学
 感情のシステムと理性のシステム
 エラーを解剖してみれば
 自分の限界を知る


目次のタイトルを見ているだけでもかなり興味を引かれるだろう。

この著でも紹介されている「ヒューリスティック」という言葉を始めてしったのは、村山涼一さんのマーケティング講座を覗いた際。その当時は「人の判断や選択は必ずしも合理的判断に基づいるわけではなく、直感によって行われている」くらいの意味合いで理解していたのだけれど、ここではそうしたヒューリステックによるバイアス(典型的なパターンを当てはめてしまう「代表制」や思い浮かべやすい「偏りのある事象」をもとに評価を行う「利用可能性」など)や、「選好の逆転」、「保有効果」、「コンコルドの誤謬」「アンカリング効果」「フレーミング効果」など、人が合理的な判断ができない事象が紹介されている。

人間のあらゆる行為が明確な目的もち、その効果で合理的に判断できるのであれば、毎日の昼食に悩んだり(せっかくパスタ屋に行ったのに、ランチメニューのハンバーグ定食を食べてしまう!(選好の逆転))こともないし、「100人中5人が亡くなる可能性がある手術」と「生存率95%の手術」だと何となく後者を選んでしまう(フレーミング効果)なんてこともないだろう。

公共事業を見ていると、「コンコルドの誤謬」のように、多くの投資を行ってしまったから、今更計画を見直すこともできないし追加の投資を行うなんて例は数多ある。

結局は、人間が行うことである以上、合理的思考だけで物事を判断できるなんてことはないのだ。そうした事例を知ることで、今後の経済活動の際にチェックして利用しなさい、というのが前半部分だろう。

と、後半部分は神経生物学の立場から、何故、合理的判断ができないかについて解説をしている。

例えば、ふつう、「意識してから行動に移す」と思っているが、実は意識する0.35秒前には脳が働きだしている。「意思」が形づくられる前に身体機能・神経ネットワークが働き出しているのだ。このあたりはアフォーダンスとも通じるのだろう。

とはいえ「理性vs感情」という構図で物事の決定過程を捉えるのは正しくない。よく「冷静に判断し論理的に計算すれば、ありうる選択肢のなかの最良のものにおのずとたどり着く」といわれるが、感情は「私たちを有利な選択に導き、誤った活動から遠ざける働き」を行っている。つまり「冷静な知識だけでは、正しいことをするには足りなくて、感情のような論理をつなぎとめるものが同時になければならない」のだ。

とはいえ、ここに先に述べたような誤った選択をする余地もあるのだ。

個人的には、合理的判断・論理思考というものが必ずしも「正しいわけではない」と思っているし、複雑に絡み合う関係性・相手(ステークホルダー)の選択によってこちらの戦略も変化せざろうえないという「GAME」的な経済活動の中で、全てを論理的に言語によって把握・整理しようという方が間違いなのだろうと思う。

全てが直感や感性によって判断すればいいわけではないが、5感を磨くこと、知識を高めること、そしてそれらの結実としての「直観力」を高めること、これらの要素が「論理的思考」とともにあってこそ、合理的判断も高められるのだろう。

そして何よりも経済活動の主体として我々が関わる以上、その人の「想い」や「情熱」があってこそ、同じ状況下でも違う結果をもたらすのだろう。



優れた生活者は浅知恵にはだまされません!論―ヒューリスティクな判断


経済は感情で動く― はじめての行動経済学


アフォーダンス入門-知性はどこに生まれるか / 佐々木正人



3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
たびたびすみません (pochi)
2008-06-30 15:29:50
ブログ初心者なので失礼なことをしました。2回送信して申し訳ありません。
返信する
はじめまして (pochi)
2008-06-30 01:16:40
その通りですよね、人は感情の生き物だから理論や、知識より感情が先にたちますよね。
返信する
はじめまして (pochi)
2008-06-30 01:11:47
そのとうりですよね、人は感情の生き物だから理論や、知識より感情がさきにたちます。
返信する

コメントを投稿