ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

マイノリティ・リポートの世界を実現する「ビックデータ」社会

2013年11月04日 | 読書
今、ビクター・マイヤー=ショーンベルガー/ケネス・クキエ著「ビッグデータの正体」を読んでいる。前半部を読む限り、この著作は「ビックデータ」社会がこれまでの「スモールデータ」社会をどうように変革するか、その可能性を説いており、それを訪れるものとして肯定している。

ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える


この著作によると、ビックデータ社会では3つの大きな変化があるという。、

1)ビックデータは限りなくすべてのデータを扱う
2)量さえあれば精度は重要ではない
3)因果関係ではなく相関関係が重要である

これまでは物理的な制約(コンピュータのスペックや時間等)のために、サンプリングされたデータを基に様々な解析が行われてきたため、精度への要求と解析のための予測・シナリオといったものが求められた。こうした分析は非定型データを扱うことは難しく、限られた系の中で精度の高い解析を得意としていた。しかしビックデータはそうではない。定型/非定型にかかわらず全ての大量のデータを取り扱うことで、サンプリングされたデータでは見えない変化や(多少の誤差をあったとしても)ものごとの全体像を見出すことが可能となる。

そしてその結果、明確に原因が解析できなくとも、各種データの「相関関係」を追うことで、ものごとの変化を予測できるようになるという。

例えば、amazonのレコメンドされる商品は、僕が欲しいと思っているかどうかを確認してレコメンドしてくるわけではない。街中の書店のように店員さんが好みの本を薦めてくれているわけでもない。僕の購入履歴を見ながら、この本を買っている人はこの本も買っている確率が高いということで薦めてきているだけだ。つまり確率の問題として扱っている。

そこには何故、Aという本を買った人がBという本も買っているのかといった因果関係は関係ない。「Aを買っている人はBも買っている(確率が高い)」という事実だけが必要なのだ。

これは悪いことではない。大量のデータをリアルタイムに解析していくことで、これまでではわからなかった微細な変化から患者の病状の悪化を未然に防げるかもしれないし、飛行機や列車の故障を事前に検知できるかもしれない。

その一方で、仮にありとあらゆる情報をデータ化し、その相関関係から物事の結果を予測できるようになるとしたら、その世界は僕らをどのように扱うのだろう。例えば読書遍歴から危険思想の持主かどうかを判断されたり、交友関係から犯罪者予備軍だと目をつけられたりということがあるのかもしれない。預貯金や借金の返済状況から犯罪に走る可能性が推定され、たまたまナイフやバットを購入しただけで犯罪を行うとみなされるかもしれない。あるゆる行動が記録され、そこから人物像が推定され、確率的に次の行動が予測される。あるいはそう行動するものと断定される。そんな世界が実現するのかもしれない。

スピルバーグとトム・クルーズが組んだ映画「マイノリティ・リポート」では、プリコグと呼ばれる3人の予知能力者たちが殺人予知システムを担っていた。彼らが次の殺人を予知し、それをジョン・アンダートン(トム・クルーズ)ら犯罪予防局のメンバーが犯人と認定された人間を事前に拘束し、結果、ワシントンD.C.の殺人発生率は0%になった。



予言者であるプリコグの存在はSFの世界のままかもしれないが、あるいはビックデータ社会がプリコグの代わりに犯罪の予知を実現するのかもしれない。

この行動パターンを繰り替えしている人が、この状況に置かれたときに犯罪を起こす確率は99.999…%、そのように示されたとき、僕らの社会は個人の基本的人権・個人の自由を尊重することができるだろうか。

もちろんこれはかなりオーバーな話だ。しかしこうした考えの背後にあるのは、amazonのレコメンドに対する信用・信認と変わらないのだ。


ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える


マイノリティ・リポート:「犯罪のない世界」は実現可能か - ビールを飲みながら考えてみた…

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