ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

優れた生活者は浅知恵にはだまされません!論―ヒューリスティクな判断

2004年06月20日 | ビジネス
村山涼一先生からせっかくコメントいただいたので、先日の講義の中で特に気にかかった「ヒューリスティック」について。この「ヒューリスティック」という言葉、僕自身知らなかったのですが、「人の判断や選択は必ずしも合理的判断に基づいるわけではなく、直感によって行われている」というくらいの意味でしょうか。

検索で幾つか調べてみたのですが、いやはや社会心理学かシステム設計の解説で使われており、やさしい解説がない。しかも「合理的判断」をしない、無意識のうちに既知の情報や経験に則って「直感的判断」を行う、ということでありま積極的な意味合いでは用いられていませんでした。というわけで正確な概念を理解していないという前提で話を進めます。

村山先生の講座の中では、どちらかというと肯定的な意味合いで人は無意識的な「直感」で判断をしている。つまりいちいちその商品のベネフイットを洗い出しその効果を定量的に評価しその上でその商品を購入するかどうかを判断するというよりは、その商品が提示する情報や様々なベネフィットを「直感」によって、つまり無意識下で分析し判断している、そのため商品開発では消費者の無意識下にまでさかのぼってどのような「ベネフイット」や「意味」を求めているかを理解し、そうした商品を提供する必要がある、といった文脈で使われていたと思います。

「合理的判断をしない」「(無意識のうちに)経験則に則って判断する」ということをどう評価するかということだと思うのですが、個人的には今の消費者、特に全共闘世代以降は「バランス感覚」が優れており「合理的判断」以上に「適切な判断」をしていると思います。

そういう意味では村山先生のコメント「優れた生活者はマーケターの浅知恵にはだまされませんよ」というのはそのとおりかな、と。

ただものごと「常に」というのはないわけで、この優れた生活者というのも様々な情報と経験を内在した上でバランス感覚ある「直感的判断」を下せるのだと思います。

そのため長く息づく商品はいい「直感的判断」に基づいているし、一過性のブームとなる商品は、例えば背後に時代の気分や要請があったとしてもあまり適切な「直感的判断」ではないのかな、と。

まぁ、それが「ナメ猫」や「冬ソナ」くらいならいいのですが、9.11以降のアメリカの「イラク叩き」なんてどうみてもバランス感覚を欠いている。ようやく「揺り戻し」が働いていますが直情的に戦争を始められても、、という感じでしょうか。

個人的には、今、真に合理的判断を行うためには、言い換えれば「全体最適」となる判断を行うためには「直感的判断力」、個々の合理的判断の積み上げではなく「綜合的判断力」が必要だと思ってます。

それを実践するためには、様々な「情報」と「経験」とそれを「客観的に見る目」とが必要かな、と思います。もちろんそれはマーケティング分野に限らず「ヒューリスティク」な判断を行う上で。

こういうよう話をもっと聞きたいので、村山先生もし見られていたらアシスタントに雇ってください!


村山涼一先生のヒューリスティックマーケティング


2 コメント

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私見 (村山)
2004-08-08 07:27:33
このコメントに気づかず失礼しました。親切な方がご連絡してくれましたので、さらにコメントします。

私が使っているヒューリスティックスは慶応大学の印南先生の定義である「複雑で膨大な情報量を持つ世界に存在する人間がきわめて限られている認知能力で、そういう状況に適応しようとするひとつの方法」の意です。



印南先生によると、人間は合理的に意思決定をしようとする規範的意思決定と直感的に意思決定をしようとする記述的意思決定のふたつに分かれるとしています。



これまでは合理的に意思決定をしようとする場合は前者とされてきましたが、これほど膨大な情報量にあふれた現在では、むしろ後者の意思決定に頼らなければ意思決定のスピードが遅れてしまう。こういう状況が加味されて、後者の意思決定を行う能力が高まってきています。



こうなってくると、大量の情報から答えを見つけ出す勘を鍛えられた生活者は、逆にわずかな情報からも解を見つけ出すことができるようになります。



こうして成熟した生活者と呼ばれるようになった訳です。



とはいえ、記述的意思決定(私はこれをヒューリスティックスと呼んでいます)のみではやはり足りない。直観に頼りつつも、大切な意思決定は規範的意思決定に頼る。このように規範的意思決定と記述的意思決定を両立する意思決定を印南先生は診断的意思決定としています。



これをモデル化したものに精緻化見込みモデルがあります。このモデルは優れもので、合理と直観が両立されることを明らかにしたものです。

http://www5e.biglobe.ne.jp/~muraryo/page143.html

を参照のこと。



私が寄って立つのはこうした考えに基づいた生活者(消費者)観なのです。ゆえにヒットの深層まで理解したうえで、そこから新しい着眼を得た方が効果的であると結論づけている訳です。



詳しくは9月末の新刊で論じようと思います(成熟した生活者と効果的なマーケティング)。よろしかったら読んでやってください。



追伸

私と論議したいとのこと。ウェルカムです。メールでもください。





















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Unknown (ビールを飲みながら考えてみた)
2004-08-10 00:13:59
村山先生コメントありがとうございます。

慶大 印南先生というのは、印南一路さんのことでしょうか?

僕らも多くの場合、経験的に養われた「勘」によって仕事を進めています。こういった勘には、ある程度、最小限の情報で適切な判断を行っている(はず、、)と思われます。こういったことなのでしょうか。



新刊楽しみにしております。



またメールをさせていただきますので、そのときにはよろしくお願いします。
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