ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

IT時代の「思考の整理学」:ポスト「新聞のスクラップ」

2011年02月20日 | 思考法・発想法
後輩がお客さんに関連した新聞のスクラップを手帳に貼り付けていた。いい心掛けだ。
でも、と単純に思う。でも、これだけ毎日お客さんの記事が載っているのに、これから毎日スクラップしていったらどれだけ手帳か分厚くなることやら。

外山滋比古(とやましげひこ)さんの「思考の整理学」の中でも、情報整理の方法として「記事のスクラップ」が紹介されている。これまでにも多くの人か情報整理・知的生産性を向上させるためにこうした方法は説いているのだから、有効な方法なのは間違いがない。

でもあえて言おう。この方法は情報が氾濫している現代にはあっていない。

インターネットが普及する前であれば、自分の関心や興味のある新聞や雑誌の記事を切り抜き、それをスクラップしていけば、それで情報の整理はできたかもしれない。日々報じられては消えていく情報を、自身の必要に応じてアーカイブし、まとめていく。時系列の整理もできるだろうし、その場で思い浮かんだアイデアや感想は余白に書きこんでおける。そうすることで、自身のオリジナルなデータベースができあがる。

しかし時代は変わった。公式/非公式に報じられる情報はネットを通じて氾濫し、それらはすでにアーカイブされている。情報を整理するための「軸」も「テーマ」や「時系列」だけでなく、ネットを使えは「検索」や「タグ」、「リンク」といった方法もあるし、「共有知」「コラボレーション」といったアプローチも可能となる。アイデアはEvernoteやブログ、SNSでメモできるし、マインドマップ作成ソフトを使えば思考の整理も支援してくれる。

個人で閉じた形でDBを構築することだけでなく、世界の中で知識や情報を共有しながら、自分なりの視点を生み出すことこそが求められる。世界の前提条件、在り方が変わったのだろう。

ではどんな整理術が考えられるだろう。

後輩が綴じているのは日経テレコン経由で得られたもの。お客さんの記事があればそれが回覧されてくるのだけれど、実際には回覧以上に記事はあるし、日経テレコンで掲載されていないものも多いだろう。

そこで僕が行っているのか、Googleニュースにお客さま名やキーワードで検索し、その検索結果をRSSフィード化し、ブラウザでチェックするというもの。これだとかなりの新聞紙をカバーできるし、ネット系のニュースや東洋経済や日経ビジネスなどの雑誌で配信されている記事もチェックできる。

ちなみにそのやり方は以下のとおり。

http://news.google.com/news?hl=ja&ned=us&ie=UTF-8&oe=UTF-8&output=rss&q=日ハム

これで最後の「日ハム」の部分を検索したいキーワードをいれるだけ。

またそうは言っても、業界紙や業界のニュースなどを扱っているサイトの中にはGoogleニュースに対応していないものもあるし、RSSに対応していないものもある。それでも更新されるニュースの範囲が決まっているようであれば、その部分を抜き出してRSSフィードにしてくれるサーヒスもある。

・goo RSS作成 http://fm.goo.ne.jp/
・My RSS http://myrss.jp/

など。無料で利用できるサイト数が決まっているので、いくつか併用しながら使えば効果的だ。

より広くブログやtwitterなどでどのように話題になっているかをチェックしたいなら、gooブログ検索やtwitterサーチの検索結果をRSSフィードするというてもある。

・gooブログ検索 http://search.goo.ne.jp/index.jsp?svtab=blog_tab
・twitterサーチ http://search.twitter.com/

いずれにしろ、サイト上の氾濫している情報を効率的に収集するためには「RSS」が強力な武器となる。

で、収集した情報をどのように整理・管理するかということだけれど、ここで便利なのかソーシャルBookmarkサービス(SBM)だ。多くのニュースサイトはその記事をアーカイブ化し残している。それを前提とするならば、「はてなブックマーク」を利用して、気になった記事にブックマークに残しておけば、それだけでオリジナルのDBを作ることができる。はてブのツールバーなどを利用すればボタン1つで登録完了だ。

このSBMの凄いところは「タグ」や「コメント」を残せることだ。コメントは言葉どおりだけれど、何よりも「タグ」という存在は情報管理のあり方を変えた画期的な概念だ。

例えば「新聞記事をスクラップ」をする場合を考えてみればわかるように、こうした整理術には整理をするための「軸」や「階層化」が必要となる。何でもかんでも気になった記事を切り抜いて1つのノートに貼り付けるというのはあまり効率的ではない。

「テーマ」毎に分けたり(ex.お客さま)、時系列でまとめたり、さらに細かく分類したりといった具合だ。そうしなければ後から見返すにしてもどこからどう見直せばいいかわからなくなる。しかしこうした階層化による整理は手間がかかるし、何よりもそんなにきれいに分類できない場合も多い。どの程度の範囲てまとめるか、言い換えれは「手間」と「使いやすさ」のバランスが必要となる。

この「タグ」という仕掛けは、階層化しなくとも分類を可能とする。複数の軸を切り替え可能とする。1つの記事に「巨人」「試合結果」「新人」というタグを設定しておけば、巨人軍の記事を見たいときは「巨人」でソートすればいいし、斉藤祐樹や澤村ら新人選手の記事を見たいときには「新人」のタグを、試合結果だけを見直したければ「試合結果」のタグてソートすればいい。ここでは階層化による分類を超えた整理が可能となる。

タグの優れているのはそれだけではない。利用者がそれぞれ勝手にこの「キーワード」を設定できるのだ。

もちろん検索することだってできるので、新聞記事のスクラップに比べるとSBMを使ったDB化は運用上の自由度が非常に高い。とりあえず気になったものはブックマークしておけばいいのだ。

またSBMでは他者とブックマークした内容を共有することができる。もちろんビジネスマンにとっては他者に見られたくないこともあるし、自分のブックマークは自分しか見れなくさせるということも可能だ。面白いのは、特定のメンバーだけで内容を共有できるといった機能もあることだ。これをうまく活用すれば、チームやPJのメンバーで情報共有が可能となる。自分が見つけた情報だけでなく、仲間が見つけた情報を共有することで、チームの生産性や意識合わせはぐっと進むだろう。

ネットやIT技術を活用することが企業の生産性を高めるためには必須の条件だ。SBMは情報共有ツールとして大きな武器になりうるものだ。しかし残念ながら大手企業ではこの価値を理解している人は意外と少ないかもしれない。

社会の在り方が変わってもそこで生きる人々の意識は追いついていない。エスタブリッシュな、大手企業になればなるほど旧来からの在り方から抜け出せず、セキュリティのためと称して利用を制限しようとする。情報インフラの整備も進まず、企業文化も保守的だとこうした新しいツールはなかなか普及しない。

ま、しばらくは個人で活用していくしかないのだろう。

思考の整理学 / 外山滋比古(とやましげひこ) - ビールを飲みながら考えてみた…



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