ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

KPI管理手法を阻む日本の企業文化

2013年11月02日 | 思考法・発想法
僕の会社ではSalesforceを利用して、営業の折衝状況や案件の受注管理を行っている。当然、その意図としてはSalesforceを利用して、経営陣が営業状況をリアルタイムの把握し、必要な「打ち手」、対策を練ることができるようにだ。ま、真っ当な話。

営業部門では収益を達成していくためのKPI(key performance indicator)として、Salesforce(以下、SF)上の折衝記録の件数を設定している。つまり売上目標(KGI)を達成するためには、案件数≒折衝数を伸ばすことが必要だというシナリオを描いていると言っていい。

営業1人あたりの折衝数(SFの折衝記録ベース)を仮に15件/月としたときに、

・営業(担当者):15件/月
・10人のチーム(課):150件/月
・30人のグループ(部):450件/月

がKPIとして設定される。

そして月末になると、総括部門から各グループ長(ex.部長)にその進捗率が報告され、仮に月末までに達成できないとなると、会議でその叱責を受けることになる。

さて、ここで問題は果たしてこの「シナリオ」が正しいのかということだ。

KPIを達成することは必要なことだ。そのため月末が近づくとグループ長(部長)やチームリーダー(課長)は当然、全員に折衝記録を登録するように促す。しかし営業部門の実態からいくと、その大部分が登録された折衝記録以上の折衝を行っている。むしろその案件数、折衝数が多すぎてSFに登録できていない。登録する余裕がないのだ。

それは皆わかっていて、登録した内容を見てチーム内、グループ内で何かを行うわけでもない。報告は口頭、必要であれば、別に議事録や報告資料を作成するという具合。中にはSFの登録内容を見てミーティングを行うチームもあるが、やはりそれは比較的ITの感性が高いリーダーがいる場合だ。

また僕らのような法人営業部門では、案件規模もピンキリ。数千円の話もあれば、数千万~数億といった案件もある。

収益というゴール(KGI)を達成するために折衝数というKGIを設けるのもわかるのだが、数千円の案件の折衝数と数億の案件の折衝数を押並べて等しくカウントすることは適切なのだろうか。

以前、「KPIは何を管理し、何故うまくいかないかということ」にも書いたけれど、KPIを活用していくためには継続的にその「シナリオ」とそれに紐づく「KPI」の見直しは必要だ。だが多くの日本企業、特にエスタブリッシュメントな企業ほど、実際にはKGIへの寄与が少ないにも関わらず、一度設定されたKPIに固執し、KPIの達成こそが目的化してしまっているのではないだろうか。

もちろんSFを活用するという観点から考えれば、むしろ必要なのはSFを活用しない「社内文化」の方だ。

SF導入の意図は経営陣がリアルタイムに営業の状況を把握することにある。その観点からすれば、すべての案件状況や折衝状況はSFに登録されるべきだし、社内でのコミュニケーションもSFをベースに行うべきものだ。口頭での報告をなくせばいいとは思わないが、別に議事録を作成したりミーティングのために他の資料を用意したりするのは全くのナンセンスな話だ。

それだけではない。組織で働く者としては、上司に対してはできるだけいい報告しかしたくないという気持ちはリアルタイムに状況を把握したいと考える経営陣へのフィルタとして働く場合があるし、確度の低い大規模案件を報告し変に期待されたり(ノルマが増える!)、あれやこれや言われたりするのもかなわないとい気持ちもわかる。

結果、各人・各階層でフィルタがかかることになる。

KPIを使った管理手法にしろ、SFのような管理手法にしろ、適切なタイミングで適切な情報が流通することが前提だ。結局のところ、管理手法を活かすもの殺すも社内の意識改革、社内文化の変革をどれだけ進められるかなのだう。

そういった観点を忘れて、KPIの数値を追いかけてもあまり意味はなさないのだ。

KPIは何を管理し、何故うまくいかないかということ - ビールを飲みながら考えてみた…

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