ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

OCN vs NGN:IPv6マルチプレフィックス問題のたどり着いた先

2009年08月27日 | ネットワーク
NGNがゆれている。いや、NTTが混迷していると言ったほうがいいのか。IPv4アドレスの枯渇とNGNとのIPv6マルチプレファックス問題を解決するために、NTT東西では、IPv6アドレスをネイティブ事業者(代表ISP)が払い出す「ネイティブ方式」と、既存のフレッツ網と同様にNGNとISPそれぞれからユーザーにIPアドレスを払いだす「トンネル方式」を用意した。

本来であれば、ユーザーに払いだされるIPアドレスは一意であることの方が望ましい。それがISPからの反対があって先の2方式が並存することとなったわけだけれど、この根本にあるのはISP自身の生き残りのため。当初ネイティブ案(NTTがIPアドレスを払い出す)ではISP自体の存在意義が失われるからだ。結局、妥協の産物として今回のネイティブ案が出来上がったわけだけれど、NGNの仕様上、3社のネイティブ事業者(代表ISP)がIPアドレスを払い出すという形になる。

そこで今回、ネイティブ事業者としてどこが選ばれるかが注目を集めていたわけだけれど、何と驚くべきことに、NTT系のISPであるOCNとぷららがネイティブ事業者に申し込んでいないとのこと。

ネイティブ接続事業者に4社以上が申し込み,NTT東西による選定へ - ニュース:ITpro

NTTコムとNTTぷららはネイティブ接続事業者へ申し込まず - ニュース:ITpro

ソフトバンク・グループがネイティブ接続事業者に立候補 - ニュース:ITpro


OCNといえば、NTTコミュニケーションズが提供する日本最大級のISP(700万人)であり、かつフレッツ光ユーザーに限れば間違いなくNo1の会員数を誇る。ぷららはそのNTTコミュニケーションズグループであり、280万の会員数(うち光ユーザーは140万以上)をほこる。今回のネイティブ事業者の選定基準はNGNへの接続会員数ということで、本来であればOCN陣営は当確といっていい。その最大規模の陣営がトンネル方式を選択するのだから、これはNGNのありかたそのものにも影響を及ぼすだろう。

何故、OCN陣営はトンネル方式を選んだのか。

NTTとしては当然、一枚岩となってNGNの推進を行いたいはず。しかしこれがそう単純ではない。

もともとNTT東西とNTTコミュニケーションズは「日本電信電話株式会社」として一社体制であった。しかしそこは同じ血を引くもの同士だらこその「憎」がある。その当時、金を生むのは長距離部門であり有料顧客とともに「おいしいところ」を集めたのがNTTコミュニケーションズであった。OCNの立ち上げには地域部門(現・NTT東西)も一体となって顧客の獲得を行ったにもかかわらず、気が付けばOCNはNTT東西と競合となる「アッカ」に出資をしたり、NTT東西の顧客を奪うことになる「プラチナ・ライン」を提供するなど、必ずしも関係は良好ではない。

またNTT法により事業者公平性を担保させられているNTT東西からすると、OCNにしろデータ通信などのネットワークサービスにしろ、アクセスラインを提供するという観点からは他のISPやキャリアとなんら変わりない存在であり、特に「NTTコミュニケーションズ」と一緒にやらなければならないという理由はない。

近くて遠い――。NTT東西とNTTコミュニケーションズは互いにそんな存在であり、「NTT」だからといって一体的な動きがとれていないのだ。

しかもIPv6への移行が本格的となり、またフレッツ網のNGNへの切り替えが進んでいくとなると、ISPとNGNとの境界線が曖昧になる。つまり当初から言われていたように、「インターネット vs NGN」という構図がNTTグループ内で、NTTコミュニケーションズ vs NTT東西、OCN vs NGNという形て現われたといえるだろう。ここにあるのは互いの利害をめぐる対立であって、将来のネットや通信インフラに対するビジョンではない。

まぁ、もっともそのためのリーダシップ、調整役として持株会社である「NTT」が存在しているわけだけれど、結局、ここが十分に機能していないということなのだろう。NGNはたんなる「フレッツ網」のリプレイにしかならないのかもしれない。


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