ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

KPIは何を管理し、何故うまくいかないかということ

2009年05月23日 | 思考法・発想法
今年度よりうちの会社でも「KPI(key performance indicator)」が策定された。「KPI」というのは「重要業績評価指標」のことで、企業目標やビジネス戦略を実現するために設定した具体的な業務プロセスをモニタリングするために設定される指標のこと。「売上」や「収益」といった目標そのものは「KGI(重要目標達成指標)」と呼ばれ、それを達成するために「何を」「どれだけ」達成すればいいか「何を」にあたるもの。

例えば、毎月売上が100万円のコンビニがあるとしよう。このコンビニでは毎月100人のお客さんが月に10回訪れており、1回あたりに1000円の買い物をしているとしよう。

売上:100万円
来店者:100人
来店回数:10回
1回当たりの購入額:1000円

このコンビニの売上を200万円にしようとしたらどうすればいいだろうか。チラシを巻く、のぼりを立てる、品揃えを2倍にする、値上げする、割引券を配る…こういった施策はいくらでもあるだろう。でもいったい何をすればいいのか、その施策がきちんと効果を上げているのかはどのように把握すればいいだろう?。

KPIはそういった施策の効果を把握するための「指標」となる。。

売上200万円を達成するためには顧客数を増やすことが大切だ、毎月200人が訪ればいいと考えるならば、それらの施策が集客にどれだけの効果があるかを基準に考えればいい。

売上目標:100万円→200万円
来店者:100人→200人
来店回数:10回
1回当たりの購入額:1000円

KFS:顧客数の拡大
KPI:来店者数
ターゲット(数値目標):200人(+100人)

KFS(Keyfactor of success)とは「重要成功要因」のこと。つまり目標達成にためにあるいくつかの要因のうち、効果的なもの・影響力の大きいもののこと。仮にここで「顧客数の拡大」が売上増の主要な要因だとするならば、KPIとはそれに基づく指標=「来店者数」ということになる。

仮にKPIの数値目標を「200人(+100人)」とするならば、それを基準に施策を考えればいい。

チラシを配ることで来店者を60人増やせるな、のぼりを立てることで40人増やせるな、値段を上げても来店者は増えないからこの施策は必要ないな、来店者にクーポンを配ったとしても来店回数は増えるかもしれないが来店者数は増えないから必要ないな、といった具合に。

つまりKPIを設定することで、それぞれの施策の要/不要の判断が可能となり、それぞれの施策=アクションプラン(A)の管理が容易になる。

A①「チラシを配る」
 目標(P):+60人
 結果(D):+45人

A②「のぼりを立てる」
 目標(P):+40人
 結果(D):+50人

こうなると次のCheck&Actionもたてやすい。A①については、チラシの配り方を変えてみよう、チラシのデザインを修正しよう、など「改善」項目を絞り込めるし、またしばらくPDCAを回しても改善しないようならば、そもそもチラシ施策の目標値が「適切」じゃなかったといった判断もつく。

KPI導入によって1つ1つの施策の意味や位置づけを整理することが可能となる。

しかしこのKPIを導入・運用していくためには大前提がある。

A)そもそも「シナリオ」が「適切」であること
B)その「シナリオ」が共通認識となっていること
C)KGI/KPI/アクションプラン/PDCAの関係を理解していること

A)の「シナリオが「適切」であること」とは、先の例でいくと「来店者が2倍になれば売上も2倍になる」というところだ。数字の計算であればその通り正しいのだけれど、リアルな世界では必ずしもこうとはかぎらない。

「コンビニ」のように誰もが利用する商品を取り扱っていれば、こうしたストーリーは成り立つかもしれないが、これが「骨董」屋のように「狭いコアなターゲット」を相手とする商売の場合はそうではない。「来店者」よりも「1人当たりの販売額を増やす」ことかもしれないし、ネットオークションへの出品という「販売機会の増加」の方が適切なシナリオになるかもしれない。KFSが異なってくるのだ。

重要なKFSを「見抜く」こと、効果的なアクションプランを「描く」こと、適切なシナリオを「構築すること」が大前提となる。

またその「シナリオ」や「KFS」、「KPI」を皆が理解・納得していることも大切だ。

何のためにこの施策・アクションを行うのか。全員が違う方向を向いていると、どんな「シナリオ」を作ったところでその通りには進まない。何故、このアクションを「行う」のか、あるいは「行わない」のか。

C)の「KGI/KPI/アクションプラン/PDCAの関係を理解していること」とは、どういうことだろうか。

目標(KGI)を実現するための重要成功要因(KFS)を基にKPIが設定される。KPIを達成するためのアクションプラン(施策)がある。つまりアクションプラン(A)が適切に実行されているかを測る指標も「KPI」と同じ項目で管理せねばならない。

KFS:顧客数の拡大
KPI:来店者数
KPIの数値目標:200人(+100人)

A①:チラシを配る
 目標(P):+60人
 結果(D):+45人
 目標との差分:-15

この目標との差分を埋めるために、施策(A①)の運用方法を変える必要が出てくる。200枚チラシを配って45人来たのなら、270枚配れば60人来るはずだとか、デザインを変更すれば200枚でも60人くるだろう、とか。

PDCAを回すにしても、まずこの「共通の指標(PKI)」をもとに会話をしなければならない。しかし現実はどうだろう。「チラシを撒く」ことが目的となり、「200枚撒いた」「300枚撒いた」、「こっちに撒いた」「あっちはまだだ」といった会話になりがちだ。

では、何故、KPIを利用した管理がうまく回らないのだろうか。

まずA)で書いたように、シナリオ(ある意味、戦略マップといってもいい)が適切であったかの検討が弱いことが多い。

わが部門でもそうなのだけれど、抽象概念として考えているうちは実際のシナリオとしては不完全だ。骨董屋さんが近所にチラシを撒いて、来訪者を増やすことにどれだけ意味があるだろうか。自社の顧客層、サービスや商材の特性などリアルな状況を踏まえて、「念入り」に検討せねばならない。いや、むしろこのシナリオ作り段階できちんとKFSを把握できていれば成功するといってもいいかもしれない。

KFSを明確にし、それに基づくKPIを設定すること。メンバー全員がこのことを「理解」できていれば、アクションプラン作りでも横道に逸れることはない。不要なアクションプランは当然削られるだろうし、そのアクションプランの位置づけ・優先順位も明確になるから。

結局、シナリオの検討が不十分だったり、それを皆が理解していないとき、KPIを設定してみても上手く回らないのだ。

それだけではない。

検討を十分に行い共有されたとしても直ぐに成果が上がるとは限らない。当然、ここでPDCAを回していくことになるのだけれど、ここには3つの段階がある。

1)アクションプランの運用・やり方の見直し
2)アクションプランの選定・目標値の見直し
3)シナリオ・KFS・KPIの選定の見直し

PDCAを回していくとき、果たしてこの3段階のどこを見直すべきだろうか。

地図や住所の記載がないチラシを撒いてみたところで、それを見たお客さんはお店にたどりつけないだろう。来店者が少ないからといってそんなチラシの「量」を増やしてみたところで効果は期待できない。ここで求められるのは「チラシに地図を載せること」のはずだ(→「アクションブランの運用の見直し」)。それをいきなり「チラシを撒くことに効果はない」「チラシ施策の限界がきたから次のアクションプランを考えろ」となるのはおかしいだろう(→「アクションブランの選定・目標値の見直し」)。

しかし実際にはこのあたりが曖昧になることが多い。

やり方しだいではもっと効果が期待できるアクションプランが放置され、どんどんアクションプランが追加される。本来ならPKIを設定することで、峻別され、「選択と集中」されるはずなのに、気が付くと数値を報告するだけのアクションばかりが増えていく…

まぁ、うちの部門のKPI・PDCAの報告を見ていると、まぁ、まだまだこなれていないなぁ、と感じますね。全くこんな報告でKPIを設定した意味ないじゃん!みたいな…結局、A)~C)の「前提」が理解されていなければ、何をやっても一緒ということなのでしょう。

改善に結びつくKPIを立てるには--ユーザーシナリオによるKPI策定:マーケティング - CNET Japan




3 コメント

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Unknown (beer)
2009-06-21 17:04:18
まぁ、何というか、部内の報告会で、例外的な要素があったわけでもないのに、「KPIは未達でしたが、売上(KGI)は達成しました!」みたいな報告をされると、「そもそもシナリオの設定、KPIの設定が間違ってんじゃないの?」と突っ込みたくなるわけですよ。はい。
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わかりやすいですね (吉田統一)
2009-12-08 09:26:13
とても分かりやすいですね。私もKFS、KPIを重視していますが、あいまいになることが多いいです。KFS、KPIについて私もブログに書いているので良かったら読んでみてください。らhttp://ameblo.jp/exseli/entry-10335246361.html
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Unknown (奈々氏ですいません)
2010-05-12 18:52:54
KPIで検索してここにたどり着きました。わかりやすかったです。
もっと調べてみます。
ありがとうございました。
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