ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

「顔 FACE」/横山秀夫

2005年07月03日 | 読書
相変わらずの横山秀夫ワールドで、思わず一気に読み終えてしまった。舞台はD県警。主人公は短編集「陰の季節」に収められた一編「黒い線」で問題を起こした似顔絵府警・平野瑞穂。男社会の深い暗部を抱え込んだ「警察」という組織の中で若鮎のような平野瑞穂が活躍する傑作短編集。



エピローグやプロローグを除くと、5編の短編が収められたこの作品。その中には男と女の心の機微や、女同士の嫉妬などをモチーフにしたものもあるが、うん、まぁ、この辺りは若干、男の視点から抜けきれていないようなところもあるけれど、例えば「香水」が問題解決のキーになるなんてのはやはり女性が主人公ならではなのだろう。

やはりこの作品で一番面白いのが、男社会特有の暗部や警察という「組織」の中で女性たちがどう何と戦っているかといったものが見え隠れする部分だ。例えば、それが女性の社会進出を妨げているんです!と怒られるかもしれないけれど、やはり婦警が拳銃を発砲する姿というのはあまり見たいものではない。それは単に、僕らの側が婦警に期待するものが男と同じ「警官」ではなくて男の「警官」ではできない部分にあるという「役割分担」だったりするのだが、実際に内部にいる女性たちからすると「差別」の温情となるのだろう。

「婦警だから?女だから銃なんか自分には無関係?甘ったれるのもいい加減にしなさいよ」

D県警婦警のリーダー格・七尾が瑞穂を叱る場面だ。男社会の「警察」組織の中で、婦警達が職域を広げるということがどれほど大変なことだったのか、それは普通の警察ドラマでも描かれることはない。それが実は「役割分担論」を隠れ蓑にした男たちの既得権益との戦いであるなど普段は描かれることはない。そうした組織の中で、それぞれが社会正義だけでなく、組織に対して戦いつつ、我々の日常を支えている。そうしたものが見事に描かれている。

海千山千の猛者が跋扈する組織の中で、果たして平野瑞穂はどうなっていくのか。エピローグで退任していく板垣が呟いた言葉は、この作品を読んだ皆が思う言葉だろう。

「若鮎のような婦警、平野瑞穂の前途に幸おおからんことを――。」




「顔 FACE」/横山秀夫


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1 コメント

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Unknown (みんなのプロフィール)
2005-07-04 04:53:46
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