栞子と大輔は、結婚して、二人の間には扉子と言う娘がいる。なお大輔の姓は五浦から栞子の姓である篠川に変わっている。物語は今後扉子を中心に繰り広げられるのだろう。ただ結婚して、子供もいるのに、呼び方は栞子さん、大輔くんのまま。まあ、これも2人らしいと言えばそうなのだが。
今回は、栞子から扉子への移行期の話という性格が強いように思う。なにしろプロローグにおいては、扉子は高校生になっているのだから。帯には「シリーズ再始動」と書かれていたので、だんだん扉子が中心になっていくのかな。そして今回は横溝正史祭りと言っても良いだろう。収録されているのは横溝正史に関する三つの話。
プロローグは、扉子が篠川千恵子から頼まれた2012年と2021年のマイブックを読むところから話が始まっている。そこには、横溝正史の「雪割草」に関係した事件のことが書かれていた。上島家という旧華族の家を舞台とした事件で、一つ目の話と三つ目の話となる。扉子が関わっているのは二つ目の「獄門島」に関係する事件だ。この事件を通じて、扉子は戸山圭と友人になり、プロローグでは同じ高校に通っている。
横溝正史といえば金田一だが、実はミステリー以外の作品も書いている。「雪割草」もミステリーではない。長く、幻の作品と言われていたが2018年に戎光祥出版から出されているので興味のある人は読んでみるといいかもしれない。
このシリーズ、本に関する色々なことを知ることができるので、本好きな人に薦めたい。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。