文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:志乃ちゃんは自分の名前が言えない

2018-10-07 10:26:34 | 書評:その他
志乃ちゃんは自分の名前が言えない
クリエーター情報なし
太田出版

・押見修造

 本作のタイトルを見て、いったいどんな話なのかと思ったが、一言で言えば吃音障害を持つ女の子の物語だ。昔は「どもり」と言っていたが、最近はこれが差別語にあたるというので、あまり使われていないようである。

 吃音障害のなかには特定の音が出にくいというものがある。志乃ちゃんの場合は母音で始まる単語が言いにくいようだ。この場合は言い換えができれば違う言葉で置き換えることもできるが、志乃ちゃんの場合は苗字が大島なので、自分の名前を言うときには母音の発音が避けて通れない。

 実は私も大学時代から会社に入ってくらいの頃には軽い吃音があった。私の場合は言いにくいのが「か行」だった。例えば学食でキツネうどんなんかを頼むときにちょっと困る。しかし大抵のことは、言いやすい言葉で置き換えればいいので、私としては全く気にしてはいなかった。

 別に医者にかかったこともなく、特に何かをしたこともなかったのだが、いつの間にか吃音は消えてしまって現在に至る。志乃ちゃんの場合は結婚して子供ができてもまだ吃音が残っているようだ。しかしその子は親のことを理解して助けてくれる。

 自閉症や発達性障害などのように、外見からは分かり難い障害もあるのだ。周りが正しく理解して支援していくことが大切だろう。最初に友達になった加代というちょっとギャルっぽい娘が、喋れないのなら書けばいいとメモ帳を渡してくれる。

 志乃ちゃんの担任の女性教師。これは完全に失格だ。吃音の原因は明らかでないのにも関わらず、志乃ちゃんが緊張していると決めつける。緊張は吃音の結果であり、原因ではない。こんなことも分からないのだから、吃音について理解しているとは言い難い。こんな教師ばかりではないが、中にはこんな人間がいるのも事実。

 そんな教師にかかったら発達障害の子供などは、単に注意力散漫な子供と見做すのではないだろうか。性同一性障害なんかも完全に理解の外だろう。人に教える立場にある者はもっと発達障害などの勉強をすべきだろう。

☆☆☆☆
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