この話では珍しく平次の投げ銭の技が見られる。もうひとつ、ガラッパチこと八五郎の容姿が出てくるのだ。なんでも大男であまり人相も良くないらしい。一言で言えば結構強面な感じなのだ。私の記憶によれば、テレビドラマでお馴染みの八五郎とは大分感じが違う。
今回事件が起こるのが本町三丁目にある糸物問屋の近江屋である。この近江屋では、主人が亡くなり、母親も死んで、今は主人の弟に当たる番頭の友二郎が支配人として店の一切を取り仕切っていた。主人の直系として、娘のお雛と四つになる弟の富太郎がいるのだが、女中のお染、下男の六兵衛といっしょに、根岸の寮で暮らしていた。ちなみにお雛には、先代の決めた重三という近江屋で手代をやっている許嫁がいる。
この富太郎が夜中にお化けが出るという。それも決まって友二郎が泊まった時に鍵えってである。お雛の御飯に石見銀山の鼠捕りが入っていたこともあるという。その他にも色々と不審なことが起こるという。
とりあえず八五郎が寮に泊まったが、仏壇の位牌の前に鬼女の顔が現れる。魔が悪いことに、富太郎は八五郎を見て、引付を起こして倒れてしまう。そして富太郎が行方不明になり、なぜか死体となって元の床の中にいた。
八五郎は平次にお出ましを願うのだが、平次は事件より朝飯優先のようだ。飯を食わなきゃ、戦ができないとかのんきなことを言っている。
それでも、平次は事件を解決してしまうのだ。平次の名推理と観察眼によるのだろう。
☆☆☆