ぼくの暮しているまちの下には
お父さんとお母さんの育ったまちがある
ある日、お父さんが教えてくれた(p11)
2011年3月11日東北を大きな揺れと、それに続く大津波が襲った。俗に言う東日本大震災である。
東日本大震災というと、原子力発電所の事故があった福島が取り上げられることが多いが、東北の太平洋沿岸はどこも大きな被害を受けた。あれから10年も経っているのに、各地にはまだ爪痕が残っている。本書は、その東日本大震災について書かれたものだが、大きく4つのパートに分かれている。
「二重のまち」「交代地のうた」「歩行録」「”二重になる”ということ」であるが、それぞれ詩、エッセイ、2018年3月28日~2021年2月1日の日々の記録、あとがきのようなものとなっている。「二重の町」とは、復興工事に伴って、土地のかさ上げが進み、それまで住んでいた場所の上に、新しい町ができることのようだ。本書の舞台は岩手県陸前高田市だが、東北全体に対しても同じようなことが成り立つだろう。
著者は東京生まれであるが、仙台在住で、2012年から3年間岩手県陸前高田市で暮らし、対話の場つくりや作品制作をしたあと、2015年には、仙台市で土地との協働を通じた記録活動をする一般社団法人NOOK(のおく)を立ち上げている。
本書を読んで感じたのは、いつどこで突然それまでのいとなみが断ち切られるかわからないということだろう。そして人のレジリエンス能力の偉大さ。あんな大災害があっても全体的に見れば人間は着実に立ち直っていく。
なお、本書は映画化もされているということなので、もし近くで上映されれば観てみるのもいいと思う。
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