Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

VIENNA PHILHARMONIC ORCHESTRA (Sun, Mar 2, 2008)

2008-03-02 | 演奏会・リサイタル
私の頭の中には、今、?(クエスチョン・マーク)が百万個並んでいます。

先月のロイヤル・コンセルトヘボウの演奏会の最終日で、かぶりつきの座席(平土間の最前列)にすわり、
”失敗したーっ!”と後悔したのは、以前当ブログで書いた通り。
人生でも仕事でも、「同じ間違いを二度と起こさない」がモットーの私ですが、
こればっかりはどうにもなりません。今日も最前列です。
それはなぜなら、このウィーン・フィルのチケットを取ったのは8月だから。
ロイヤル・コンセルトヘボウの演奏会の全然前なのです。

なので、今日は朝から猛烈に憂鬱。
ロイヤル・コンセルトヘボウの時、各セクションの音の立ちすぎと、そして、
個々の楽器の音の聴こえすぎで、演奏後に軽く頭痛がしたのを思い出しました。

今日の一曲目は、ヴェルディのオペラ『運命の力』から序曲。
そして、あの印象的な、最初の金管の音が出てきて、私は目玉が飛び出すくらい仰天しました。

、、、音がうるさくない!!

もちろん、うるさくない、というのはデシベル云々の話ではありません。
この曲をご存知の方なら、この金管の音がかなり大音量なのはご存知のはず。
それでも、聴いていて、全く耳障りでなく、むしろ耳に優しい感じがするではないですか。
それから、弦が入ってきても、やっぱり同じ。こんな最前列に座っていても、全然うるさくないのです!
というか、ロイヤル・コンセルトヘボウのときに聴こえたような個々のヴァイオリンの音がほとんど聴こえない。

二つの違った場所に体を置くことが出来ない以上、確かめようのないことですが、
今日はヴァイオリン・セクションの調子がよく、そのためにより一体化して聴こえるのか、
それとも、金曜日にまとまりがないと感じたのは座席のせいなのか、、
とにかく、今日、この座席で聴く限り、弦のセクションは素晴らしいアンサンブルぶりです。

恐るべし、ウィーン・フィル、、。
寄れば寄るほど上手く聴こえるとは、、。

そして、この座席をどう解せばよいのか?
ウィーン・フィルでは○で、ロイヤル・コンセルトヘボウでは×??
よくわからない・・・。
なので、頭に百万個の?マークなのです。




演奏についてですが、『運命の力』の序曲で、ここまで完成度が高いものを聴いたのは、
初めてかもしれません。
音のバランスも小憎らしいくらいだし、もちろん個々の楽器の演奏も達者。
だが、しかし。何かが足りない。
何だろう?上手すぎるのだろうか?それもあるかも知れません。
ある意味、完成されすぎていて、面白みがないというのか。
私の好みを言えば、もう少しロマンティシズムを感じる演奏をしてほしいかな、というのはあります。
アルヴァーロとカルロの二重唱のテーマが出てくるあたり、
ベタでもいいから、もうちょっと感情を込めてほしいなあ、と。
そう、このウィーン・フィルの演奏は、あまりにすっきりと、おしゃれすぎるのかもしれないです。
イタリア・オペラは、たとえ少しダサくなってしまってもいいから、
ちょっぴりベタなくらいがいい!!がもう一つのモットーの私としては、やや寂しかった。
ただ、以前、キーロフ・オペラが日本で演奏した『運命の力』の、
あのどうにもこうにもねっとりした重苦しい路線ではなかったのは、私としては嬉しかったかも。
話が重苦しいからといって、音楽まで鈍重なのは、おしゃれさんよりも、なおいけません。

一昨日の『トリスタン~』の時ほどではありませんが、やっぱり、これを聴いて、
”ああ、これからオペラが始まる!!”というような昂揚感を煽る演奏ではないのは確か。
去年の『マイスタージンガー』序曲で見せたわくわく感のようなものは、
とうとう今年のオペラ絡みのレパートリーからは感じられずじまいだったのはやや残念でした。

二曲目のリスト『前奏曲』。
ゲルギエフは、旋律を歌わせるのに照れがあるのか、やはりさくさくと進んでいきます。
もうちょっと歌わせてくれてもいいのにな、と、『運命の力』に続いて思う。
しかし、それは贅沢なのかも知れません。
通常のスタンダードで言えば、素晴らしい演奏のうちに入るのでしょう。
ただ、はっきり言って、、、この曲、退屈だなあ、と思うのは私だけでしょうか?
退屈な曲が、技術的に極めて上手に演奏されるとこうなった!という感じに近いかもしれません。

さて、今日のメイン。チャイコフスキーの第五番。
これは、昨日の『悲愴』と甲乙つけがたい出来。
むしろ、一般的な基準では、『悲愴』よりもこちらの五番の方が上だったかもしれません。
各セクションの音のバランスもよく、『悲愴』よりも全体の構成とかつながりといったものが、
より自然だったような気もします。
ただ、私個人の意見としては、多少の欠点があったとしても、ぐっとひきこまれる瞬間があったという点で、
『悲愴』を取るかもしれません。
曲そのものはどちらかというと『悲愴』よりも、五番の方が好きなのですが、、。

しかし、絶対にふれておきたいのは、今日の五番でのホルンのソロ。
これは、本当に素晴らしかったです。
音になんともいえないたおやかさがあり、楽器という媒体を通しているという感じを越えて、
まるで人間の体から直接出てきているような、歌か何かを聴いているような感覚に近かったです。

昨日、今日と、非常に聴きごたえのある演奏に、NY人も大喜び。
やっぱり、「来年も来てね」と訴える子犬に今年もなってしまったのでした。
去年の完全余裕!に比べると、余裕の表情を浮かべる振りをしながらも、
”今年はちょっと頑張っちゃったりなんかして、地が出ちゃったかな?”という体のウィーン・フィル。
私は完全余裕の彼らよりも、こんなウィーン・フィルの方が好きです。

アンコール一曲目は、”ラベラ”という曲で、
ヴァイオリンがまるでシャンシャン、と鈴のような音に聞こえる曲。
ウィーン・フィルはこういう肩の凝らないピースを演奏すると本当に天下一品です。

そして二曲目は、英語でWithout Worries(心配なしに)という意味のドイツ語らしい、
”オーナ・ソルガ(ドイツ語筆記ではOhne Sorgeか?) ”。
もうこの曲は、オケが完全掌中に収めていて、指揮など要りません、という感じ。
ゲルギエフも、ほとんど指揮せず、一緒に踊って(!)ます。
途中でオケのメンバーが歌う”はっ!はっ!はっ!”という笑い声が楽しいのですが、
繰り返しの箇所では、ゲルギエフがいきなり観客席の方を振り向き、”みなさんもご一緒に!”。

いろいろと考えさせるところと聴きごたえのあった今年のウィーン・フィルの演奏会。
昨日と今日のような演奏が聴けるならば、もちろん、私も他の子犬と一緒に
尻尾をふって、来年彼らが帰ってくるのを待つのです。

VERDI Overture to La forza del destino
LISZT Les preludes
TCHAIKOVSKY Symphony No. 5

Conductor: Valery Gergiev
Parq A Odd
Carnegie Hall Stern Auditorium
***ウィーン・フィル Vienna Philharmonic Orchestra***