美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




会場は目黒区美術館とお隣の区民ギャラリー。そして東中野の映画
館で映画まで上映しています。私は美術館・ギャラリーの展示のみ
観てきました。

第一会場の目黒区美術館では炭鉱を通じて生み出された文化資源の
数々が展示されています。特に大きな作品が並ぶ油彩画のエリアで
はそのスケールに圧倒されます。写真のエリアには自らも煤にまみ
れて坑夫たちと一緒に働きながら撮っているカメラマンもいます。
その場に身を置いた人たちでなければ表現できないもの...普段私が
目にしている同時代の作品とは異質なもののように見えます。

その場に身を置くこと...

自ら飛び込んだ人もいるでしょうし、期せずしてその場にいた人も
いるでしょう。地下に潜って石炭を掘り出し、それを運び...過酷な
条件で働く人々を間近に見ることは、その人の表現に大きな影響を
与えたに違いありません。

個別の作品では奈良原一高さんの軍艦島の写真の神々しさに息を飲
みました。土門拳の子どもの写真は別の場所で何度か観たことがあ
ったのですが、こうした文脈で見せた方が、そのメッセージがより
伝わってくる気がしました。あと、長時間露光で光の点々を集めな
がら撮影する佐藤時啓さんの作品は、重い作品が多い中で、軽やか
な視点が感じられて面白く思いました。

油彩画では野見山暁治さんの若い頃の作品が印象に残りました。野
見山さんの作品をそんなに観ているわけではないですが、現在のも
っと明るい色を使った抽象画にも、どこか通じる筆致が感じられて、
炭鉱の思い出が今も沈んでいるのかもしれないな...などと思いなが
ら観ていました。


第二会場は美術館のお隣の区民ギャラリーに川俣正さんのインスタ
レーションです。川俣正さんのコールマイン・プロジェクトは炭鉱
の町をテーマにしたプロジェクトで、筑豊の田川という炭鉱のプロ
ジェクトがひと段落したところです。
コールマイン田川のページ

それに続くのが北海道の空知、ドイツのルール地方でのプロジェク
トだそうです。

コールマイン・プロジェクトについて川俣正さんはこんなことを書
いています。
> 「炭坑」というサブジェクトの持つ広がりは、世界のどこの国に
> おいても一時期は産業の基幹エネルギーであった歴史があるし、
> 現在も引き続き採掘が行なわれている国があることを考慮すると、
> 世界を一つのことから見比べ、考えられる。一つの地域の些細な
> プロジェクトが実は世界共通の言葉を持ち得るとき、まったく違
> ったコミュニケーションの広がりを感じる。またそのことがサイ
> ト・スペシフィック・ワークの新たな方向をも指し示している。
川俣正『アートレス』より

筑豊から北海道、ドイツへと広がっていくプロジェクトがどんな風
になるのか気になります。しかし、会場にはそのような説明はなく、
インスタレーションがあるのみでした。11/7 に川俣さんのトークイ
ベントがあったので、聴きに行くべきだったかもしれません。


炭鉱が生み出した過去の文化資源を紹介するのが第一会場の展示で
した。そこから生み出される異質なパワーに圧倒されます。だけど、
それは過去の遺産です。そんな文化資源を持った炭鉱を、どのよう
に今の時代に繋げていくのか...それについてのヒントが欲しかった
な...と思いました。

文化資源としての炭鉱展 (目黒区美術館) - 12/27 まで...


おまけ
川俣正のアートレスを読んだ感想とか通路とか...

コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )



« プレイバック ... 2009年12月の... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (テツ)
2009-12-23 11:06:46
佐藤時啓さんの夕張での仕事は、
発表当時ギャラリーで拝見して以来の久々の再会でした。
炭鉱へのスタンスが所詮よそ者であり、
リアルな時代を体験していない私には
一番近くに感じられた作品でした。

産業遺産とかノスタルジーではなく
炭鉱と現在をアートがいかに繋げていけるのかということについては
川俣さんのインスタレーションを観てもトークを聴いても
まだ方向の見えない模索の段階のようですね。

少なくとも旧産炭地の町おこし的なアートイベントは、川俣さんは決して指向しないでしょう。
 
 
 
Unknown (lysander)
2009-12-23 22:23:58
テツさん
コメントありがとうございます。

> リアルな時代を体験していない私には
> 一番近くに感じられた作品でした。
それが私にも響いてきた理由かもしれませんね...

> 少なくとも旧産炭地の町おこし的なアートイベントは、
> 川俣さんは決して指向しないでしょう。
まずは地域の人とコミュニケーションをとって探っていく
感じなのでしょうか。
どんなことが起こるのか、興味があります。
 
 
 
Unknown (Tak)
2009-12-25 23:05:03
こんばんは。

お身体の具合いかがですか。
29日までに完璧に治しておいて下さいね。

で、もしかしてこの展覧会で
お会いした後に。。。
 
 
 
Unknown (lysander)
2009-12-26 01:20:57
Takさん
こんばんは

そうそう。この直後でした。
ここのところちょっと調子が悪かったのですが、
まさか...
# としだなぁ...(^^;

今は復調!
 
 
 
Unknown (はろるど)
2009-12-27 16:37:15
こんにちは。野見山さんがあのような形で炭鉱と関係していたとは知りませんでした。また横山さんの絵も大変な迫力で見ごたえがありましたね。満足でした。

>川俣正さんのインスタレーション

これについては例の席で語り合いましょう…。
 
 
 
Unknown (lysander)
2009-12-28 21:57:12
はろるどさん
コメントありがとうございます。

> また横山さんの絵も大変な迫力で見ごたえがありましたね。
そうでした。
日本画であれだけの迫力を出せるとは...
# 日本画とか油彩画とか区別するのはナンセンスかもしれませんが...

> これについては例の席で語り合いましょう…。
まぁ、語らなくてもいいや...(^^;
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。