美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




瀧口修造に認められて世に出たという小山田二郎。その小山田二郎
の展覧会場は不思議な沈黙に包まれています...

会場を入ると水彩画のコーナー。異形の人たちが暗いくすんだ色彩
で描かれてします。中間色で表現された人々は誰もが物憂い様子で
す...その中でもチケットの絵柄に使われている老詩人が印象に残り
ました。インディアンのようなペインティングをほどこしてジャコ
メティのように細い顔を持つ詩人の表情と二羽の小鳥には、不安を
感じさせる水彩群の中にあって、どこか安らいだ何かを感じさせま
した...

こういう画風はどのように表現すればいいのでしょう...ちょっとグ
ロテスクな画風はジェームズ・アンソールを思い起こされますが、
どんなに破天荒な絵を描いても、最後には戻ってこれるキリスト教
を持っていたアンソールに対して、小山田の絵は自分しか信じられ
ないような痛切な孤独を感じます。それが油彩の大作『ピエタ』に
繋がって行ったのではないでしょうか...

空中に浮かぶ眼はルドンを思い出し、ひとつめの怪物にはゴヤの巨
人を彷彿とさせます。『カーニバル』という作品は、ピカソのミノ
タウロスを思い起こさせました...

そのミノタウロスは昨年、東京都現代美術館で開催されたピカソ展
(-躰[からだ]とエロス-)にも出展されていました。

その時に、私はこう書きました

> いろいろな苦しみを抱えながら(あるいは周囲の人を苦しませな
> がら)、息も絶え絶えにもがいているミノタウロスのグロテスク
> な姿形と、明かり捧げる少女の不動の姿勢。全体的には陰惨な印
> 象なのに、この絵からは、救いが感じられます。

カーニバルにも同様な印象を持ちます。そして、小山田がピカソに
似たような面があったことを、最初の奥さんへのインタビューで垣
間見ることができます(→小山田チカエさんに聞く)。

小山田二郎は勤めながら絵を描いていたのですが、1950年頃から創
作に集中します。それを支えたのが奥さんのチカエさん。旦那が駆
け落ちした朝のエピソードには思わず笑ってしまうのですが...(--;

とても因果な小山田二郎の展覧会は、7/3 まで開催されています。
東京都ステーションギャラリー

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
これは (村崎式子)
2005-06-16 00:34:51
日本人なのですか!?

すごい、こんな感性の持ち主がいたのですね……

知らなかった;;



ところで、MusicalBatonというものが私のところに回ってきまして。

詳しくは<リンク:http://yaplog.jp/purple_shikiko/archive/47 >私のエントリ</リンク>を見ていただくといいんですが……。

もしよろしければリレーを引き受けてくださいませんか??
 
 
 
初めまして。 (ろゆふ)
2005-06-20 21:34:05
小山田二郎展、観に行きまして、記事を拝見させて頂きました。

強烈でしたね。

トラックバックさせて頂きましたので、宜しくお願い致します。
 
 
 
小山田二郎展、行ってきました (akaboshi07)
2005-06-28 15:21:47
はじめまして。

小山田二郎展、僕も行ったのですが、絵もそうですが

人生のエピソードもとても面白い人ですね。

奥さんへのインタビューのリンクも、とても

興味深く読ませていただきました。

奥さんも、なんだか飄々としてそうでいいですね(笑)。

TBさせていただきました。よろしくお願いします。
 
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