美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




東京都現代美術館のピカソ展に行った。

ピカソは青の時代や新古典主義の時代が好きなのですが、その後の時
代の絵画を集めた展覧会です。露骨な描写のものも多数展示されてい
ましたが、展覧会の副題が『躰[からだ]とエロス』ですから。観終わ
ってから、そういう事かと思いました。この美術館は休日でも子供の
姿をあまりみないので、いっそR指定にして、その点を大きく宣伝し
たらもっとお客さんが来るかもしれません。ただ、初めて観たピカソ
の展覧会がこれだと、随分と偏った印象を持たれてしまうのではない
かなぁと少し心配。

『アナトミー』のコーナーの彫刻『男の頭部』『女の頭部』、あるい
は『三人の女』あたりはユーモラスで面白かった。特に彫刻は身の周
りのガラクタを寄せ集めた感が強くて、女性の顔がパレットだったり
するのですが、全然違和感なく見せてしまうのはさすがピカソ。
『アナトミー』には動植物の構造、人体、といった意味があるようで、
単純なものの組み合わせから新しいイメージを作っていく様子、ある
いは既成のイメージを単純なものに分解してから再構築していく様子
には、自分で工夫しながらものを作っていく子供のような無邪気さが
感じられて、とても好感が持てました。

ただし、マリー・テレーズに出会ってからの油彩は今ひとつ好きにな
れませんでした。顔や体が様々な色面や部分にわけられた肖像は、分
裂した印象で、病的なものを感じた。そこから地下にかけての展示全
般については余り好みではなかった。その中で、少女に導かれるミノ
タウロスを描いた『ラ・ミノトロマシー』には惹かれるものがありま
した。

このミノタウロス君には、1995年、池袋の東武美術館のピカソ展で会
ったことがあります。いろいろな苦しみを抱えながら(あるいは周囲
の人を苦しませながら)、息も絶え絶えにもがいているミノタウロス
のグロテスクな姿形と、明かり捧げる少女の不動の姿勢。全体的には
陰惨な印象なのに、この絵からは、救いが感じられます。たしか、十
年前の私も、救いを感じていたのだと思います...

この秋、文化村のグッゲンハイム美術館展に出品されていた『黄色い
髪の少女』は、1931年に描かれたものなので、同じ時代の作品だと思
います。金髪で特徴的な横顔はきっとマリー・テレーズでしょう。と
ても柔らかで気持ちのいい絵でした。今回の展覧会にも、もっと素直
に楽しめる絵が、もっとあったら良かったのになぁと思いました。

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コメント
 
 
 
ピカソの『アナトミー』 (anastasha)
2004-11-09 23:15:31
このコーナーではピカソの造形方法がわかった気がしました。顔や身体を調和の取れた全体的なものとして描くのではなく、目、手といった記号=標識に変換し、再配置していると思います。ちょうど福笑いと同じですね。それにしても展覧会R指定というのはナイスアイディアですね!!
 
 
 
Re: ピカソの『アナトミー』 (lysander)
2004-11-10 00:23:28
コメントありがとうございます。



初めてトラックバックをもらった時はとても

硬い文体だったので緊張してしまいました。



ピカソといえば、現代美術館で売っていたミ

ステリアスピカソというDVDはオススメで

す。50年前の映画で撮影はルノワールの息子

です。



また、遊びにきてください。



ではでは。
 
 
 
まさに (村崎式子)
2004-12-05 10:35:49
私のことです、「初めて観たピカソの展覧会がこれだと、随分と偏った印象を持」ってしまう「お客さん」。。。

かなりツウな方の中には楽しまれた方もいたみたいですけどねぇ……。
 
 
 
Re: まさに (lysander)
2004-12-05 19:57:08
> ツウな方の中には楽しまれた方も

お子様の私にはちょっとついていけませんで

した。企画した人には喝采を贈りますが...
 
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