美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




横浜トリエンナーレには先週行ったのですが(感想はこれ)、はろる
どさんのブログで関連の企画があるのを知りました(これ)。今日も
天気が良かったので、自転車でちょっくら散策してきました。

横浜の『BankART』は歴史的な建造物を文化芸術創造に役立てようと
いう試みで、旧第一銀行を使った『BankArt 1929』と旧日本郵船倉
庫を使った『BankART Studio NYK』とがあります。『NYK』は初めて
です。『1929』も建物の中を巡るのは初めてでした。

1929 から...

三階で目をひくのが岡崎乾二郎の『甲羅ホテル』です。これはチラ
シがおかしいのでその内容を転載させてもらいます。

> 原稿に集中できぬ文学者をホテルに幽閉し、なかば強制的に原稿
> を仕上げさせる、編集者の用いる術策を缶詰という...
中略
> 建築史家および若い棟梁とともに、こうした缶詰=テキストとし
> ての(生成する)空間設営を試み、完成後、実際に作家がそこに缶
> 詰になり、仕事をする...

要は作家を監禁するためのスペースなのですね。こうしたアイデア
から歴史的な建造物の中にしっかりした和室を作ってしまう発想に、
思わずニヤニヤしてしまいました。編集者が監視するためなのでし
ょうか、簾状の障子から室内の様子はまるみえなのですが、どんな
作品が生まれるのか楽しみです...
# チラシには宿泊予定リストが掲載されていました...
甲羅ホテルのブログ

甲羅ホテルの奥には舞踏家『大野一雄の部屋』があります。大野の
ものなのでしょう、しわしわの手をプリントしたベットでくつろげ
るかどうかは置いておいて、1階から3階までの階段に並べられた、
公演のポスターなどは興味深くみられました。室内で流す映像作品
は、もう少し工夫したほうがいいのではないかな...

また、エレベーターを降りてすぐの『ヌーヴォー・シルクの部屋~
ジェローム・トマ』、ここで流れているジェローム・トマの映像に
は観入ってしまいました。ジェローム・トマとバンドネオン奏者、
二人だけの映像なのですが、哀切をおびたバンドネオンの音色をバ
ックに、ピンポン玉やジャグラー、白い鳥の羽根を巧みにあやつる
ボードビリアンの演技は見応えがあります。こういうの小さい小屋
で、生で観たい...くつろぎの空間とは全然別の話ですが...

場所を NYK に移します...

ここで印象に残ったのが岡部友彦+funnybeeによる映像作品です。
横浜の寿町は日雇い労働者の町で、住民の高齢化が進んでいるそう
です。町には活気がなく、そうした町を再生しようという試みが始
まりました。学生やバックパッカーたちに訪れやすい町にすること、
高齢者も安心して住めるようにすること、町の緑を増やす事、そん
な試みを映像で表現したのが今回の作品です。ちょっと重いテーマ
をシャープな映像とユーモアのある表現で綴っていきます。ただ、
ちょっと映像の格好良さに走りすぎるきらいがあって、文字情報な
どは英語なんて使わないで日本語でしっかりと見せるようにすれば
いいのにな。
このプロモーション映像の解説

また、三階にある牛島達治の作品には独特の存在感がありました。
倉庫そのままの空間は薄暗く、剥き出しで野蛮な印象です。思わず
見ないで帰ってしまおうかと思ったくらいです。ちょっとした度胸
試し。そこには三つの作品が並んでいました。

右手の倉庫の中に仕切られた密室の中では、機械が床の上を這い回
っています。筆記具とカメラが装着されていて、床には小さな記号
が規則正しく描かれています。私が観たときはインク切れのようで
したが、きっと機械が描いたものなのであろうその模様をカメラが
捉え、プロジェクタで映写します。人気のない倉庫で、黙々と作業
する機械に、どこか薄ら寒いものを感じました。

左手の作品は背の高いオブジェです。その中では何やら機械が動い
ています。駆動機の音がしたかと思うとピタッと止まります。私の
背の高さではオブジェを見上げる事しかできず、中で何が行われて
いるのか分かりません。思わず手を触れてみると湿った土の感触が...
暗闇の中でたったひとり、普通に不安になってしまいました。

奥の部屋には幅三十メートルの空間に張り巡らされたロープと、そ
れにテンションをかけるためのバケツ二つが宙に浮いています。何
なんだこれは。ちょっとロープを触ってみようかと手を伸ばすと、
突然、遠くから、汽笛の音が...
驚いたーって、何でこんなにびびらなければならないのだ...とほほ。

運河に面した旧日本郵船の倉庫には独特の雰囲気があります。こう
した場所も『BankART』という試みによって人の活気が入ることで、
さびれることなく生きていけるのかもしれないな、そんな風に考え
ました。

ホスピタリティ(=もてなしのあるくつろげる空間)をテーマにしてい
る企画ですが、『くつろぎ』ひとつとっても人によっていろいろな捉
えかたがあるのだなぁと感じたひとときです。

さて、この展覧会、当日券は 900円なのですが、トリエンナーレとの
セット券は 2100円です。時間のある人はトリエンナーレと一緒に周る
といいのでは?

私は思わずセット券を求めてしまったので、トリエンナーレはもう一
度、行ってみようと思います...

BankART Life (PDFです) 12/18 まで...


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (はろるど)
2005-11-21 00:45:15
こんばんは。

拙ブログの記事へのリンク、ありがとうございます。

私としてはなかなか楽しめた企画だったもので、

lysanderさんもご覧になられて嬉しいです。



牛島の作品のご感想、拝見しました。

あの方は、他でもあのようなインスタレーションをおやりになられているようですが、

今回は会場の雰囲気を上手く利用した展示になっていましたよね。

薄気味悪い場所に、何だか奇妙な作品群。

そしてそれらにドッキリしながら…。

真っ暗な空間に一人だったものでたまりませんでした。

また、私も土に触ってみました。

あのザラッとした感触が忘れられません。



ちなみに、この展覧会を見た私ですが、

トリエンナーレはまだです。

共通券で来週にでも出向こうかと画策しております。
 
 
 
Unknown (lysander)
2005-11-22 00:12:55
はろるどさん

こんばんは



この展示ははろるどさんのブログのおかげで

観にいく事ができました。トリエンナーレの

会場でもらったチラシにはいまひとつ食指が

動かなかったので...トリエンナーレの感想も

楽しみにしています!
 
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