美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




水戸まで宮島達男さんの個展を観にいきました。

宮島さんの作品というと、暗闇に光るカウンター...様々な速度で刻
まれる数字は無機質で硬質な作品です。それが二年前に上野のギャ
ラリーで開催されていた個展ではどこか柔らかで、生き物のような
展開を見せていたのが印象的でした。
宮島達男展「FRAGILE」 (SCAI THE BATHHOUSE)

そんな宮島さんの新作『Counter Skin』は、ワークショップ形式で
制作された作品です。これはデジタルカウンターのペインティング
で、会場では二つの部屋にまたがって大きな写真が展示されていま
す。

北海道、奈良、広島、沖縄、それぞれのロケーションを背景にして、
参加者の体のいろんな場所に、いろんな色、いろんな数字が描かれ
ています。暗闇でひっそりと時を刻んでいた LEDとは大違い。そん
なワークショップの風景は以下で観られます。
北海道篇 その壱/その弐
沖縄篇 その壱/その弐
広島篇 その壱/その弐
奈良篇

おてんとさんの下で作られる作品はどこか楽しげです。

ただ、惜しむらくは展覧会の展示だけではそのワークショップの活
気が伝わってこなかったこと。単に大判の写真を並べるだけでは、
そのメッセージは伝わってきません...

例えば、本展に関するメッセージは以下のサイトを読めばとてもよ
くわかります。
札幌レクチャーレポート 前篇/後篇

あなたの中のアート、観客に参加させるアート...そのこと自体は悪
くないと思うのですが、この展覧会への入口として、そうしたコン
セプトが作品の展示やリーフレットからは伝わってこないのです。
それは致命的だと思います。

普通のアートな展覧会であれば作品についての予備知識はいらない
のでしょう。しかし、本展のように、参加型イベントの紹介であっ
たり意図を持つ展覧会では、もう少し観客に説明する工夫が必要で
はないでしょうか。

単に鑑賞するだけのアートに留まらず、観る側に能動的に参加させ
ていく作品はひとつの方向性として『あり』でしょうし、それなら
ばそうした作品を見せるための方法論が必要なのではないかと。あ
るいはそうした作品を発表するのに美術館が一番いい展示場所では
ないかもしれない。そんな風に思いました。

いろんな意味で今らしさを感じる、だけどまだまだとば口にある展
示だなぁ...と思いました。
# ウェブサイトの方が充実しているなんて、寂しいなぁ...

宮島達男展『Art in You』 (水戸芸術館) - 5/11 まで...

コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (Tak)
2008-05-06 08:48:31
こんにちは。

ワークショップの様子webでも観られるのですね。
会場で少しでも紹介すれば良かったのに~

>美術館が一番いい展示場所ではないかもしれない。
同意。
 
 
 
もうちょっと (KIN)
2008-05-06 12:32:39
見せ方の工夫なり、過去作品からの流れなりが
判ると良かったのかもしれませんねぇ。
小さいモニターでビデオ流すとか、簡単に出来る
事は沢山ありそうですけどね。
難しい物です。
 
 
 
Unknown (lysander)
2008-05-06 22:11:05
Takさん
こんばんは
先日はありがとうございました。

> ワークショップの様子webでも観られるのですね。
> 会場で少しでも紹介すれば良かったのに~
>
> > 美術館が一番いい展示場所ではないかもしれない。
> 同意。
展示会場でワークショップをしている通路展とは
対照的だと思いました。
ネットの使い方は Art in You の方が上手ですが、
それが本展に生かせていないように思いました。
 
 
 
Re: もうちょっと (lysander)
2008-05-06 22:13:18
KINさん
コメントありがとうございます。

先日はお疲れ様でした。

> 見せ方の工夫なり、過去作品からの流れなりが
> 判ると良かったのかもしれませんねぇ。
> 小さいモニターでビデオ流すとか、簡単に出来る
> 事は沢山ありそうですけどね。
> 難しい物です。
観る側の立場に立ってくれるといいのですが...(^^;
 
 
 
たしかに (一日一人)
2008-05-07 00:17:15
はじめまして…でしょうか。
以前からよく見させていただいているので、
初めてのコメントがどうか忘れてしまいました(苦笑)。

私も「Art in You」展を観に行って、どこか消化不良というか、
展示を観るだけでは意図を掴みかねた気がしたので図録を買って
翌日中に読破し、やっと真意がわかったような気がしました。
自分の知識不足のせいだと思っておりましたが、確かに参加型の
作品にはもう少し作家の意図を伝える工夫が必要なのかもしれませんね。
 
 
 
Re: たしかに (lysander)
2008-05-07 00:33:56
一日一人さん
こんばんは

> 自分の知識不足のせいだと思っておりましたが、確かに
> 参加型の作品にはもう少し作家の意図を伝える工夫が必要
> なのかもしれませんね。
そうだと思います。
新しいコミュニケーションのあり方が生まれつつあるので、
こうした参加型の展示はこれからも増えるのではないかと
思います。
そんな場面で、新しい作品や新しい美術館のあり方にも
触れる機会があるでしょうから、とても楽しみです。
興味は尽きません。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2008-05-07 00:35:11
こんばんは。宮島の作品に多くの説明がつくのもあまり好みませんが、仰るようにワークショップに由来するのであるならもっと丁寧な紹介があって良かったかもしれませんね。

ところで、HOTOは如何でしたか?やはりあまりお気に召さなかったとか…。
 
 
 
Unknown (lysander)
2008-05-07 00:41:31
はろるどさん
コメントありがとうございます。

> ところで、HOTOは如何でしたか?
今回は鏡を使った新作が多くありましたが、宮島さんなら
もっとうまく使えるように思います。
特にHOTOは新しい試みのシンボル的な作品だとは思うので
すが、こちらについてもワークショップ同様、これからの
作品のとば口(=予告篇)なのではないかと見ました。
# 個人的には FRAGILE の路線がもっと観たいです
 
 
 
ありがとうございます。 (じゃむ)
2008-05-07 18:43:14
lysanderさん、こんにちは。
レポート、ありがとうございます。
展示に出向けないものですから、とても嬉しく拝見させてもらいました。
色々と想像が膨らみます。展示専用のブログも見てみました! (^^
なんだか、沢山の方々が参加なさっている展示なんですね。
展示を見てはいないのですが・・・

>単に鑑賞するだけのアートに留まらず、観る側に能動的に参加させていく作品はひとつの方向性として『あり』でしょうし、それなら
ばそうした作品を見せるための方法論が必要なのではないかと。

同感しました。
色んな観客が参加しているから良いでしょ?的な展示だけでは、物足りないと思います。
あまりにも『参加』が前に押し出されてしまうと、では、色んな事情があって参加できなかった人、参加したくないけど展示を見たい人たちが、外に押し出されるというか、参加した者たちの間でしか意味のもてない展示になってしまうのではないかと思います。アートは万人に理解されるものではないといって、それはそれで良いという考えもあるでしょうけどね。
そうであればあるほど、展示の見せ方・伝え方が重要になってくると思います。
そのためにも、専用ブログが存在して、図録もあり、講演会だってあるんでしょうけど。
 
 
 
展示場 (じゃむ)
2008-05-07 19:25:55
>美術館が一番いい展示場所ではないかもしれない。

宮島氏はアーティストですから美術館がアーティストと繋がるのは不思議なことではないです。
今回の展示は見ていませんが、この展示やワークショップなどの様子が例えばの話で、多くの人が通るデパートやスーパー、図書館、遊園地などで行われていたらどうなのだろうとlysanderさんの書かれたことから、沢山の疑問が私の中に生まれました。

展示会場が美術館ではなかったら、アートでなくなってしまうのか?
美術館外だと、宮島氏がレクチャーで宣言している、『アートは感動を与える』の感動度は違うものになるのか?
タイトルにARTという言葉がついているだけにあって、美術(ART)館で見せないことにはアートではないのか・なくなるのか?
展示会場が美術館意外だと、何がどう変わるのか?
おそらく美術館側からの依頼や同意があってこそ存在する展示だと思いますが、もし美術館という場所が存在しなければ、作家である宮島氏本人は、どんな場所を選んで展示をするのだろうか? どのように見せるのか?


宮島氏は
>アート作品というのは、みなさんが見てくれて、感動してくれて、いいなと思ってくれなければ、ただの石ころだったり、ただのモノでしかないんです。

と仰っていますが『みなさんが見てくれて』ではなくて、『みなさんが参加してくれて』ではないのかと思います。
想像でしかないのですが、このような展示は、見て『おもしろい』『あ、参加してみたいな』と思っても参加していない観客は『感動』までは行かないのではないかと思うんです。
それから、世界中で見受けられる様々な展示の多くは、観客が見て『感動して』『いいな』とすんなりと思えるほどではなく、もっと『なんだか訳のわからない』『え? これってアートなの??』な展示がゴロゴロしています。
そして、当時は石ころ・ゴミなどと言われても、時をはるかに越えて、時代が変化してから認められるアートの形、アーティストだって沢山いるわけですから・・・宮島氏の発言には少々引いてしまいました。
 
 
 
Re: ありがとうございます。 (lysander)
2008-05-07 22:53:21
じゃむさん
こんばんは

> とても嬉しく拝見させてもらいました。
そうでしたか...(^^)
# 期待されてた内容かどうかは自信がありませんが...(^^;
 
 
 
Re: 展示場 (lysander)
2008-05-07 23:00:30
じゃむさん
こんばんは

> 宮島氏の発言には少々引いてしまいました。
そうでしたか...
私はむしろ、美術館側の姿勢が問われるのではないかと思います。
作家さんは美術館でもいいしギャラリーでもいい。
あるいはデパートの屋上だっていいわけです。
自分の作品にあった場所であれば...

一方、美術館は箱におさまる作品が集まらないとやって
いけません。
いろんな工夫をしながら新しい作品をキャッチできるよう
にならないと、そのうち行き詰ってしまうぞ...
そんな風に思いました。
 
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