美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




ク・ナウカの能舞台です。タイトルの夢幻能は正式には複式夢幻能、
世阿弥が完成させた能の形式だそうです。前半は主人公の亡霊が土
地の人間に憑依し、後半はその亡霊が生きていた頃の姿で脇役の夢
の中に現れる...というわけで、実在の様式を忠実に再現した芝居だ
ったそうですが、これは当日配られたリーフレットを後で読んで知
ったこと、最初に読んでおけばよかったな...

会場は東京国立博物館の裏手にある日本庭園です。会場の時間には
すっかり暗くなって、空には星が見えます。特設能舞台までは懐中
電灯を持った客席担当の方が誘導してくれました。秋の野外公演は
昨年の『アンティゴネ』に続くもの。昨年はとても寒く、また、舞
台と客席が遠くて台詞が聞き取り辛いのが残念だったのですが、今
回は毛布は貸してもらえるし、字幕スーパーまで用意されていまし
た。

開演です。

シェークスピアのオセローは、部下の謀にかかり、最愛の妻、デズ
デモーナを殺してしまう男の話です。そこまでがいっきに字幕で説
明されていきます。あれあれ、終わってしまったよ...

前場はそれから二十五年後、オセローに殺された妻が亡霊となって
さまよい出てきます。ここからは夢幻能、シェークスピアは見事に
解体されて、ク・ナウカの世界の始まりです。

オセローとデズデモーナのなれそめは仮面劇として演じられます。
動きはどこか東南アジア風、手づくりの仮面はちょっとした現代ア
ートのようです。そしてここから狂言回し、イアーゴの謀略が始ま
ります...

単純一直線のオセローと緩急変化球のイアーゴのやり取りはこの物
語の見せ場です。阿部一徳さんのオセローは迫力満点でした。そし
て大高浩一のイアーゴっぷりも最高。オセローの周りを囃したてな
がら跳ねてまわるイアーゴなんて、シェークスピア様にも思いつか
なかったのでは...そんな様子を悲しげに見つめるデズデモーナ...

後場は真相を知ったデズデモーナの踊りです。片手は白い自分の手、
片手は黒いオセローの手、そんな二本の手を操りながら、この世へ
の未練をようやく断ち切った、そんな明るさが感じられる踊りです。
最後には宙を跳ねるように舞台の袖へと去っていくデズデモーナ...

...悲劇の中で、救いようのない物語の中で、デズデモーナにだけに
は平安が与えられた、そんな脚色の芝居でした...


昨年、『マクベス』を上演すると聞いて、ク・ナウカとシェークス
ピアの取り合わせには以外だったのですが、とてもはまってしまい
ました(感想はこれ)。個人的なク・ナウカのベストは『サロメ』で、
青山円形劇場での公演も日比谷公園での野外公演も緊張感を持って
観たものです。それが、二年前の『マハーバータラ』から、どこか
緩める方向への幅の広がりが感じられて、最近のク・ナウカの芝居
は楽しくて仕方ありません。来年の秋は、どんな公演が観られるで
しょう...

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コメント
 
 
 
こんばんは (paul-ailleurs)
2005-11-17 21:18:26
羨ましく感じました。今月初めに北斎展に行った時にこの公演があることを知り、その舞台も見てきましたが夜になると素晴らしいのではと思っていました。残念ながらすでにチケットは売り切れで手にな入らず、先週もトライしましたが、時間が取れず行けずじまいでした。私にとっては新しい領域だったので何としても見たかったので残念です。次回に期待したいと思っています。

 
 
 
Re: こんばんは (lysander)
2005-11-18 01:06:32
paul-ailleursさん

コメントありがとうございます。



この劇団は最近人気があって、チケットが取り難くい

ようです。私も上演の一週間ほど前に友人のチケッ

トを取ろうとしたら売り切れでした...



気がついたら備忘録に書いておくので、興味があれば

ときどき寄ってみてください...(^^;



劇団のホームページはこちら...

http://www.kunauka.or.jp/jp/
 
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