美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




今日は樋口一葉の命日らしい。駅にも一葉祭という催しの
ポスターが貼ってありました。文京区や台東区での催しな
のに、どうして横浜にポスターを貼っているのかな...

この秋から樋口一葉が五千円札の肖像になった。名前は知
られているけれど、読んだことある人はどれくらいいるの
だろう。本好きの友人と話すときに、漱石を話題にしたこ
とはあるけれど、一葉の話をした記憶はほとんどない。作
品数の多寡にもよるのでしょうが、少なくとも私が使って
いた国語の教科書に、彼女の作品は取り上げられていなか
ったし...初めて読んだのは大学生の頃でした。


今日はゆっくり休んでいようと思ったので、布団と洗濯物
を干したあと、新潮文庫の『にごりえ・たけくらべ』を久
しぶりに読み返しました。

『にごりえ』と『十三夜』は封建的な社会で生きる女性を
主人公にしています。こう書くと暗そうですが、独特の文
体がそれを救っています。会話と地の文とを区別せず、い
くつかの文章を読点で長く繋ぎます。歯切れが良く、躍動
感があります。宿命に逆らえない人たちを描きながら、そ
れでもほんのりとした明るさを感じるのは、一葉の視線の
あたたかさとこの文体のお陰でしょう。これは日本語でな
ければ成り立たない作品だと思いました。

『たけくらべ』は繊細で様々な不安を抱えている子供たち
が、少しずつ大人になっていく、そんな瞬間を切り取った
青春小説です。初めて感じる不思議な気持ち。それを言葉
にできないもどかしさ。そうした淡い思いを伝える術もな
く、離ればなれになってしまうさびしさ。独特の文体は変
わりありませんが、長い文章が句点で区切られる時の余韻
が素晴らしい。二十代前半だったからこそ書けた若々しい
小説だと思うのですが、単なる感傷的な物語にするのでな
しに、その背後にある大人(親)の世界、大人の視線も書け
ていることが、今でも読み継がれる理由なのでしょう。


コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )



« ≒舟越桂(創作... 新しい地平へ(... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (ニヒルな旅人)
2004-11-23 20:57:40
樋口一葉記念館にいってきました。

24歳で亡くなったことにも思うことがあるんですが、その作品がここまで評価されるのにはどんな訳があるんだろう?なんて興味持っています。そこで紹介されていた冒頭部分を読んでみたんですがなんていうんですかね、どうも今のところ私には読み辛く感じています。まずはあらすじを、次に現代文に訳されたものを読んでみたい、なんて思っているですが、それだとどことなく風味が損なわれてしまいますかね。
 
 
 
Unknown (lysander)
2004-11-23 22:09:34
そうですよね。最初は読みにくいと思います。

だけど調子が出てくると読めてしまう。多少の

分からない言葉は飛ばしてしまう。注解を参照

しながら読み進めるよりも、勢いで読んだ方が

感じが出ると思います。



あらすじは読んでからでもいいと思いますよ。

筋を知っていても、良いものは良いですから。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。