美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




≒(ニアイコール)舟越桂』を昨日観ました。場所は渋谷のイメージ
フォーラムです。日曜日のレイトショーは空いていて、お客さんは十
人くらいでした。

昨年、東京都現代美術館での個展を観て舟越桂のファンになりました。
それまでは本の表紙などで知るだけで、少し気味が悪い彫刻だなぁと
思っていました。しかし、実物を観ると存在感が圧倒的で、ものを考
えるようなまなざしと品の良い服装に引き込まれました。個々の作品
だけではなく、その周囲を観て周るお客さんとの組み合わせが視覚的
に面白い、ゆったりとした居心地のいい展覧会でした。

『≒舟越桂』は舟越桂の新作を作る過程を追ったドキュメンタリー映
画です。等身大のデッサンからアイデアが生まれ、それが具現化され
て名前が付けられるまでを、三ヶ月に渡って密着しています。人物を
表現する上でのこだわり、形(骨格)、色(眼球)、ボリューム、様々な
工夫がみられます。鋸、鑿、金槌、そういった昔ながらの道具、道具
を使いこなす確かな技術。その総合が、あの独特な世界を生み出して
います。

途中、何度か襲われる不安をひとつひとつ受け止めながら、自らの腕
で答えを出していく様子は感動的です。ひらめきにすぐ反応できるよ
うに、常にアンテナを張っていると語っていました。まぐれも重なれ
ば実力である。そんな風にも語っていました。

偶然に見える小さな変化。そうした変化を積み重ねながら作品は完成
系へと近づいて行きます...


昨年の展覧会の会場では『情熱大陸』というテレビ番組を録画したも
のを見せていました。制作のプロセスはその頃と変わりません。しか
し、この映画にはそれとは違った面白さ、作家の人間性が滲み出てい
たように思います。もう少し作家の人物像が前に出てきても良かった
のではないかな...という気もしますが、一つの作品の生まれる過程
として、この映画には大満足です。

求龍堂からはNHKが作成したDVDも出ているので、そちらも観た
いと思いました(日曜美術館での放送をもとにしているようです)。


私は不器用で、自分では創造的な趣味・仕事を持っていません(仕事
には創造的な面もありますが、どちらかと言えば生産的な要素が強い
と考えています)。ですが、才能ある人たちが創造したものを楽しむ
機会には恵まれています。そうしたものに触れる時は楽しさ半分、
うらやましさ半分。努力はもちろん才能にも恵まれた稀有な人たち。
そんな芸術家の創造のプロセスや言葉にはとても魅かれます。


そこで創作の秘密をテーマにした、私の好きな映画をあげます。
# かなり偏っていますけど...

ミステリアス・ピカソ
画用紙の裏側にカメラを固定し、ピカソが描画する様子を撮影した映
画です。選曲もよい。以前、遊びに来た友人にこのDVDをみせたら
『何でこんなの持っているんだ?』と怪訝な顔をされました。好きな
んだけどなぁ...
撮影は画家・オーギュスト・ルノワールの孫でクロード・ルノワール。

グレン・グールド27歳の記憶
グレン・グールドの若い頃を撮影したもの。もともとはテレビのドキ
ュメンタリーのようです。スタインウェイの店でピアノを弾き比べる
場面や、レコーディングの場面など、みどころが満載で、独特の鼻歌
もばっちり聴けます。これは私が買った初めてのDVDソフトだった
のですが、音楽好きの友人に貸したら『こんなの持っているなんて変
わっている』と言われてしまいました。

SUPER FOLK SONG ~ピアノが愛した女。~
矢野顕子の真剣勝負。白黒で緊張感がびしばし伝わってくる上質のド
キュメンタリーです。

イヤー・オブ・ザ・ホース
ジム・ジャームッシュがニール・ヤング&クレイジー・ホースを撮っ
た映画。エンディングのミュージック・アーケイドはとても好きな曲
です。

≒森山大道
『≒』シリーズの第一弾。デジカメを使って歌舞伎町で隠し撮りする
場面を隠し撮りしているデジタルビデオ!?

山本耀司を撮ったヴェンダースの『都市とモードのビデオノート』や
スティングの『ブルータートルの夢』なんかもDVDにならないかな
ぁ...

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