goo blog サービス終了のお知らせ 

空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

アメリカのチップ文化

2022年05月17日 22時51分23秒 | 様々な話題

アメリカ旅行をした時、チップで悩まされた人は多いことだろう。

主にホテルの枕銭、
タクシーやレストランでのチップだが、
元々は
「良いサービスをしてくれたので、それに対しての感謝のしるし」
だったはずだが、
いつのまにか「権利」となっている風潮がある。

日本にはない習慣なので、
ついうっかり忘れることがある。
あるレストランでは、
代金を支払って外に出た後、
従業員が追いかけてきて、
チップを要求することがあったという。
そういう店には二度と行かないから、
逆効果だと思うが。

レストランだけではなく、
美容院で、
店員の方から
「今月から25%以上のチップがもらえることになりましたので、
それ以上のチップをお願いします」
と支払い時に言って来ることがあるという。
これでは、適正価格+強制徴収だ。

最近では、チェック(勘定書き)に
あらかじめサービス料として加算されている場合があるので、
それを知らずにチップをテーブルに置いたりすると、
二重で支払ったことになってしまうから注意が必要だ。
また、チェックに15%、18%、20パーセントの
チップの計算額が表示されて、
その中から選択するようになっているのもある。
チップ額を自分で記入して計算するようになっているものもある。

20パーセントといえば、
100ドルの食事をしたら、20ドルのチップ。
厨房から10mほどのテーブルまで料理を運び、
食事の途中に
「いかがですか?」
と聞いてくるだけの仕事に20ドルのチップはとうかと思う。
そんなことなら、
料理を作ってくれた料理人に支払いたい

たが、
娘がアメリカに留学していた時、
和食レストランでウェイトレスのアルバイトをしたことがあって、
その時の時給がわずか3ドルで、
あとはチップで補う、
という話を聞いて以来、
積極的にチップを支払うようにしている。

タクシーの時も面倒で、
メーターの数字を見ながら、
15パーセントの計算をするのは、かなり面倒で、
ポケットの中で密かにドル札を勘定したりする。
また、乗る前に小額紙幣を用意するのも必要。
その点、Uberは
乗る前に料金が分かっているし、
カード支払いで、金銭の授受はなく、
降車後、メールでチップの額を聞いてくるので、
適度な額を入力すればよく、
わずらわしさからは解放される。

ホテルの枕銭は、メイドさんの収入で、
わずか1ドル、2ドルのことなので、
旅行の初日にチップ用の1ドル札を
日数分、別に保管している。
部屋に入った時、
チップの有る無しで

メイドさんの一日がハッピーになると思うので、
こちらも積極的に置いている。
どこの国だったか忘れたが、
枕銭を置いて出かけて戻ると、
ちゃんとナイトテーブルにそのままの金額が置かれていた。
チップ制のない国だったらしい。

娘が日本のホテルでベルをやった時、
アメリカ人を部屋に案内すると、
チップをくれるので、
楽しみにしていたようだ。
日本ではチップの習慣はないし、
せいぜい、日本旅館に泊まった時、
仲居さんに心付けとして千円ほど渡すくらいだが、
その習慣もすたれつつあるようだ。

ロンドンで和食レストランに入った時、
テーブルの上に、
「当店は日本式なので、チップは不要です」
と書いた紙が置いてあって感心したものだ。

インドでアンバー城の坂道を象に乗って登った時、
最後にチップを要求され、
「地球の歩き方」に書いてあった相場を渡したら、
少ない、と文句を言われた。
後で見たら、下の乗り場には
「チップは渡さないで下さい」と書いてあった。

最近の記事で、
人気レストラン「フーターズ」で働くウェイトレスが、
一日のチップを合計したら、
382ドル(4万9千円)だった、という動画があり、
動画を見た人たちからは
「私は看護師だけど、あなたは12時間シフトの看護師よりも稼いでいるわ」
「僕はエンジニアだけど、この子は自分よりも稼いでる。
もう二度とチップはあげない」
とのコメントがあげられている。

アメリカでもところによって違い、
最低賃金に含まれるところと
チップは全くの余禄だというところがあり、
チップがなければ生活できないという人もいる。

元々は欧州の習慣で、
英国の飲食店で、
「To Insure Promptness(素早いサービスを約束します)」
と書かれた入れ物に客が金を入れたことから、
「Tip 」の名がついたとの説もある。
ただ、賃金の一部を客に委ねる雇用者のやり方に反発が生まれ、
欧州では1900年代初めまでに廃れていった。

米国には、19世紀ごろ持ち込まれ、
根強く残ったのは、
奴隷解放後、黒人に金を払うのを嫌った
飲食店などの白人雇用者が、
賃金を客からのチップでまかなおうとし、
南部を中心に定着した、という説がある。

最近では、チップ制度を
廃止しようという動きがある。

2014年前後から
ニューヨークやサンフランシスコなどの高級レストランでは、
チップ制を廃止する動きが始まった。
その背景には様々な理由があった。

1.サービスの質によってお客が金額を決めるチップ制では、
  従業員の収入が安定しないので
  固定給にした方が、人材が定着するであろう。

2.一部の悪質な店で、
  サービス要員に還元すべきチップを
  店側が横領していた例もあり、
  業界の透明性を高めたい。

3.客にしてみれば、
  チップ金額の計算が面倒なので
  チップ込みの金額の方が親切。

4.チップ制のない国からの訪問客が、
  チップを払い忘れるトラブルが増えていたが、
  これを避けるため。

ところが、これがうまくいかず、
静かに従来のチップ制に戻ってしまった。
それには2通りの原因があった。

1つは、従来のチップ分を固定給に上乗せしてしまうと、
所得税源泉徴収がされ、さらには社会保険料も引かねばならなくなり、
従業員からは「手取りが減った」という不満が出た。
また、高級店ほど、料理の価格が高いので、
当然チップの額も多く、
中には1千万円を越えるウェイターもいたので、
従業員の士気低下を招き、
結果的に「チップ制廃止店」では良い人材が集まらなくなってしまった

2つ目は消費者に与える印象。
チップの20%を固定給に上乗せするということは、
メニューの定価を20%上げなくてはならない。
例えば35ドルのステーキがいきなり42ドルになる。
客にとっては、チップを払わなくていいので同じことなのだが、
心理的に高くなったと思われて、
結果的に客足が遠のいてしまった。

というわけで、この「チップ制廃止の試み」は失敗し、
静かに多くの店でチップ制が復活した。
チップ込みの価格からは17%ぐらい値下げになるので、
お客からは歓迎され客足が戻った店も多かったという。

まあ、「郷の入れば郷に従え」で、
アメリカに行った時には、
チップ文化に協力するが、
日本で食事をすると、
食事代以外に支払う必要はなく、
本当に安心する。

 


短編集『暗殺の年輪』

2022年05月15日 23時12分21秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

藤沢周平初期短編集
まさしく初期も初期で、
『オール読物』新人賞を受賞したデビュー作から、
毎年、直木賞候補になり、
ついに直木賞を受章する頃の
2年間の作品群。

「冥い海」:『オール読物』」昭和46年6月号。
      オール読物新人賞受章作。
      46年上半期直木賞候補。
「囮」:『オール読物』昭和46年11月号。
    46年下半期直木賞候補。
「黒い縄」:『別冊文藝春秋』47年9月。
      『オール読物』昭和48年4月号に再録。
      47年下半期直木賞候補。
「暗殺の年輪」:『オール読物』昭和48年3月号。
        48年上半期直木賞受章。
「ただ一撃」:『オール読物』昭和48年6月号。
                                    
この頃の直木賞は、
単行本でなく、
文芸誌に掲載された短編でも候補になったようだ。

黒い縄

嫁ぎ先の姑とうまくいかず、
いびり出された形で出戻って来たおしの。
しばらく顔を見ていない古い知人宗次郎に出会った。
そのことを知った元岡っ引で今は植木職人の地兵衛の目が光った。
地兵衛が言うには宗次郎はおゆきという女を殺した犯人だという。
別の日におしのは宗次郎と会う事になり、
その時におしのは地兵衛から聞いた事を宗次郎に尋ねるが、
宗次郎は人を殺してなんかいないと断言する。
逆に宗次郎は最近付けられているような気がしているという。
どうやら、地兵衛が宗次郎の捜索をしているようだ。
もう十手は返している身なのに・・・

離縁された女の心に忍び込んで来る、
幼なじみへの追慕が哀しい。

暗殺の年輪

葛西馨之助は自分に対する周囲の視線が冷ややかなのを感じていたが、
最近になって、その理由を知った。
父が昔、藩内の政争により、
ある重臣の暗殺に失敗し、腹を切ったのだ。
母への不名誉な噂も付いてきた。
その葛西馨之助に、藩の上層部から、
藩の中老・嶺岡兵庫の暗殺についての命令が下る。
嶺岡こそ、父が暗殺に失敗し、
母の貞操を奪った男だった。
親子二代に渡る無情な役目。
しかし、それには裏があって・・・

家名を守るために、
身を捧げる母の姿が哀しい。

ただ一撃

仕官希望の剣士、清家猪十郎によって
次々と藩の若者が敗れていくことに腹を立てた藩主は
清家猪十郎を叩きのめさないと気が済まなくなる。
そこで白羽の矢が立ったのが刈谷範兵衛。
しかし、範兵衛は年老い、
今は隠居の身。
息子すらも父が兵法の達者であることを知らなかった。
周囲は不安を抱くが、
刈谷範兵衛は 清家猪十郎の姿を垣間見た時から、
修行を再開する・・・

元の荒武者に戻った義父を鼓舞するために
身を捧げる義娘・三緒の想いが哀しい。
しかも、自害に当たる理由は・・・

冥い海

葛飾北斎は安藤広重の噂を耳にする。
東海道を描いた画が評判だという。
北斎は大傑作「富嶽三十六景」を描いていたが、
それを凌ぐという噂だ。
気になった北斎は、
ようやく広重の絵を見る事が出来た。
平凡だと感じたが、
逆に平凡の中に非凡が隠されている絵だった。
自分とは質の異なる風景画を描く男の登場に動揺する北斎。
そして、広重が木曽路の絵を描くと聞いた北斎は・・・

お豊という哀しい女が三度登場する。

彫り師・甲吉は、
下っ引きをしていた。
病弱な妹の治療費を稼ぐためだった。
岡っ引きの徳十から仕事が来た。
人を殺して江戸から逃げた網蔵という男が
舞い戻っているようなので、
その情婦・おふみを見張れという事だった。
甲吉は、見張りを続けている内に、
おふみに特別な感情を抱くようになり、ある日・・・

5篇の短編は、
どれも暗い色調の作品ばかり。
当時の藤沢周平の心象風景だろう。
そして、どの作品にも哀しい女が登場し、
作品に豊かな色合いを加えている。
藤沢周平の描く女性像は、はかなく、美しい。
男を描いているようで、
実は女を描いている作品群だ。

ここのところ、荒れた文章の小説ばかり読んでいたので、
藤沢周平の端正ながら潤いのある文章に
心がなごんだ
一篇ごとに本を置いて、余韻に浸る
やはり、短編小説は、こうでなければ。

 


ドラマ『ペラパレスの夜更け』

2022年05月14日 22時43分29秒 | 映画関係

 

[映画紹介]

「ペラパレス」とは、
トルコのイスタンブールにある
伝説的ホテル、ペラ・パレス・ホテルのこと。

フランス系トルコ人建築家の
アレクサンドル・ヴァロリが手がけ、
ネオクラシック様式、アールヌーボー様式、
オリエンタル様式のデザインを取り入れて、
1892年に建築。
アガサ・クリスティがここに滞在していた時、
「オリエント急行殺人事件」を書いたことでも有名。

女性記者エスラが、
ペラ・パレス・ホテルを取材中、
アガサが泊まった部屋で深夜、タイムスリップしてしまい、
1919年のイスタンブールに飛んでしまう。


そこで、エスラは、
ムスタファ・ケマル・アタテュルクの暗殺計画が進んでいることを知る。
もし彼が殺されてしまったら、
歴史が変わってしまい、
今のトルコではなくなってしまう。
そこで、エスラは、暗殺計画を阻止するために活躍する。

ムスタファ・ケマル・アタテュルクは、
トルコ人なら誰でも知っている建国の父
オスマン帝国軍の将軍で、
第1次世界大戦後における
トルコの祖国解放運動の指導者。
トルコ独立戦争とトルコ革命を指導して
トルコ共和国を樹立。
スルタン制を廃止して、
イスラム教との政教分離などトルコの近代化を推進した人物。
トルコ共和国の元帥、初代大統領。
トルコ大国民議会から「父なるトルコ人」を意味する
「アタテュルク」の称号を贈られた。

1919年5月16日、ムスタファは、
貨客船「バンドゥルマ」で出航し、
5月19日、サムスンに上陸した。
後にトルコ共和国は、サムスン上陸の日をもって
トルコ祖国解放戦争開始の記念日としている。

エスラがタイムスリップしたのは、
まさにこの時で、
ホテルでムスタファを見たエスラが
「アタテュルクだわ」
と言うが、
この時はまだこの称号が与えられていないので、
ホテルの人が「?」となるシーンがある。
また、アガサ・クリスティにも会い、
「あなたの本は、全部読みました」と言うが、
この時、アガサの本はまだ一冊も出版されていないので、
同様にうろんな目で返される。

エスラがタイムスリップした時、
ペラ・パレス・ホテルの支配人のアーメトも


同時にタイムスリップしてしまう。
その理由は、後で明らかになる。

英国(ドラマの中では英国将校ジョージ)による
暗殺計画は、5月15日に富豪の娘ペリデのお陰で阻止されたことで、
トルコは無事に建国出来た。

エスラは、ホテルでペリデとも遭遇するが、
この二人が瓜二つ
(その理由は、やがて明らかになる)
ペリデは早々に殺されてしまい、
エスラはペリデに成り代わって、
アーメトと共に暗殺阻止に奔走し、
史実と重なる。

これに、クラブのオーナー、ハリト、
亡命貴族の娘ソンヤ、
警察警部のレシャト、
タイムマシンを開発するディミトリなどが絡む。

ただ、第5話までは、
どうでもいいような話が続き、
第6話で突如として面白くなる。
というのは、ここでタイムスリップが頻発するわけで、
銃で撃たれ、感染症を併発したハリトのために
抗生物質を調達する必要が生じ、
ペニシリンが開発される1928年以降に飛ぶ必要が生ずる。
ところが、1917年に飛んでしまい、
そこでエスラ(ペリデ)は、
無頼漢だったハリトと接触し、恋が芽生える。
次に1942年に飛んで、
抗生物質を得るが、
そこは、ジョージが独裁者となり、
トルコ人が抑圧されている世界だった。
そこでエスラ(ペリデ)は、
抵抗運動をしているある人物と会う。

こういうところがタイムスリップものの面白さだ。
その途中で、ペリデ殺害の真相も判明する。
アーメトの出自も明らかになる。
アーメトが持ち込んだスマホが
証拠映像の撮影に使われたりする。
全8話見終わった後に、
もう一度前の回を見直すと、
ああ、そうだったのか、となりそう。

ペラ・パレス・ホテル全体が
タイムマシンだという、奇抜な発想。
しかも、部屋の鍵が重要なアイテムになる。

エスラ(ペリデ)の活躍で、
暗殺計画は無事阻止され、
エスラはアーメトと共に現代に戻ることになるが、
行き着いた先は1995年で、
そこで、エスラはある人物と遭遇し・・・

シーズン2が出来そうな気配。
アガサの11日間の失踪がネタになるのかもしれない。

トルコ製作のNetflixオリジナル・ドラマ
3月3日から配信開始。
8話構成で、全5時間49分。

1世紀前のイスタンブールの造形が見事。

原作はチャールズ・キング
監督はエムレ・シャーヒン
俳優たちはあまり感心できない。

 


誤送金

2022年05月13日 22時54分32秒 | 様々な話題

ある地方自治体の「誤送金」が話題になっている。
山口県阿武町がその自治体だ。

新型コロナウイルス禍で実施した
住民税非課税世帯への10万円の臨時特別給付金の
463世帯分に相当する4630万円
誤って1 世帯の銀行口座に振り込んでしまったのだ。

過ちに気付いた町の職員が、
その該当者男性(Tさん、24歳)に事情を話し、
それでは返金しましょうと、
銀行に向かう途中で、翻意し、
その日は返金せず、
後日、返還を拒否。

その後、どうやら法律を研究したらしい。
職員が繰り返し返還を求めていたが、
「多忙」を理由に先延ばしされ、
4月21日に再訪した際、
「別の口座に移した。もう元には戻せない。

逃げることはしない。罪は償う」
などと述べたという。
男性は、返還を求められた日から
カードで別の金融機関の口座に金の振り込みを始め、
およそ2週間で口座から金がほとんどなくなったという。

その後、男性は、
勤め先を辞め、
身をくらましてしまった。
男性は、2020年10月、
町の空き家バンク制度を利用して
県内の別の地域から移住し、
県内の店で働きながら一人暮らしをしていた。
住民税非課税世帯だから、
収入は低いと思われる。

阿武町は臨時町議会を開き、
振り込まれた金額と弁護士費用などを含めた
5116万円の支払いを求める訴えを起こす議案を
全会一致で可決した。
これを受けて町は、
「不当利得の返還」を求める内容で
山口地裁萩支部に提訴した。

送金の際、町役場の担当者は、必要なデータを銀行に渡したが、
これとは別に、1世帯に4630万円を振り込む誤った用紙が出力され、
それを銀行に持ち込んだことが今回の事態につながったという。
阿武町の会見で、
データを渡す方法について、驚きの事実が判明した。
阿武町役場と銀行はフロッピィディスクを使って、
支払い等を行っているという。

フロッピィディスク?
まだそんなものを使っているのか。
USBでもなく、ネットでのデータ送付でもなく、
手渡しのフロッピィディスク。
なぜいまだに使っているのかと聞くと、
「昔から継続しているため」だという。
山口県内の自治体に聞くと、
ほとんどが、データ伝送に移行し、
フロッピィディスクを使っているのは4市町だけだという。

いろいろ疑問がわく。
町の振り込み作業の時、
上司をはじめ、複数がチェックしているはずだが、
どうして誰も間違いに気付かなかったのか。
銀行も振り込みの内容を把握していたはずなのに、
なぜ誰もおかしいとは思わなかったのか。
事態が発覚した時、
どうして銀行口座を凍結する等の措置をしなかったのか。
銀行は預金者本人の同意がないと出来ないと言っているが、
事態の経緯は分かっていたはず。
銀行の責任において処置できなかったのか。
送金先の口座は銀行で把握できないはずはない。
役所は警察に相談して「捜査協力」の形を取って
金融機関の協力を仰ぐとか、
裁判所で手続きして口座開示の「命令」をだしてもらうなど、
出来ないものか?

そもそも、こういうケースは既にあるのに、

どうして、法的整備は出来ていなかったのか。

弁護士によると、
「誤って振り込まれた人がそのまま放置していれば、
その人に刑事上の責任は起きてこない。
現金自体は銀行が保管していることになるので、
銀行が保管している金を、
自分が預金口座の名義人だからといって、
引き出そうとしたり、
他の口座に振り込もうとしたりしたら、
窓口の銀行員をだましたことになるので
詐欺罪成立の可能性がある。
ATMの場合は機械なのでだましたわけではないが、
銀行が持っている金を取ることになるので、
窃盗罪といった刑事上の責任が生じる可能性がある。
本来自分の金でないので、町に返さないと行けない。
『不当利得返還義務』が民事上は責任として生じる」
という。
当然だ。

ところが、口座に振り込まれたものは、
誤送金であろうと、
預金者のものだという最高裁判例もあるという。
(おかしな判決だ)
他の銀行誤振込事件でも詐欺罪には問えず、
窃盗罪の適用で下級審と上級審で判断が別れた事もあるという。
詐欺罪なら刑は重いが、
窃盗罪では重い刑が課せられず、
(3~5年の実刑判決程度)
刑に服して、4600万円もの大金をゲット出来るなら
そうすると考えるかもしれない。
それが、「罪は償う」ということか?
民事で訴えられて、強制執行手続きをされても
口座に金が無く
本人の手元になければ、差し押さえも出来ない。

本人は、
「もう元には戻せない。
 逃げることはしない。
 罪は償う」
と言っているが、
金を使っていなければ、元に戻すのは可能。
逃げることをしないといいながら、逃げているし、
第一、「罪は償う」というのだから、
犯罪と認識しているのだろう。

仮に窃盗罪で服役し、罪を償ったとしても、
不当利得返還義務という民事上の責任は継続する。
時効まで待つつもりかもしれないが、
不当利益の返還請求がなされた時点で時効は成立しない。
先の弁護士は言う。
「一時的には得することになると思うのですが、
法律的な支払い義務はなくなるわけではありません。
この人が働いていて金銭を得ることがあれば、
お金を差し押えて強制的に取り立てることはできる可能性があります。
ですので、簡単に逃げ切れる話ではないと思います」

では、男性が破産宣告した場合はどうか。
弁護士は言う。
「免責されるかどうかが重要なんですね。
破産手続きの中で“免責決定”というのが出ると、
お金を返さなくてもよくなるんです。
ただ今回のような故意または重過失によって生じた債権なので、
破産しても免責されるのは難しいと思います」

もしお金が戻ってこなかった場合、
役場職員が代わりに支払うことも考えられるという。
しかし、職務上の失敗を
個人に課しては、士気に影響するだろう。

この金は、元をただせば、国民の血税だ。
この男性は、国民から金を奪ったことになる。

本人の名前は、今のところ開示されていないが、
裁判にでもなれば自ずと名前は出てくる。
そうすれば、社会的な制裁を受けることになる。

あと、誰も触れていないのだが、
所得税の問題もある。
この男性が4630万円を取得すれば、
その収入を申告する必要がある。
不労所得だから、
そのまま税金がかかり、
税率は45%。
4630万円×45%-控除分479万6千円で、
1603万9千円を納税しなければならない。
支払わなければ、追徴課税で、更に増える。
不当利得返還義務が強制されれば、
長い年月をかけて赤字だ。

その上、世間から逃れて逃亡生活をするはめになる。
住民票も移せない、
いろいろ考慮しても、結局は損だ。
この男性について
法律を研究して、
「頭がいい」と評価した人がいるが、
とんでもない。
頭がいいのではない。
悪知恵が働いただけだ。
本当に頭のいい人なら、
総合的に考慮すれば、
そんなことは損だと分かるはずだ。
大金に目がくらんで、
目先の得を取っても、
長い人生では損ばかりだ。

落語の「芝浜」は、
早朝魚河岸に仕入れに行った主人公が大金を拾う話だ。
主人公は舞い上がって、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをするが、
その翌朝、酔いから覚めてみると、
女房は、そんな金は知らない、夢だろう、と言われる。
心を入れ換えた主人公は、
その後、身を削って商売に励み、
店を構えるようになる。
そこで、女房が、
実はあの金は、お上に届け、
持ち主が現れないので、
お下げ渡ししていただいた。
と打ち明ける。

今回の場合、
自分の口座に大金が振り込まれてきても、
それが正当な金でないことは明白だ。

間違えて送金されたものを

自分のものにするのは、いけないことだとは、

子供でも分かることだ。
それを法律の抜け穴を探して、
自分のものにする、
というのは、意地汚い行為だ。
誰にも誇ることの出来ない、
悪い行為だ。
その結果、身を隠し、
日陰の道を歩く者になる。
なんという損失だろう。

汗水流して働いたお金は何より尊い。
悪いことをしなければ、
良心のままに、堂々と胸を張って生きることができる。
今からでも遅くはない、
夢から醒めて、お金を返金することだ。

日本には「お天道様が見ている」という
いい言葉がある。
24歳というから、まだまだ先がある。
これから先の50年間をどう生きるかがかかっている。

そう、誰か教えてやってくれないか。


小説『廃遊園地の殺人』

2022年05月11日 23時20分09秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

山奥に作られたイリュジオンランドというテーマパーク。
イリュジオンリゾート計画の目玉として期待されていたが、
プレオープンの時、4名が死亡した銃撃事件が起こったため、
オープンを待たずして閉園
リゾート計画も白紙に戻された。

テーマパークは、十嶋庵(としま・いおり)という
酔狂な資産家に買い取られ、
20年間放置され、廃墟と化した。

その廃墟に、20年ぶりに人が訪れる。
選ばれた人間のみに公開されるとして、
招待された10人。
噂では、千名を超える応募者の中から、
十嶋庵のお眼鏡に適う廃墟マニアたちが集められたという。
10人の内訳は、
廃墟マニアのフリーター、廃墟マニアの小説家、
廃墟好きのOL、「月刊廃墟」の編集長、
元イリュジオンランドの経営陣と運営スタッフ数人、
それに、十嶋財団から派遣されたスタッフ。

携帯電話の電波も届かず、
途中の山道が崖崩れで遮断され、
推理小説でいう「クローズドサークル」が作られる。
更に、手首に嵌められたバンドによって、
園内から外に出たと感知された者は、
二度と園内に戻ることはできない。

スタッフから招待者十嶋の伝言が伝えられる。
「このイリュジオンランドは、宝を見つけたものに譲る」

というわけで、廃墟遊園地という閉鎖空間での
宝探しが始まる。
そして、殺人事件が連続する・・・

更に、施設内の壁に、
「イリュジオンランド銃乱射事件の真犯人は、この中にいる」
という貼り紙がされ、
真犯人探しも並行して行われる。
また、この10人の中に、
十嶋庵本人が紛れ込んでいるのではないか、という疑いもある。

ところどころに、過去の記憶がはさまるが、
どうやら、イリュジオンランドが建てられた
天衝村の人々を巡る賛成反対の確執が
建設前にあったらしい。

参加者の中に警察官や
週刊誌の記者が混じっていたりで、
謎が混迷を極める。

廃墟となった遊園地で起こる事件、
推理小説らしい舞台は整うのだが、
どうもその後がいけない。
遊園地のアトラクションが上手に生かされたとはいえないのだ。
道具は沢山あるのに、
それを使いこなせなかったという印象。

また、登場人物に魅力がない。
その上、
10人のメンバーが、
眞上(まがみ)、藍郷(あいざと)、常察(つねみな)
主道(すどう)、渉島(しょうじま)、売野(うりの)、
成家(なるいえ)、 鵜走(うばしり、 編河(あむかわ)、 
佐義雨(さぎさめ)
という、珍しい苗字の人ばかりなので、
イメージが沸かず、はじめの方に掲載されている
登場人物一覧表を何度もめくるはめになる。
従って感情移入できない。

探偵役は眞上永太郎(まがみ・えいたろう)というフリーターで、
コンビニで働いた経験が
観察眼を発揮する、という設定は面白い。
眞上本人の出自探しも織り込まれる。

総じて、料理の素材は揃ったが、
うまく料理しそこなった
という感じ。

そういえば、この人の本は、
「楽園とは探偵の不在なり」というのを読んだことがあったが、
このブログで紹介されていないところを見ると、
あまり評価は高くなかったんだろう。