空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

2023年の重大ニュース

2023年12月31日 18時00分00秒 | 様々な話題

2023年も、明日で終わり。
ついこの間、正月だと思ったのに。
年々、時の過ぎるのが早くなります。

では、恒例の今年の重大ニュース
出典は、読売新聞の読者アンケートから。

まず、国内の重大ニュース。

1位 
WBC、日本が14年ぶり優勝

2位 
大谷翔平、米大リーグで本塁打王

3位 
ジャニーズ事務所、性加害認め謝罪 

4位 
将棋の藤井聡太竜王が史上初の八冠 

5位 
阪神38年ぶり日本一 

6位 
闇バイト強盗、指示役「ルフィ」ら逮捕

7位 
新型コロナが「5類」へ移行 

8位 
ビッグモーターが保険金不正請求 

9位 
記録的猛暑、夏の平均気温過去最高 

10位 
福島第一原発の処理水放出開始 

 

11位 
広島でG7サミット開催

12位 
各地でクマ被害、死傷者過去最多 

13位 
日大アメフト部員、違法薬物で逮捕

14位 
歌舞伎俳優の市川猿之助容疑者を逮捕 

15位 
ガソリン価格過去最高、物価高続く 

16位 
岸田首相演説会場に爆発物投げ込み 

17位 
夏の甲子園で慶応107年ぶり優勝 

18位 
生成AI急速に普及。著作権侵害など弊害に懸念も

19位 
旧統一教会の解散命令請求

20位 
マイナカードでトラブル相次ぐ

 

21位 
五輪で談合、組織委元次長ら逮捕 

22位 
音楽家の坂本龍一さん死去 

22位 
株33年ぶり3万3000円超 

24位 
宝塚が劇団員死亡で報告書 

25位 
車いすテニス国枝さんに国民栄誉賞 

26位 
岸田首相、ウクライナを電撃訪問 

27位 
ネットで脅迫、ガーシー前参院議員逮捕 

28位 
日韓首脳会談、関係正常化で一致 

29位 
消費税のインボイス制度開始 

30位 
LGBT法成立

 

自民党安部派等による
パーティー券売上キックバック問題が入っていないのは、
調査の時点に問題がありそうです。

今年は、ジャニーズ事務所、宝塚、ビッグモーター、
自民党と、
大きな組織の権威が傷ついた年と言えるでしょう。

                                        続いて、海外の重大ニュース。

1位 
ハマスがイスラエルに大規模攻撃、イスラエルが報復

 

2位 
トルコ・シリア大地震5万人超死亡 

3位 
ハワイ・マウイ島で大規模山火事 

4位 
ロシアのウクライナ侵略1年。戦況はこう着 

5位 
英国のチャールズ国王が戴冠式 

6位 
「ツイッター」の表示「X」に変更 

7位 
WHOがコロナ緊急事態を解除 

8位 
露民間軍事会社「ワグネル」が反乱。南部の露軍拠点を一時制圧 

9位 
フィンランドがNATO加盟。31か国体制に 

10位 
ラグビーW杯、南アが2大会連続、最多の4度目V 

 

11位 
北朝鮮「軍事偵察衛星の発射成功」 

12位 
国際刑事裁判所がプーチン露大統領に逮捕状 

13位 
タイタニック見学の潜水艇不明に 

14位 
金正恩氏が訪露、プーチン氏と軍事協力で合意か 

15位 
中国の習国家主席3選 

16位 
トランプ前米大統領起訴 

17位 
モロッコで大地震 

18位 
インドが月面着陸に成功 

19位 
米中が1年ぶり首脳会談 

20位 
ゼレンスキー氏が国連総会に出席

 

21位 
中国「ゼロコロナ」政策終了 

22位 
中国、61年ぶり人口減 

23位 
ウクライナで露軍占拠の水力発電所ダム決壊 

24位 
米領空に中国偵察気球 

25位 
ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏 

26位 
キッシンジャー米元国務長官が死去 

27位 
韓国が元徴用工問題の解決策を提案 

28位 
日米韓が首脳会談 

29位 
アフガニスタンで大地震 

30位 
「チャットGPT」開発会社トップ解任巡り騒動 

 

さて、来年はどんな年になるのでしょうか。

 

 


映画『終わらない週末』

2023年12月29日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

ブルックリンで暮らす、広告会社に勤めるアマンダは
朝、急に思い立ってロングアイランドの別荘をレンタル予約。
仕事へのプレッシャーから離れて、
週末、少しでものんびりと休暇をとりたいと考えたのだ。
同行するのは、夫と息子、娘。
行った先の別荘は、
想像を越えた豪勢な屋敷だった。

海岸で遊んでいると、
沖の巨大タンカーがこちらに向かって来た。


ぐんぐん近づくと、
ついに砂浜に乗り上げ、座礁してしまう。
それだけではない。
ニューヨークが停電で、
ネットもテレビをスマホも全く仕えない状態に。
ハッカーによるものだといい、
一切の情報から隔絶されてしまう。

不安を抱える夜中、訪問者が。
この別荘の持ち主の黒人の父娘。
ニューヨークに向かう途中、
非常事態に巻き込まれて、
引き返して来たのだという。
アマンダは警戒しながらも、
父娘を受け入れる。

その後、
アマンダたちは、別荘を出て
ニュージャージーの姉の家に向かうことにするが、
高速道路で自動運転搭載のテスラの新車が
無人のまま走って来て衝突し合い、
道を塞いでいた。
一家は仕方なく別荘に戻っていく。

情報を得るために車で出かけても、
GPSが機能せず、迷子に。
空からは、旅客機が墜落して来る。
タンカーが進路を誤ったのも制御不能なためで、
通信衛星も機能せず、
自動運転車の異常走行も起こり、
ハッカーによる攪乱というのは、本当らしい。
更に、鹿が家を取り巻いたり、
フラミンゴがプールに大量に来訪したり、
異様な音が鳴り響いたり、
アマンダの息子の歯が抜け落ちたり、
異変が続く。
そして、ドローンから、アラビア文字の宣伝ビラがまかれ、
そこには、「アメリカに死を」と書かれている。

という異常な状態に巻き込まれた一家の話。
なにしろ、主な登場人物は7人しか出て来ない。
アマンダの家族4人と、
別荘の家主父娘、
それに、近所に住むサバイバリスト。

配役がすごい。
アマンダにジュリア・ロバーツ
その夫にイーサン・ホーク
家主にマハーシャラ・アリ
サバイバリストにケヴィン・ベーコン
オスカー、準オスカー級の配役だ。

謎が謎を呼ぶ展開に引きつけられるが、
真相らしきものが出た途端、
えっ、それで終わり?
となる。
そこからこそ本当のドラマが始まるのではないか。
家主によって語られる
事態の解釈も、
だから、どうなる?
という感じで、
そういう意味で期待外れ。
豪華な俳優陣ではあるが、
まだ調理途中の食事を食べさせられた感じ。

カメラが空から家の窓を入って中を描写したり、
空から走る車の内部にカメラが入って、
また外に出たりと、
CGを駆使したカメラワークが興味深い。

ジュリア・ロバーツの役は、
仕事のせいで怒りにとらわれた嫌な女。
家主が戻って来たのに、
契約を盾に拒んで占有を主張する。
アメリカ女って、みんなこうなのか?
とさえ思わせてしまう。
娘は懐かしのテレビドラマ「フレンズ」の最終回が見れなくて苛つき、
大変な事態に陥っているのに、
最大の関心事はテレビドラマの最終回、というのも笑わせる。

バングラデシュの移民二世の作家ルマール・アラムの小説が原作。


原題は「Leave the World Behind」。
意味は「世界を置き去りにする」。
邦題は、翻訳本が出た時付けられた題名で、
「週末」が「終末」に思わせる趣向。
原作との違いは、家主が年配の夫婦から父娘に変更されたこと。
「フレンズ」に関するエピソードは、
映画のオリジナルで、原作には出て来ない。

この本が注目を集めたのは、
ちょうど出版時期(2020年10月)が、
新型コロナウイルスのパンデミックで
世界中でロックダウンが発生し、
「これは終末か」と
不安と恐怖を全世界の人々が体験したタイミングだったからのようだ。
そのせいか、
映画化されるスピードも早く、
出版前に入札合戦があり、Netflix が獲得。
そして早くも今年配信。
情報が少ない異常な状況が
パンデミックのあの混乱と重なる。

監督は、サム・エスメイル
バラク・オバマとミシェル・オバマが設立した
製作会社Higher Ground が制作に関わっている。

Netflix で12月8日から配信。

 


上野のお山 寛永寺・上野東照宮

2023年12月28日 23時00分00秒 | 名所めぐり

今日、娘は韓国に旅立ちました。
帰国は1月6日。
つまり、10日間韓国に滞在。
新年を異国で迎えます。
その間、コンサートとミュージカル三昧。
DNAとは恐ろしいものです。
 
さて、先日、銀座で映画を1本観た後、
銀座線で上野へ。
目的は寛永寺
寛永寺は、時代物によく登場しますが、
拝観したことはありませんでした。

上野のお山全体に
寛永寺の建物が配置されています。
山号は東叡山(とうえいざん)。
東の比叡山の意。
比叡山延暦寺を見立てています。

寛永寺は天台宗の別格大本山のお寺。
寛永2年(1625)年、
徳川幕府の安泰と万民の平安を祈願するため、
江戸城の鬼門(東北)にあたる上野の台地に、
慈眼大師(じげんだいし)天海(てんかい)大僧正によって建立されました。
後には第四代将軍・徳川家綱公の霊廟が造営され、
将軍家の菩提寺も兼ねるようになりました。
江戸時代には格式と規模において我が国随一の大寺院で、
現在の上野公園のほぼ全域が寛永寺の旧境内でした。

しかし幕末の上野戦争により、
境内地に彰義隊がたてこもって戦場と化し、
慶応4年(1868)、官軍の放った火によって、
全山の伽藍の大部分が灰燼に帰してしまいました。
広大な寺地は現在の上野公園に転じ、


こうした理由で、
上野戦争で焼け残り、
第二次世界大戦の戦災もまぬがれたいくつかの古建築が、
上野公園内の各所に点在いるわけです。

「上野公園を訪れる人の大半は、
かつて寛永寺の境内だったことを知りません」
寛永寺の執事は言います。

2025年には、創建400周年(2025年)を迎えます。

本尊は、薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)
比叡山延暦寺の根本中堂のご本尊と同じく、
伝教大師最澄が自ら彫られたと伝えられています。

まず、不忍池辯天堂へ。

天海大僧正が琵琶湖竹生島(ちくぶしま)になぞらえて、
不忍池に中之島を築き、その地に建立されました。

現在のお堂は昭和33年に再建。

この階段を上り、お山へ。

清水観音堂。(きよみずかんのんどう)

国指定重要文化財。

京都東山の清水寺を模した舞台造りのお堂で、
御本尊も清水寺より恵心僧都(えしんそうず) 作の
千手観音(せんじゅかんのん) 像を迎え
秘仏としてお祀りしています。

                           上野の山に現存する、創建年時の明確な最古の建造物です。

時鐘堂

寛文9年(1669)に設けられたこの鐘は、
現在も正午と朝夕6時の計3回、毎日時を告げています。
(現在の鐘は天明七年(1787)に改鋳されたもの。)
                                      
上野大仏

江戸時代初期に建立され、
幕末までにも火災や地震に度々遭い、
関東大震災で頭部が落下するまでは
像高約6メートルの釈迦如来坐像でした。


震災後、頭部と胴体は再建に備えて寛永寺に保管されていましたが、
顔面部を除いて第二次世界大戦中の金属供出で持ち去られました。
大仏殿の跡地にはパゴダ(仏塔)が建立されています。
胴体を失った顔面は
「これ以上落ちない」という意味で
受験生らが祈願するようになり、
「合格大仏」と呼ばれています。

上野東照宮

日光、久能山と並び、
三大東照宮と言われています。

徳川家康(東照大権現)・徳川吉宗・徳川慶喜を祀ります。
社伝によれば、元和2年(1616年)、
危篤の家康から自分の魂が末永く鎮まる所を作ってほしいと
藤堂高虎と天海に遺言したといいます。
1627年、寛永寺の境内に創建された神社「東照社」が始まり。
現在の社殿は慶安4年(1651)に
三代将軍の徳川家光公によって建て替えられたもので、
日光東照宮まではお参りに行けない江戸の人々のために
豪華な社殿を建てたと言われています。

寛永寺の建物の多くが焼失した上野戦争でも火の手が及ばず、
関東大震災でも倒れず、
第二次世界大戦中に社殿のすぐ裏に投下された爆弾も
不発弾であったというように、
強運に恵まれた神社。
江戸初期に建立された社殿がこれだけの災害を免れて現在に至るのは、
奇跡的であると言われています。
そのため強運の神様として、
また家康を祭神としていることから
出世、勝利、健康長寿の神様として信仰されています。

大石鳥居

唐門

その手前両側には、
徳川御三家と諸大名から寄進・奉納された
48基の銅灯籠が立っています。

神楽殿

金色殿

五重塔

国指定重要文化財。
寛永8年(1631)に初建されたこの塔は、
もとは東照宮所属でしたが、
明治の神仏分離令により、
当時上野山全域を寺地としていた寛永寺の所属となりました。
しかし寛永寺は上野戦争により焼失し、
寺地の大半が公園用地として没収されて、
上野東照宮から離れた地で再建されたため、
五重塔は文化財管理の必要から東京都に譲渡されました。
現在は上野動物園内に位置しますが、


五重塔の正面は東照宮の参道に面しています。
高さは地上から36m。

清水観音堂といい、上野東照宮といい、
上野は何度も訪れているのに、
存在さえも知りませんでした。

その上野動物園

随分行ってませんね。

郵便ポストもパンダ。

正岡子規は、野球好きで知られています。
ポジションは捕手でした。

忘れじの塔

昭和20年(1945)の「東京大空襲」の犠牲者を悼む慰霊碑で、
平成17年(2005)に海老名香葉子さん(故林家三平の夫人)によって
建立されました。
東京大空襲を忘れないため、同じ悲劇が起こらないよう、願いをこめて、
大空襲で亡くなったご家族がモチーフになっている平和祈念母子像・時計塔です。

国立博物館を右方向に歩くと、

開山堂(両大師) 

東叡山の開山である慈眼大師(じげんだいし) 天海大僧正をお祀りしているお堂です。
天海僧正が尊崇していた
慈惠大師良源(じえだいしりょうげん) 大僧正もお祀りしているところから、
一般に両大師と呼ばれ、庶民に信仰されてきました。


初建は正保元年(1644)ですが、現在のお堂は平成5年に再建されたものです。

                                            輪王殿

旧本坊表門を正門とする輪王殿は、
多目的な会館として建築されました。

このあたりには、ものすごく大きい建造物があります。

さて、寛永寺へ。

国立博物館沿いの道を
かなり歩いたところに寛永寺があります。

冒頭に揚げた全景図は、
縮尺を無視していますので、
すぐ近くにあるように見えますが、
実際は、かなり遠い。

ここが正門。

守護神のような猫。

根本中堂

根本中堂といえば比叡山延暦寺。
それを東の比叡山と云われた東叡山にも建設。
今の東京国立博物館の敷地に本坊があり、
国立博物館前の大噴水のあたりにありましたが、


現在の根本中堂は、
明治12年に川越喜多院の本地堂を移築し再建されたものです。

中は撮影禁止。
そこで、拝借した写真。 

御本尊は、伝教大師最澄上人の御自刻とされる
薬師瑠璃光如来像(国指定重要文化財)を秘仏としてお祀りしております。

根本中堂の勅額「瑠璃殿」

瑠璃殿とは、東方浄瑠璃浄土の教主である
薬師如来を御本尊とする伽藍をあらわしています。
勅額「瑠璃殿」は、根本中堂が落慶した際に賜った東山天皇の御宸筆です。
上野戦争、東京大空襲など幾多の戦争中に
伝教大師作の本尊薬師如来とともに無事運び出されているのは奇跡です。

歴代徳川将軍の霊廟

徳川綱吉墓所の宝塔

十五代将軍慶喜が謹慎した部屋「葵の間」

銅鍾

歴史を辿る旅でした。

「江戸城内并芝上野山内其他御成絵図」

現在の寛永寺の伽藍と東京国立博物館の地図

 


小説『出版禁止 いやしの村滞在記』

2023年12月26日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

「出版禁止」(2014)、「掲載禁止」(2015)、「放送禁止」(2016)
などの禁止シリーズの長江俊和の小説。
「出版禁止 死刑囚の歌」(2018)に続く
出版禁止ものの第3作にあたる。

本書は、10年前に自費で出版された私家版の復刻版という体裁を取っている。
もちろん創作上の体裁。

「いやしの村」という奈良県にある
共同体をルポライターが取材で訪れる。
世の中で悩み苦しみ、傷ついた人々を迎え、
心に癒しを与え、再生するのが目的だと標榜するが、
妙な噂が飛び交っている。
というのは、この村の人々は
呪いによって殺人をする集団だというのだ。

ルポライターが村人に取材すると、
会社を奪われた者、家族を奪われた人、
交際相手に心身共に狂わされた女性、
職場を追われた元商社マン、
ネットに裸の写真をさらされた元教師など、
恨みと憎しみに耐えかねて、
この村に救いを求めて来た人々で、
基本的に良い人たちの集まりだ。
主宰者のキノミヤという男がなかなかの人物で、
村人の再生に全てを懸けているように見える。

と同時にルポライターは、
近隣に存在したという、
酒内(しゅない)村についても取材の矛先を向ける。
奈良時代に存在した呪禁師(じゅごんじ)の子孫で、
百年祭という儀式では、
人身御供が殺され、
その死骸が49に分割されて、
湖の周囲にある神木に                              打ちつけられるという。
目的は呪いで人を殺すためで、
ルポライターは、
いやしの村が実は酒内村の末裔ではないかと疑う。
しかも、半年前にその百年祭が行われた痕跡が
湖の周辺に残されていた。
死体遺棄事件だ。

ルポライターの取材では、
村人は善良な人々で、
悪い噂を裏付ける様子はうかがえない。
実はルポライターは、
高校時代の友人の女性が死んだのも、
この村を訪れて、秘密を知ってしまったために
呪いで殺されたのではないかとの疑いを抱いていた。


素数蝉の理
無垢の民
まぼろしの村
まえがき

という構成で綴られるルポライターの記録。
果たして、村の実態は、噂のようなものなのか、
それとも、本当のいやしを目的とした村なのか。

長江俊和は、だましのテクニックを駆使する人で、
今回も、身構えて読んだが、
すっかり騙された。

以下、読む予定のある人は
読まないで下さい。

だましの手法は2つ。
一つは、ルポは、1人の人物によるものではなく、
男と女の2人の人物によるものであること。
一人の人物の一貫したルポという誤誘導がなされる。

もう一つは、
記述の順番が実は時系列的に逆になっていることで、
まえがき
まぼろしの村
無垢の民
素数蝉の理
あとがき
が正しい順番。
わざと逆に記述することで
読者を誤誘導しているのだ。

というわけで、
最後に至って、
前のページをめくる作業をすることになる。
そもそも、取材をする動機を与えた青木という人物が、
キノミヤと同一人物だったなど、
途中で気づかないものか。
確かめるために、
何度かページをめくったが、
面倒なので、
途中でやめた。

そういう小説。


映画『PERFECT DAYS』

2023年12月25日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース
役所広司がセッションした日本映画。
渋谷でトイレ清掃員として働く平山という中年男の
静かに淡々とした毎日を描く。

東京スカイツリーが見える押上あたりの木造アパート
朝、近所の老女が道を掃除するほうきの音で目覚め、
せんべい布団を畳んで片付け、
歯をみがき、顔を洗い、
口髭をはさみで整え、電気カミソリで髭を剃り、
小さな鉢のささやかな植木に水をやり、
作業服に着替え、
入口に置いた鍵やカメラやガラケーや小銭を手にし、
ドアを開けると、空を見上げて微笑み、
アパートの前の自動販売機で缶コーヒーを買い、
道具を積んだ軽自動車で現場に向かう。
選んだカセットから流れるのは、
遥か昔の洋楽
この日はザ・アニマルズの「朝日の当たる家」。
ルー・リードの「パーフェクト・デイ」が流れることもある。
いつもの道路、いつもの信号、いつもの高速、いつもの建物・・・
現場に着くと、道具を取り出して、
トイレに入り、ゴミを拾い、
床を拭き、便器を清掃する。
裏側を鏡で点検し、
トイレットペーパーを交換し、
鏡を磨く。
ていねいなていねいな仕事。
同僚の若い男は、
「平山さんはやり過ぎですよ。
どうせ、汚されるんだから」
と言うが、意に介さない。


一箇所のトイレの掃除を終えると、
次のトイレへ。
午前の仕事が終わると、
コンビニで買ったサンドイッチと飲み物の昼食を
神社のベンチで取り、
木漏れ日の写真を古いフィルムカメラで撮影する。
そうやって17カ所のトイレを回って、
アパートに帰ると、
時間を見計らって銭湯に出かけ、
一番風呂に入って、身体を流す。
夕方になり、自転車で隅田川を渡り、
浅草の地下鉄の通路にある居酒屋で夕食を取る。
常連なので、坐れば、いつもの酒とつまみが出て来る。
暗くなってアパートに帰ると、
布団に寝ころんで、
古本屋で買った文庫本を読み、
眠くなると、電気を消して寝る。

そして、翌朝、老女の持つほうきの音で目覚め・・・

という日常が繰り返し淡々と描かれる。
その間、役所広司は一言も発しない。
テレビもパソコンもない生活だ。

休みの日には、作業服や下着をコインランドリーで洗濯し、
撮った写真のフィルムを現像に出し、
前に預けたフィルムのプリントを受け取る。
アパートの押し入れには、
木漏れ日の写真が
ブリキ缶に入って納められている。
古本屋に寄って、
100円の文庫本の中から
昔の小説本を購入する。
そして、近所の小料理屋で夕食。
どうやら、そこのママに気があるようだ。

大都会の隅に暮らす、
一人の独身男の日常を描いて、
それが美しい、と感じさせられる。
変化の少ない変哲のない日常だが、
平山の一日が満ち足りたものとなっているのが
その表情から分かる。
平山にとって、
毎日は「PERFECT DAYS」(複数形)なのだ。

ささやかな日常の中の変化。
手洗いの隙間にはさまっていた紙に書かれたゲームに記入し、
誰とも分からない人物との交流。
トイレにこもっていた男児と共に母親を探していると、
母親が現れ、
平山と手をつないでいた男児の手を
さりげなくアルコール消毒する。
同僚の連れてきたガールズバーの女性に
カセットを持ち去られ、
後日返しに来た女性に頬にキスされたりする。
一番の変化は、
家出したが十数年ぶりに訪ねて来て、
泊まっていったこと。
姪は伯父である平山と心のつながりを持っており、
トイレ掃除に付き合う。
夜、平山の妹が訪ねて来て、
姪を連れ戻す。
ここで、平山が裕福な家庭で育ち、
父親との相剋で家を出たことを匂わせる。

小料理屋のママを元夫が訪ねてきたのを目撃、
橋の下で元夫と交流。
元夫はガンで死期を悟り、
元妻に謝罪あるいは感謝を述べたくて来たことを知る。
二人で影踏みに興ずる。

というわけで、一庶民の日常を淡々と描いた作品だが、
どんな作り物の話よりもドラマを感じさせる

私はテレビ東京の「家、ついて行っていいですか」
をよく見るが、
あそこに描かれる、
小市民の日常と重なる。
どんな人にもドラマがあり、
そのドラマを胸に秘めて
誰にも言わずに生きているのだ。
それは美しく、かつ完璧だ。

主人公の名前「平山」は、
ヴェンダースが敬愛する小津安二郎
「東京物語」や「秋刀魚の味」に出て来る主人公と同じ名前。
それだけでリスペクトが感じられる。
隅田川にかかる桜橋や
代々木八幡神社や浅草駅地下鉄銀座線の
昭和の匂いぷんぷんの商店街など、
知っている光景が出て来るのも嬉しかった
石川さゆりの歌う日本語の「朝日のあたる家」には、
泣きそうになった。

平山が掃除する公衆トイレは、
渋谷区にある、隈研吾や安藤忠雄といった
世界的な建築家がデザインしたおしゃれな公衆トイレ。
日本財団のプロジェクト「THE TOKTO TOILET」が手掛けたものだ。
このプロジェクトの一環として製作されたのが本作。
ドイツ人の撮った東京の住人の生活が光り輝く。
秀作


寡黙な演技で終始する役所広司が映画を支え、
カンヌ国際映画祭男優賞受賞は当然の出来栄え。

5段階評価の「4.5」

拡大上映中。