先日のこと。
床に入ってカミさんが、めまいがすると言い出した。
体を起こすとめまいは止まるが、
また横になると、部屋がグルグル回るという。
しばらく様子を見ていたが、
改善されないので、
ソファーに横にならせ、
頭のところを高くして寝るようにした。
夜中、様子を見ると、
すやすやと眠っている。
朝、起きると、
いつもの寝床に横になっている。
その後、症状が出なくなったので、移ったという。
そこで、パソコンに
「横になるとめまいが」
と入れて検索すると、
同じ症例が山ほど出てきた。
「仰向けに寝たら天井が回った」
「寝返りを打ったらグラグラ揺れる感じがした」
「じっと寝ていたらすぐに治まったが,起きたらまた回った」、
時には吐き気を伴い、救急車で病院を受診する方も少なくないという。
どうやら、この症状、
「良性発作性頭位めまい症」というらしい。
耳は外側から、外耳、中耳、内耳に分けられ、
いちばん奥にある内耳には、
聴覚と平衡感覚の情報を電気信号に変えて脳に送るという働きがある。
内耳の卵形嚢(らんけいのう)は、
垂直方向を感知する器官で、
この中には炭酸カルシウムでできた耳石(じせき)があり、
頭の傾きに応じて耳石が動くと、
「傾いている」という信号が脳に送られる。
耳石は常に代謝していて、
はがれた細かいカスが卵形嚢にたまっていく。
これは浮遊耳石ともいわれ、
何かの拍子で三半規管の中に入り込んでしまうことがある。
すると、三半規管内のリンパ液の流れが誘発され、
実際には頭は動いていないのに、
内耳から「動いている」という信号が脳に送られる。
これにより生じるめまいが、
良性発作性頭位めまい症。
症状にはさまざまなパターンがあり、
浮遊耳石が三半規管のどこに入り込むか、
または入り込んだ後の動きによって、
めまいを誘発する動きやめまいの継続時間が異なる。
最も入り込みやすいのは後半規管で、
これは、人が横たわると後半規管が卵形嚢よりも低くなるため。
浮遊耳石の動きは、
①規管内を浮遊する、
②規管内の揺れを察知するクプラに付着する、
の2つに大別される。
浮遊する場合は、
浮遊耳石がリンパ液に沈むまでの10~20秒間ほどで
めまいが治まる。
クプラに付着した場合、
クプラには粘り気があり、
付着した浮遊耳石はすぐにはとれないため、
めまいの継続時間が長くなる。
浮遊耳石同士がくっついて少し大きな塊になっていると、
その重みでクプラがしなったまま
「揺れている」という信号が送り続けられ、
めまいが1日中続くことにもなる。
良性発作性頭位めまい症になりやすいのは、
長時間、頭を動かさず同じ姿勢でいる人。
低い枕で寝ている人、寝返りの回数が少ない人も、
なりやすいと考えられる。
統計では男性よりも女性が多く、
高齢者や女性の方がなりやすいのは、
運動不足や加齢による退行変性(カルシウム不足)や
ホルモンの影響などが関与しているといわれている。
良性発作性頭位めまい症と診断した場合に、
一番初めに行う治療が、浮遊耳石置換法(頭位治療)。
患者の頭や体を動かして、
三半規管に入った耳石を耳石器に戻す治療。
たまっていた耳石が三半規管から出てしまえば、
もう発作は起こらない。
良性発作性頭位めまい症の7~8割は、
この治療でよくなる。
予防するポイントは、
耳石を三半規管にためないこと。
そのために、日常生活では、次のようなことに注意する。
①同じ方向で横向きに寝ない
いつも同じ向きで頭を横にして寝ていると、
下側の耳の三半規管に耳石がたまりやすくなる。
②寝返り運動を行う
頭をよく動かすと耳石が1か所にたまりにくくなる。
そこで、起床後と就寝前に寝床で、
次のような「寝返り運動」を行う。
まず左向きで10秒間、
ゆっくりあおむけになって10秒間、
右向きで10秒間、
あおむけに戻って10秒間数える。
これを1 回とし、10回程度続ける。
③頭の位置を高くして寝る
寝るときに頭を少し高くすると、
耳石が三半規管に入りにくくなる。
枕を高くしたり、上半身に傾斜をつけたりすれば
予防に役立つ。
ヒッチコックに「めまい」という名作があるが、
これは、刑事が犯人を追っている間に、
屋根の上から同僚が落下するのを目撃したために起こった
心因性の高所恐怖症によるもので、
刑事が最後に追跡者を追い詰めて、
教会の鐘楼に登り、最後に症状がなくなる。
ちなみに、
「めまい」は公開当時、「駄作」とけなされたが、
その後、評価を高め、
ヒッチコック作品の中でもトップクラスの傑作との評価を得ている。
しかしヒッチコックはこの作品を「失敗作」と語っている。
当初ヒロイン役にと構想していたヴェラ・マイルズが妊娠のため降板し、
代わって起用したキム・ノヴァクが、監督には気に入らなかったらしい。
キム・ノヴァクの妖艶な美しさに、
子供心にドキドキしたことを覚えている。