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空飛ぶ自由人・2

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映画『エミリア・ペレス』

2025年03月29日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

フランス発祥のスペイン語映画でありながら、
ゴールデングローブ賞では最多4部門を受賞、
アカデミー賞でも作品賞、監督賞を含む
最多12部門で13ノミネートを果たした映画が
ようやく日本公開。
相当風変りの作品のようで、
覚悟して出かけた。

優秀な弁護士でありながら、
無能なボスにこき使われて、
不遇の日々を送っていた弁護士のリタ。
そのリタが、顔に袋をかぶせられて拉致され、
袋を取ると、一人の男が待っていた。
その男は、メキシコ全土を恐怖に陥れていた
麻薬カルテルの頭、マニタスだった。
そして、マニタスの要望は、
女性になりたい、という驚くべきもの。
莫大な報酬を提示されて、
リタは性別適合手術をする優秀な医者を斡旋する。
潤沢な資金で手術は成功し、
マニクスの死亡が偽装され、
マニクスは新たに女性として生きていくことになる。

4年後、ロンドンのレストランで、
リタは女性となったマニタスに再会する。
マニタスはエミリア・ペレスと名乗った。


秘密を握っている自分を殺すのではないかと
恐れたリタだったが、
エミリアの新たな要望は、
残して来た子供たちと暮らしたい、
その手続きをしてくれというものだった。
リタの手配でメキシコに戻ったエミリアは、
マニタスの従姉妹と偽って、
元妻と子ども二人を呼び寄せ、
一緒に暮らすことになる。

麻薬王だった頃に犯した罪に心を痛めるエミリアは、
犯罪に巻き込まれ、行方不明になった人々の家族を救うために
NPOを興し、リタと共に慈善活動を始める。


昔の家族と一緒に暮らし、
尊敬を集めるようになったエミリアは幸福だったが、
元妻が再婚して子どもを連れて家を出ると言いだしたことから、
破綻が始まり・・・

偉丈夫のマニタスがなぜ女性になりたくなったのかは不明だが、
男性から女性に転換し、
外見は女性でも、
内面は男性という
存在自体がドラマチックだ。
そして、過去の罪滅ぼしをしようとするのも矛盾。
実は、私はこういう話は好物だ。
秘密を抱えた人間は魅力的だからだ。
息子から「パパの匂いがする」などと言われて、
喜んでいいのか、苦しんでいいのか
戸惑うシーンなど、胸に迫る。

一体、この話、どこに着地するのか、
と先が見えない展開に
画面に吸いつけられる。

ストーリーが斬新なだけでなく、
この映画、ミュージカルの形式を取る。
しかも、歌や踊りに移る手法がユニーク
登場人物の内面の吐露として、
変幻自在な変化をする。
ああ、ミュージカルでこんなやり方もあったか
と驚きと共に納得。
特に、エミリアが団体の代表としてスピーチをする時、
リタが「結局、根本は何も変わっていない」と
偽善者たちへの心の叫びを
歌と踊りで爆発させる「El Mal」のシーンは秀逸。

エミリアを演ずるカルラ・ソフィア・ガスコンは、
トランスジェンダー女性であることを公表し、
性別適合手術を受けた人。


この人のための役と言えるかもしれない。
しかも、男性の時と女性の時の両方を演ずる。
ああいう立派なガタイの女性が実在する外国人だから
成り立つ。

リタを演ずるゾーイ・サルダナは、


「アバター」 (2009) より
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(2014) の方が印象深いが、


順当にアカデミー賞助演女優賞を受賞。


妻を演ずるセレーナ・ゴメスらと共に、
カンヌ国際映画祭で
4人まとめて、アンサンブルで女優賞を受賞。

監督のジャック・オーディアールは、
カンヌ国際映画祭パルムドール〈最高賞〉を受賞した
「ディーパンの闘い」(2016)の監督と知れば、納得する。


絵作りのセンスは抜群。

特殊なテーマをクライム、コメディ、ミュージカルなど
様々なジャンルを交えて描いた、奥の深い作品だ。

ところで、アカデミー賞に12部門13ノミネートされていながら
結果は2賞(助演女優賞、歌曲賞)だけの受賞になったのは、
ノミネート発表の直後、
これからら会員が投票にかかる、という、
最悪のタイミングでの、
ガスコンのSNS上での不適切発言が原因らしい。
イスラム批判に始まって、
ブラック・ライヴズ・マター批判、
フェミニズム批判、ワクチン陰謀論、
スペイン政府首相批判、アカデミー賞批判(!)まで多岐にわたり、
この結果、「エミリア・ペレス」は賞獲りレースから脱落した、
と言われている。

ただ、フランス映画界最高の栄誉であるセザール賞では、
「エミリア・ペレス」が最多の7冠を獲得している。

5 段階評価の「4」

拡大上映中。

 



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1 コメント

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さすがアカデミー作品賞候補... (onscreen)
2025-04-01 05:48:47
エグいけど目が離せない...
そんな映画でしたね!
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