空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

2022年の重大ニュース

2022年12月31日 23時00分00秒 | 様々な話題

ついに、今年も今日で終わり

コロナは今年も継続。
3年も続くとは、誰も思っていなかったでしょう。

従って、今年も海外旅行はゼロ
「空飛ぶ自由人」というタイトルが泣きますね。
娘の方は、一足早く海外旅行を再開して、
もうソウルに2度飛びました。

で、恒例の年間重大ニュース
読売新聞の結果を借用しました。


まず、国内の重大ニュース。

1位 
安倍元首相が撃たれ死亡、9月に国葬

2位 
サッカーW杯で日本代表熱戦 東京五輪、日本は史上最多58メダル

3位 
知床観光船沈没事故

4位 
大谷翔平、ルース以来の2桁勝利2桁本塁打

5位 
ヤクルト村上が56号本塁打、三冠王

6位 
32年ぶり円安、1ドル=150円突破

7位 
北京五輪、日本勢のメダル冬季最多

8位 
旧統一教会が政治問題化、文科相が質問権行使

9位 
藤井聡太竜王が最年少五冠

10位 
新型コロナ感染者、1日あたり10万人超え

 

11位 
物価高騰、商品値上げ相次ぐ

12位 
改正民法施行、成人年齢18歳に

13位 
五輪汚職、組織委元理事ら逮捕

14位 
3歳女児、通園バスに取り残され死亡

15位 
ロッテ・佐々木朗希が完全試合

16位 
北ミサイル発射相次ぐ

17位 
山口・阿武町が4630万円誤給付

18位 
夏の甲子園で仙台育英優勝、東北勢初

19位 
アントニオ猪木さん死去 

20位 
宮城・福島で震度6強、新幹線脱線

 

21位 
オリックス26年ぶり日本一

22位 
作家・元都知事の石原慎太郎さん死去

23位 
沖縄本土復帰50年

24位 
大学入学共通テスト、問題流出

25位 
辞任ドミノ、閣僚更迭相次ぐ

26位 

羽生結弦、プロ転向を表明

27位 
iPS細胞で慶大が世界初の脊髄治療

28位 
KDDI、全国で通信障害

29位 
「ドライブ・マイ・カー」が米アカデミー賞

30位 
北京パラ、日本勢メダル7個

 
                                        
続いて、海外の重大ニュース

1位 
ロシア、ウクライナ侵略開始

2位 
エリザベス英女王死去

3位 
ソウル・梨泰院で雑踏事故 

4位 
W杯カタール大会開幕

5位 
新型コロナ感染、6億人突破

6位 
原油急騰、100ドル突破

7位 
中国で習近平総書記の3期目政権発足

8位 
マスク氏、ツイッター社買収完了

9位 
世界人口80億人、国連発表

10位 
上海市が都市封鎖開始

 

11位 
北欧2か国、NATOに加盟申請

12位 
WHO、サル痘感染で緊急事態宣言

13位 
元ソ連大統領のゴルバチョフ氏死去

14位 
ウクライナ人権団体などにノーベル平和賞

15位 
尹錫悦・韓国大統領就任 

16位 
ジャッジがア・リーグ新の62号本塁打 

17位 
ペロシ米下院議長が台湾訪問 

18位 
米FRB、ゼロ金利政策を解除 

19位 
米中間選挙、野党・共和党が下院勝利

20位 
トランプ氏、次期米大統領選出馬へ

 

21位 
トンガで大規模噴火 

22位 
米国で銃乱射事件相次ぐ 

23位 
スナク英首相就任、首相交代相次ぐ

24位 
核兵器禁止条約、初の締約国会議 

25位 
米最高裁「中絶権利」認めず

26位 
中国で旅客機墜落、132人死亡 

27位 
中国の江沢民元共産党総書記死去

28位 
イランで大規模な反政府抗議デモ

29位 
露大統領、サハリン2の資産移譲を命じる 

30位 
米英仏中露「核戦争せず」

 


小説『カインの傲慢』

2022年12月30日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

中山七里による
警察医療ミステリー、刑事犬養隼人シリーズ第5弾

朝の犬の散歩に出かけた定年退職者によって、
雑木林に埋められた少年の死体が発見される。
異常だったのは、その遺体から臓器が奪われていたことだった。

身元確認を急ぐが、
近隣の中学高校からは該当する人物が特定されない。
行方不明者からも該当者が見つからない。
歯医者ヘの紹介も無駄だった。

やがて判明したのは、
死者は中国人の少年で、
10日ほど前に観光ビザで、一週間の予定で入国していた。
周という男が付き添っていたらしい。
事情を知るために、
犬養の部下、高千穂明日香が中国に飛ぶ。
そこで見たものは、
極貧の村で、
息子を養子縁組で日本に送った母親だった。

そして、2番目の死者が出る。
大田区羽田の路上で買い物帰りと見られる少年の死体が発見され、
その腹には縫合痕があり、
肝臓の3分の1が失われていた。
父母は貧困の中にいて、
借金があり、
その借金150万円が完済されていた。

一連の経過から判明したのは、
中国の少年は、養子縁組という名目で日本に送られたが、
それは臓器を売るためであり、
羽田で発見された日本の少年も臓器を販売して
親の借金を返していたという事実だった。

二人とも臓器の切除は熟練の医師がしたものだが、
縫合は、稚拙な技術の持ち主の仕業だった。

更に、今度は殺人事件が起こる。
中国人少年の件で事情聴取した不良で、
首を絞められての死だが、
その腹には、真新しい縫合痕があった。
不良は、賭けマージャンで借金があったが、
それが最近完済していた。
しかも「良い金づるをつかんだ」と言っていたという。

少年の葬儀を見にきた青年に職務質問をした結果、
その青年が中国人医学留学生で、
東朋大学で学んでいるという。
被害少年の写真を見た時の反応から、
犬養は、この青年が少年たちの腹の縫合をしたと目星をつける。
しかし、青年は証言する前に、殺されてしまう。
不良の時と同じ手口の扼殺だ。

更なる事件が起こる。
交通事故で脳死になった少年が、
病院に運ばれた際、
その死体が行方不明になったのだ。
ほどなく死体は発見されるが、
やはり内臓が取り出されていた。
その病院は東朋大附属病院。

事件の鍵はこの病院にあると見た犬養は、
医学部長に会い、
留学生の推薦状に、ある人物の名前が記載されていることに衝撃を受ける。

こうして、事件の余波は、高名な財界トップにまで波及していく・・・

というわけで、臓器移植、臓器売買にまつわる犯罪事件の話。                
中国に行った明日香が中国の臓器売買について把握する内容がすさまじい。

中国では2005年の段階で年間1万2千件の臓器移植を行っており、
臓器移植大国だという。
日本と違い、臓器提供者が多いからだ。
その供給源は死刑囚
中国では、死刑になる犯罪が多く、処刑数も莫大。
事前に死刑囚の承諾を得て、執行時に臓器を摘出する。
臓器提供死刑囚の遺族には、 謝礼が支払われる。
自国では移植手術のかなわない患者が、高い費用を払って中国にやって来る。
そして、臓器ブローカーが暗躍し、
その一つとして、日本に養子縁組という名目で少年を送り込み、
臓器を取って帰国させる方法がある。
養子縁組に名を借りた人身売買
その根底にあるのは貧困だ。

日本での事件も、
根底にあるのは貧困。
売るものがないから、自分の体を売るのだという。

刑事の述懐。

「貧困は犯罪の巣窟だって話があるが、
こいつはその典型みたいなもんだ。
貧困を犯罪を生むが、
同時に犯罪につけ込まれる。
生活のために売るものがなきゃ、
本来売っちゃいけないものまで売らなきゃならなくなる」

明日香は反論する。

「それでも貧困家庭に生まれ育った全員が非行に走る訳じゃないんです。
貧困はあくまで外部要因の一つで、
少年を非行に走らせる直接の原因は家族です」
「ふた親揃っていても孤独だったんだと思います。
中学生では返しきれないような借金を背負っても、
誰にも相談できない。
本来道を示してくれるはずの大人が無軌道にその日暮らしをしている。
これじゃあ子供が道を誤っても本人を責められません」

貧困の結果自分の体を売る少年がいる一方で、
それを買う金持ちがいる。

そのことに犬養も明日香も義憤を燃やす。
その対象がどんな大物であろうと。

「わたしたちには捜査権が与えられています。
逮捕権も与えられています。
そのわたしたちが困難だとか
相手が経済界の重鎮だとかの理由で挫けてしまったら、
死んだ子供たちに申し開きができません。
与えられた武器は意味のないものになってしまう」

経済界の重鎮と犬養との対決は、この小説の白眉だ。

「先刻から聞いていれば、
あなたは貧乏人の臓器提供にえらく同情的だが、
いやしくも人間の身体いわんや生命はカネで売買できるものではないと
信じているのかね。
もうしそうなら、見識不足と言うより方にない」
「命は売買できないと考えていることが見識不足ですか」
「昨今は経済的格差が教育の格差を生むようになってきたらしいが、
同様に生命の価値すらもランクづけするのですよ。
貧乏人は短命になり、
金持ちは長命になる。
金持ちは資産を生む者でもあるから金銭的な存在価値がある。
対して、貧乏人が提供できるのは安価な労働力しかない。
もっと貧しい者は己の肉体を差し出すしかない。
富裕層と呼ばれる者たちはその供給に応えて
彼らの肉体及び健康を買う。
何のことはない、
需給バランスの問題だけなのですよ」

臓器ブローカーの周を追究する手段として、
中国に送還して裁いてもらう、というのを持ち出すと、
周は震え上がる。
中国での刑罰の苛烈さを知っているからだ。

その周は、臓器売買に対して何の罪意識も感じていない。

「彼らは無事に摘出手術を終えて帰国できたのだ。
報酬も得られて、彼らは幸せそうだった」
「臓器の斡旋は提供する側もされる側も幸福になれるシステムだ。
貧乏だからなけなしの臓器を提供し、
それを金持ちが高価で買い取る。
いったいどこに不都合がある。
ただ法整備が遅れているだけに過ぎん」

そして、周のようなブローカーの逮捕の結果は、貧乏人に及ぶと言う。

「俺たちブローカーを捕まえれば、
その間臓器を斡旋する者は不在になる。
いいかい、公認だろうがヤミだろうが、
ブローカーというのは市場の安定供給に寄与している。
今まで臓器が高値で取引できたのは、
俺たちブローカーが仲介して値崩れを抑えていたからだ。
俺たちがいなくなれば安定していた市場は必ずダンピングを起こす。
当然だ。この国には臓器を売りたい貧乏人がまだ山ほどいるからな」
「これから先、ヤミで取引される臓器の価格は暴落して、
貧困家庭は肝臓一個売ったくらいじゃ
にっちもさっちもいかなくなる。
それもこれも日本の刑事。
全部あんたの責任だ」

題名の「カイン」とは、
人類始祖のアダムとエバの息子の名前。
カインは弟アベルを殺し、
人類最初の殺人者となった。
その結果、神から不死を与えられた、
と著者は書くが、はて、聖書にはそんな記述はないが。

犬養と明日香が
少年の将来を奪った犯罪に、特に熱くなるのは分かる。

ラストで、なぜ被害者が少年ばかりだったかが明らかになり、
犬養は重い十字架を背負うことになる。
臓器売買という重過ぎる題材を扱った本書、
読みごたえがあった。

香が中国現地の新聞記者と会った時の会話。

「あの、安河内さん、実はわたし、
捜査一課に配属されてやっと2年なんです」
「ほう」
「だから上司がやっているような
腹の探り合いとか以心伝心とか、
ホント苦手なんです。
もし交換条件みたいなものがあるのなら、
いっそはっきり言ってくれた方が有り難いです」
「ストレートな人ですねえ」
「まだ変化球が投げられないだけです」
「いやいや、いざという時の決め球は
やっぱり真っ直ぐですよ。
そういう人は嫌いじゃありません」

それにしても、中国の貧困県の有り様や
臓器売買の現状に、
中国という国の奥深い不気味さを思い知った。

なお、本シリーズの第4作、
「ドクター・デスの遺産」は、
2020年、綾野剛・北川景子共演で映画化された。

 


映画『ファイアー・オブ・ラブ 火山に人生を捧げた夫婦』

2022年12月29日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

フランス人火山学者、
モーリスとカティアのクラフト夫妻のドキュメンタリー。

2人の出会いから
世界中の火山を渡り歩き、
噴火活動の映像や写真を記録し、
雲仙普賢岳の火砕流で
夫婦共々命を落としてしまうまでを
驚異的な映像とともに綴る夫婦の愛の軌跡。
火山を捉えた圧巻の映像と、
それと重なるような二人の生き様を撮った奇跡のような作品。

噴き出し、溶け出す溶岩、
周辺を呑み込む火山灰、転がる火山弾、
間近で目撃する火山活動・・・
溶岩の赤が鮮烈でインパクトがある。
まさしく呑み込まれるような映像体験だ。

そして火山学者夫婦の姿がすごい。
噴火口の間近に行って観察したり、
吹き出す溶岩に恐れず近づいていき、
溶岩を団子のように丸めたりする。
酸性の湖に中古のボートで入っていく。
まさに、火山に取りつかれた狂気の学者の姿だ。
彼らは「平穏で長く生きるより、激しく生き急ぎたい」と言う。
本当に火山のように生きた二人だった。

その究極が普賢岳だった。
雲仙普賢岳の噴火を観察するために
予定を変更して来日。
これまで写真でしか火砕流を撮っていなかった夫妻は
普賢岳でカメラを回す。
そして1991年6月3日、
噴火を撮影している最中に、
火砕流に襲われ、
同行していたアメリカ地質調査所の学者や
マスコミ関係者、消防関係者ら41名とともに死亡した。
ご遺体は並んでいたという。
火山のためならいつ命を落としても構わないと言う
言葉通りの最後だった。

この火砕流の映像がすさまじい。

生涯で足を運び調査した火山の数は184にもなる。
彼らの活動は、多くの人を救った。
1988年にはインドネシアのマキアン島の
キシ・ベシ火山が噴火する可能性があることを警告し、
政府はその警告を受け入れて
18000人の全島民を避難させている。
5日後の7月17日、キシ・ベシ火山は噴火し、
10の村が火山灰に埋まったが犠牲者は出なかった。

クラフト夫妻が遺した研究資料は、遺族が委託したフランスの機関が管理している。

監督はセーラ・ドーサ
作家で映画監督で女優のミランダ・ジュライのナレーションが絶妙。
今年1月のサンダンス映画祭でプレミア上映されると大きな話題となり、
ナショナル・ジオグラフィックが配信権を獲得。
ディズニープラスで11月11日から配信。 

NHKがフランスと国際共同制作したドキュメンタリードラマ
「カティアとモーリス~雲仙・普賢岳に挑んだ夫婦」でも描かれている。

 


東京のイルミネーション

2022年12月28日 23時00分00秒 | 様々な話題

恒例のイルミネーションの紹介。
今年は都内のイルミネーションに限定。
ぐずぐずしている間に、
終わってしまったものも含むのをご容赦下さい。

 

東京ミッドタウン「MIDTOWN CHRISTMAS 2022」

開催期間:11月17日~12月25日
アクセス:六本木駅より直結


六本木ヒルズ「Roppongi Hills Christmas 2022 」

開催期間:11月10日~12月25日
アクセス:六本木駅より直結


恵比寿ガーデンプレイス「Baccarat ETERNAL LIGHTS-歓びのかたち- 」

開催期間:11月12日~2023年1月9日
アクセス:恵比寿駅からスカイウォークを通り徒歩5 分


丸の内イルミネーション 2022 

開催期間:11月10日~2023年2月19日
アクセス:東京駅丸の内口から徒歩1 分


青の洞窟 SHIBUYA 2022 

開催期間:12月8日~12月25日
開催場所:渋谷公園通り 代々木公園ケヤキ並木(約800m)
アクセス:渋谷駅 ハチ公口、7 番出口から徒歩5 分
     原宿駅 表参道口から徒歩10分


表参道フェンディイルミネーション 2022 

開催期間:12月1日~12月29日
開催場所:神宮橋交差点 表参道交差点(約1.1km )
アクセス:JR原宿駅 表参道口から徒歩4 分
     東京メトロ表参道駅 A3出口から徒歩1 分

 

目黒川みんなのイルミネーション 2022 

開催期間:11月11日~2023年1月8日
開催場所:五反田ふれあい水辺広場および目黒川沿道
アクセス:JR「大崎」駅または「五反田」駅より徒歩6 分


東京ドームシティ「ウィンターイルミネーション」

開催期間:11月11日~2023年2月28日
アクセス:JR中央・総武線水道橋駅すぐ


東京タワー「TOKYO TOWER WINTER FANTASY 2022 ~Tokyo City Candles~」 

開催期間:11月30日~~12月25日
アクセス:地下鉄赤羽橋駅徒歩5 分

 

お台場イルミネーションYAKEI 

開催期間:通年
開催場所:デックス東京ビーチ3Fシーサイドデッキ
アクセス:ゆりかもめお台場海浜公園駅徒歩2 分


新宿サザンテラス・イルミネーション

開催期間:11月14日~2023年2月14日
アクセス:新宿駅南口から徒歩1 分


大井競馬場「TOKYO MEGA ILLUMI 2022-2023 」

開催期間:10月15日~2023年1月9日

アクセス:東京モノレール大井競馬場前駅徒歩2 分


よみうりランドジュエルミネーション 

開催期間:10月20日~2023年4月9日
アクセス:京王相模原線京王よみうりランド駅からゴンドラで5 ~10分


小説『棘の家』

2022年12月26日 23時00分00秒 | 書籍関係

 [書籍紹介] 

穂刈慎一は、中学2年のクラスを担当する教師。
クラス内でのいじめについて、
生徒の相談を受けても、穏便に対処するような
典型的な公立中学の教師だった。
妻の里美も元教師で、
娘の出産を契機に教師をやめた。
学校で35人の生徒の面倒を見、
家に帰ってからも2人の子どもの面倒を見ることに疲れたからだ。
もう一人の息子・駿も中学生で、
最近は、父親の教師という立場を軽視した発言をしている。

小学校6年生の娘・由佳が
学校の3階から飛び下りた
植え込みの上に落ちて命は助かったが、
内臓破裂と手足が骨折した重症だ。
原因はいじめ
いじめに遇っている同級生をかばったため、
今度はいじめの標的にされたという。

担当クラスでのいじめのみならず、
自分の家庭で、娘のいじめに気づかなかったことに
穂刈は愕然とする。

由佳の担任に会い、いじめ問題を追究すると、
及び腰の担任は認めようとしない。
学校のことなかれ主義と隠蔽体質は、
穂刈自身がよく知っている。
警察に被害届を出せば、
捜査に乗り出してくれるのは分かるが、
そうなったら、諸方面に大きな影響が出る。
しかし、娘に自殺までさせたいじめの女児の家庭を
許すことは出来ないと、里美は息まく。

そして、事件はマスコミの注目するところとなり、
ワイドショーのディレクターが接触して来る。
穂刈は、ディレクターに
いじめた女児の氏名をばらしてしまう。
その結果、いじめの張本人の女児の家庭が追究を受ける。
SNSで女児の名前がさらされ、
家の特定も受け、抗議電話が殺到する。
それは、穂刈たちが望んだ社会的制裁の範囲を越えていた。

そして、事件は急展開する。
いじめ首謀者の女児が殺されたのだ。
しかも、その容疑者として、
由佳の兄の駿が事情聴取を受ける。
すると、今度は穂刈の家庭がマスコミとSNSの攻撃を受けるようになる。
ことなかれ主義の校長は、
穂刈に自主的休暇を求める。

取り調べをしている刑事から聞き出したところでは、
駿の供述は二転三転しているという。
どうも誰かをかばっているようなのだ。
かばっているのは、里美か、由佳か。
家庭内に疑心暗鬼が横溢する・・・

という、いじめに原因を発した
自殺事件と殺人事件の軌跡を追う。

事件にからんでの学校の隠蔽体質や
マスコミの無責任な報道姿勢や
SNSでの悪意など、
現代を切り取る内容

そして、里美や駿、由佳の中にあるも噴出してくる。
事件が落着した後、この一家が元に戻れるかどうか、心配になる。

視聴率偏重のワイドショーの取材記者の兵頭、
駿の取り調べをする刑事の坂東など、
現実にいそうな、リアルな人物造形。
なにより、教師の自分と父親としての自分との板挟みに揺れる
穂刈自身に対する描写が大変ていねい。

題名に描かれた棘とは、
穂刈の家の庭に生える蕁麻(いらくさ) の棘のこと。


嚢(のう)に毒液があり、
触れた指に疼痛が走る。
野草の持つ毒を
家庭・家族が内包する毒に見立て、
それが何かの拍子に敗れて害を放つ姿を描いた作品。

中山七里の筆は大変読みやすくて一気読み。
ドラマ化か映画にすれば、良い作品になりそうだ。