空飛ぶ自由人・2

旅・映画・本 その他、人生を楽しくするもの、沢山

『海坂藩に吹く風』

2022年04月25日 23時00分00秒 | 日記

[書籍紹介]

海坂藩(うなさかはん)とは、
藤沢周平の時代小説に登場する架空の藩


「海」を「うな」と読むのは、
「大海原」と書いて「おおうなばら」と読むのを
想起してもらえば、納得してもらえるだろう。

藤沢によってこの藩のモデルについての明言はされなかったが、
藩や城下町、領国の風土の描写から、
藤沢の出身地を治めた庄内藩と
その城下町鶴岡がモチーフになっていると考えられている。

海坂という言葉について、
藤沢は、水平線が描くゆるやかな弧をそう呼ぶと聞いた記憶があるとし、
藤沢は、一時期俳句を投稿していた句誌『海坂』から
その名を借用し、作品の舞台として海坂藩の名を与えた。
この小藩を舞台にした一連の作品が
「海坂もの」と呼ばれることがある。
しかし、実際には「海坂藩」と舞台が明記されるのは、
海坂藩が初出した短編「暗殺の年輪」(1973年)や
隠し剣シリーズ(1976~80年)など
初期に著された短編作品と、
長編ではじめて「海坂藩」が明示された「蝉しぐれ」(1986年)
以後の作品のいくつかであり、
藩名が明示された作品はむしろ少ない。

2007年に、文藝春秋から出版された、
「海坂藩大全」上下2冊として、
「海坂もの」の短編集がまとめられている。


そこでは、「海坂もの」の基準が
①海坂藩、海坂と明記してある
②五間川が流れている
③色町として染川町がある
という3点が基準になっている。

収録作は、

上巻

暗殺の年輪 相模守は無害 唆す 潮田伝五郎置文
鬼気 竹光始末 遠方より来る 小川の辺 木綿触れ 小鶴

下巻


梅薫る 泣くな、けい 泣く母 山桜 報復 切腹
花のあと-以登女お物語 鷦鷯(みそさざい)
岡安家の犬 静かな木 偉丈夫 

海坂藩については、藤沢ファンの想いを刺激するものがあるらしく、

井上ひさしを始め、

「海坂もの」を読んで、

海坂藩の地図を独自に描く試みがなされている。

本書は、その「海坂藩」に題材を取った作品の解説はじめ、
多岐にわたる藤沢作品について、
海坂藩物、剣術物、女性が印象的な小説、
市井物、歴史小説、伝記といったジャンルごとに
魅力が語られる。

筆者の湯川豊氏は、文藝春秋に所属した編集者。

目次

第一章 海坂藩に吹く風
第二章 剣が閃くとき
第三章 つつましく、つややかにー武家の女たち
第四章 市井に生きる
第五章 歴史のなかの人間
第六章 伝記の達成

第二章 剣が閃くとき と、
一つの章建てがされているように、
藤沢作品の大きな柱として、
剣客ものがあり、
様々な秘剣が描かれ、描写も詳細をきわめる。
さぞ、剣術の鍛練をしたかと思うのだが、
ご遺族にお聞きしても、
藤沢に格別に剣道に身を入れた体験はないという。
つまり、作家の想像力が作り出したものと言うしかない。

また、藤沢の剣客小説には、
主だった剣客たちの流派が必ず書き込まれているが、
全て実在したものだという。
そして、あまり知られていない、
地味な流派を好んで選んでいるという。

第五章 歴史の中の人間 に、
信長、秀吉、家康の3人について
藤沢周平がどう見ていたかが書かれていて、興味深い。

藤沢周平は,初期の頃、信長に好意を持っていたが、
その時期は比較的短く、
信長から離れた理由として、
信長の殺戮を挙げている。
人間の持つ「白い根のような」狂気だとも書く。
ヒトラーやポル・ポトに似ているとまで。
秀吉の特徴は、説得と恫喝。
「蜜謀」における上杉謙信の後を継いだ二代目景勝の描写が興味深い。
軍師の直江兼続によって、
江戸城攻めを提案された景勝は拒絶して、こう言う。
「わしのつらをみろ。これが天下人のつらか」
そして、こう続ける。
「わしは太閤(秀吉)や内府(家康)のような、
腹黒の政治好きではない。
その器量もないが、
土台、天下人などというものには
さほど興味を持たぬ」

義を踏みにじる厚顔の男、

家康のまわりに人が群がり集まって来るのを見て、
兼続は思う。                                        

天下人の座に坐るには、
自身欲望に首までつかって恥じず、
ひとの心に棲む欲望を
自在に操ることに長けている
家康のような人物こそふさわしい。

今、私の書棚には、
親戚筋から継承した藤沢周平の文庫本が並んでいる。
この「海坂藩に吹く風」を読んだ後、
どんな風に藤沢周平を読むことが出来るか、
楽しみである。

 


映画『バーニングダウン 爆発都市』

2022年04月24日 22時53分14秒 | 日記

[映画紹介]

冒頭、香港国際空港が核爆弾によって爆破される。
空中の飛行機から始まる、このCG満載のオープニングで、
度肝を抜かれる。
なにしろ、巨大なキノコ雲まで出現するのだ。
つかみは十分。
そこから、4年前に時間が戻って話が展開する。

2015年。
香港警察爆弾処理隊員フォンは、
数々の爆弾事件を解決してきたプロフェッショナルだった。
長年の相棒ドンと共に
アパートに仕掛けられた爆弾を解体し人質を救出するが、
見逃していた一個が爆発し、左脚を失ってしまう。
フォンは、義足をつけてリハビリに励み、
ついに隊員試験の合格ラインを超えるが、
警察の上層部は、フォンの復帰を認めようとしなかった。
仕事一筋で生きて来たフォンは自暴自棄になり、
反抗を表明して警察を辞め、姿をくらませる。

それから4年後。
反体制武装組織「復生会」による爆弾テロが多発。
対テロ部隊の女性隊長ポン・レンは、捜査を開始する。
そんな折、高級ホテルのレセプションで
大規模な爆発が起きる。

現場で爆弾を仕掛けたと見られる男が
重体の状態で発見されるが、
それは、なんとフォンだった。
しかし、フォンは記憶を失っており
容疑者として収容された病院で尋問を受けるが、
なぜ自分が爆弾テロをしたのか思い出せない。

一方、復生会は、フォンを救い出すべく乗り込んでくる。
「なぜテロ組織が俺を助けるのか?」
理解できないまま、

フォンは病院から抜け出して逃亡するが・・・。

というわけで、逃亡者となったフォンを巡って、
親友のドン、恋人のポンと関わる中、
次第に記憶が蘇って来る経過を辿る。
誠実な爆弾処理警官だったフォンが
なぜテロを起こすようになったか、
もしかしたら、復生会に対する潜入捜査員なのか、
それとも、本物のテロリストなのか。
事件は謎を含みながら、
冒頭の香港国際空港核爆弾襲撃へ向かって収束していく・・・

面白い。
いろいろつっこみ所は沢山あるが、
とにかく、ど派手に見せる。
生身の格闘、逃走劇、爆破シーンなど、
香港アクションらしいスピード感があふれる。
これこそ、娯楽映画。
いくらなんでも、爆弾処理を天職としていた人間が
爆弾を仕掛ける側にまわるというのは、
相当無理があるが、まあ、そこは、映画だから。

相棒との友情物語、
元恋人との恋愛模様、
そして、もう一つの幼なじみとの友情と、
人間ドラマとしての彩りも鮮やか。
記憶喪失者に対して、
記憶の書き換え操作という、怖い話も織り込む。し
中国の抑圧で揺れる香港でも、
こんな映画を作っていたんだね。

主演は香港映画のスター、アンディ・ラウ

監督は、ハーマン・ヤウ
アクション監督はニッキー・リー
中国で興行収入230億円を突破したという。
ホントかね。

5段階評価の「4」

新宿シネマート他で上映中。

 


引っ越し完了、第2の歴史開始

2022年04月11日 20時17分17秒 | 日記

本日、ブログ「空飛ぶ自由人」は、
「空飛ぶ自由人・2」として、再出発します。
前のブログ管理会社が、サービスを停止することになったため、
こちらの goo blog にお引っ越し。
前のブログのURL↓

https://star.ap.teacup.com/shokuniku/ 

は、
8月1日午後1時まで生きていますので、
昔のブログを読みたい方は、

そちらで閲覧することが出来ます。
8月1日午後1時以降は、
管理会社が削除し、
内容は、宇宙の彼方に消え去ります。

それでは忍びないので、
サイトをまるごとコピーするソフトを使って、
パソコンに取り込みました。
ただ、データが大きすぎるのか、
始めの方の3分の1がコピーされませんでしたので、
今後のアクセス数の減少を見て、
ある時点で、3分の2を自ら削除して、
再度コピーを試みようと思っています。

昔のブログ、特に旅行記
ブログの冒頭にインデックスを作成していますので、
削除する前に、閲覧して下さい。

さて、本日からブログ「空飛ぶ自由人・2」は、
新たな歴史に入りますが、
ここで、旧ブログを総括してみたいと思います。

開始は2005年の10月25日。
従って、16年6カ月続いたことになります。
始めは、職場の「事務局長のブログ」という位置付けでしたが、
定年退職と共に、個人のブログに移行。
それからでもそろそろ10年になります。
総投稿数は5038、
総画像数は70007枚
つまり、1回あたり13.9枚という、写真満載のブログ。
それだけに使用容量は4.29GBと膨大。

ジャンル分けすると、

映画関係 25.0%
旅行関係 23.8%
書籍関係 23.4%
雑記もの 15.6%(身辺雑記、耳より情報、様々な話題、わが町浦安、お食事 等)

政治関係  7.3%
その他   4.9%(オペラ、ミャージカル、演劇、音楽、美術、テレビ関係 等)

私は、映画は映画館で年間75本、
ビデオや配信を加えると、年間163本(昨年の実績)を観、
本は4日に1冊のペースで読んでいます。
その結果が、上記の割合。
ただ、時節柄、旅行関係は激減しています。
というか、旅行自体が皆無。
あの空港の喧騒、ゲート前の時間、
テイクオフの瞬間、機内でのくつろぎ、
着陸の緊張、
通関を過ぎて、異国に踏み出すわくわく感
がなつかしい。

この新ブログは、そういうわけで、
映画紹介、書籍紹介、身辺雑記を中心に
書いていくことになります。

新運営会社のフォーマットで、
文字や写真が大きくなり、
色や文字も多彩になります。

昔からの継続読者の方も
新しい読者の方も、
ブログの続く限り、
よろしくお願いします。