[書籍紹介]
直木賞作家・西條奈加の江戸時代の市井もの。
日本橋の大きな廻船問屋・飛鷹屋(ひだかや)の
末弟・鷺之介(11歳)は、
3人の姉たちに振り回されて疲れ果て、
早く嫁に行って片付いてくれないかと願っていた。
ところが、嫁に行ったはずの長女が出戻って来て、
3人にお喋りや買い物、芝居、物見遊山に付き合わされ、
自由奔放な姉達に翻弄されてばかりで、
心休まることがない。
男・女・女・女・男の家族構成。
実直な長兄の鵜之介、
3人姉妹のお瀬己(せき)、お日和(ひわ)、お喜路(きじ)、
そして末弟の鷺之介。
みんな母親が違う。
当主の鳶右衛門(とびえもん)は、
一代で身代を作った大人物だが、
買い付けに全国を回り、
年に1、2回しか戻って来ない。
5人の子どもは、正妻のお七が育て、
鷺之介が小さい時、亡くなっていた。
3人の姉は気性が激しく、
一筋縄ではいかない。
その対比が面白い。
7つの話で成り立っている。
①長姉が嫁ぎ先で母の形見を盗まれたことで、怒り、出戻って来る。
②鷺之介は、芝居小屋で初めて友達と言える存在を得るが、
その友は、封印切りを目撃したと疑われ、命を狙われる。
③鷺之介は箍(たが)回しを小僧の根津松から教えてもらうが、
根津松は実は・・・
④三姉のお喜路が戯作者を目指し、弟子入りした相手は・・・
⑤気に入った手ぬぐいを大枚は叩いて買ったが、
買戻しを求められ・・
⑥育ての親の墓前に残された櫛。
⑦それにより、鷺之介の出自が判明する。
3人の姉たちが吐く毒が面白い。
母・お七の秘密が明かされる最後のくだりは、
ちょっと人間の奥深い煩悩を感じさせる。
全体的には、ユーモアあふれる楽しい読み物。
母親のお七が死ぬ前に3人の娘に残したのが、
螺鈿蒔絵の櫛で、
それぞれ鳥の絵柄がほどこされている。
父親、長兄、末弟を含め、鳥にちなんでいる。
題名の「とりどりみどり」は、
「よりどりみどり」から来ているが、
飛鷹屋の家族が全員鳥に縁があることから来ている。
よりどりみどり・・・多くの中からかってに選び取ること。
「選り取り」と、
見渡して多くの中からいいものを選び 取ること「見取り」の意。
余談だが、五反田に鶏々味鳥(とりどりみどり)という
鳥料理の居酒屋がある。